均衡経済
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 19:53 UTC 版)
均衡経済も、プラウト政策全体に通じての考え方である。 それは、需要と供給のバランスのとれた経済を目指すということで、産業別の人口構成をバランスのとれた適切な割合するということや、赤字や黒字にかたよらないバランスのとれた国の財政や貿易などを目指し、それによって分散多様化された経済を目指すということである。まず、バトラは「分散多様化」という視点で均衡経済を述べている。例えば、慎重な投資家は一つのカゴに全ての玉子(資産)を入れるようなことはしない。なぜなら、そのカゴが落ちれば一度に全ての玉子が割れてしまうからである。その代わり、彼らは多様なカゴ(運用先)に投資して、玉子(資産)を振り分けておくことで、リスクを最小限にとどめるのである。 均衡経済の背後にある概念もこれと同様で、分散多様化された経済は、特化された経済よりも安定し、不況や恐慌を懸念せずにすむことになる。経済の分散多様化は、資源をいくつかの主要な部門に分散させること(ある産業に偏らずに、全ての産業をバランスよく存在させること)で、その国が諸外国に頼ることなく、食料・工業製品・建築資材などの必要分を自国生産で満たすことができれば、経済は分散され均衡しているといえる。ただし、日本や韓国やドイツのような原材料が不足する国や、中東などの肥沃な土地がほとんどない国は、輸出とそれに関する業務が、第一次産業の必要量に見合うことで均衡しているとみなすことができる。 そして、企業が製品の生産に際し原材料費に加えた価値である付加価値は、第一次産業はもっとも低く、第二次産業はもっとも高く、第三次産業も比較的低いという。第一次産業の農業・酪農・漁業などの付加価値が低い理由は、食品への需要は物理的な必要量によって限定されるからで、消費者の所得が増えても高価な食品の購入を増やすなどでしか消費を増やさない。(この点は逆に、消費者は所得が減っても高価な食品しか消費を減らせないので、不況に強いという特徴もある)しかし、第二次産業の製造業(特に耐久消費財)は、消費者の所得が増えれば、高価な電化製品や高級車や住宅といったそれらのものを、まず始めに買い換えていく(この点は逆に、消費者は所得が減ると、まず始めにこれらのものを買い控えていくという、不況に弱いという特徴)ので、付加価値が高い。そして、第三次産業のサービス業などは、継続的な技術革新が難しいため付加価値も低くなりがちで、レストラン・ホテル・航空会社・バス・鉄道・保険会社・銀行・教育・法定業務・小売業などにおいては生産性向上に限界があるからである。 一見、第二次産業の製造業といった高付加価値産業ばかりに生産を特化すれば、賃金の上昇で国民所得が上がると思いがちだが、実際はだからといって世界の国々がそれぞれ自国の内需以上に製造業で商品を生産し始めれば、その内需以上の余剰生産分を買ってくれる国(市場)は無くなり、余剰生産の資本投下分は無駄となり、結局は賃金(国民所得)の低下を引き起こし、作りすぎた商品は即ゴミになるという馬鹿げた事態を引き起こし、大いなる資源の無駄使いと地球環境破壊の加速を引き起こすことになる。実例では、日本とアメリカの自動車産業の余剰生産状況が当てはまる。自動車の日本の年間生産台数は1千万台、アメリカでは1千8百万台であるのに対し、両国の自動車需要は2千万台にすぎない。この余剰生産8百万台分が両国の賃金の伸び悩みを引き起こしてきたという事が挙げられる。だから、結局は第一次産業、第三次産業といった産業とがうまくミックスした均衡のとれた分散多様化した経済が一番、賃金(国民所得)の上昇をもたらすのだとバトラはいう。
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