判例の読み方
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「著作権法の判例一覧 (アメリカ合衆国)」の記事における「判例の読み方」の解説
判例の一部は判例集に掲載されることから、一般的には "Nichols v. Universal Pictures Corp., 45 F.2d 119 (2nd Cir. 1931)" のように表記される。これは1931年に第2巡回区控訴裁が「#ニコルズ対ユニバーサル・ピクチャーズ裁判」において下した判決であり、合衆国控訴審裁判所判例集 (Federal Reporter) の第2次シリーズの第45巻 119頁以降に掲載されていることを表す。これが連邦地方裁であれば、"F.2d" の代わりに合衆国地方裁判所判例集を意味する "F. Supp" (Federal Supplement) となる。最高裁まで上訴・審理されれば、合衆国判例集(英語版)を意味する "U.S." (United States Reports) または "S.Ct." (Supreme Court Reporter) になる。 詳細は「判例引用#アメリカ合衆国」を参照 米国著作権法は連邦法である合衆国法典の 第17編 (17 U.S.C.) に収録されていることから、これに基づき司法判断を下すのは連邦裁判所の役目となる。連邦裁判所とは具体的には以下で構成されている。 一審の合衆国地方裁判所 (連邦地裁) -- 全米に94か所 二審の合衆国控訴裁判所 (連邦控訴裁) -- 全米に13か所 (11の巡回区を含む) あり、一審の訴訟を取り扱った連邦地裁の場所に応じて決まるが、うち連邦区控訴裁判所に限っては特許権などを特別に扱うため、著作権のみの訴訟は担当しない 三審の合衆国最高裁判所 (連邦最高裁) -- 全米に1か所のみ 一審と二審の地域対比表については「en: List of United States district and territorial courts#Active courts」を参照 特にメディア・エンターテイメント業界やIT業界が集積するカリフォルニア州 (C.D. Cal. とN.D. Cal.、および第9巡回区) とニューヨーク州 (S.D. N.Y. とE.D. N.Y.、および第2巡回区(英語版)) の訴訟件数が多い。第9と第2巡回区の控訴裁判決は他の巡回区以上に注目されるものの、巡回区外での法的拘束力はなく、時として互いの巡回区で異なる判決が下されることもあることから、このような矛盾は連邦最高裁で解消されることとなる。 米国では上告された事案を受理して審議するか却下するか、連邦最高裁が事前に裁量で判断 (足切り) することができる。受理した案件は、移送令状(英語版) (ラテン語: certiorari、サーシオレイライ) が発せられ、二審の連邦控訴裁から連邦最高裁に移送・審理される。却下された場合は "Warner Brothers Pictures, Inc. v. Columbia Broadcasting Systems, Inc., 216 F.2d 945 (9th Cir. 1954), cert. denited, 348 U.S. 971" のように引用表記されることもある (文献によって異なる)。これは「#ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ対CBS裁判」の移送が最高裁で事前に却下され (cert. denied)、二審の第9巡回区控訴裁の判決で確定したことを意味する。なお、どの案件を最高裁が受理するかは「重要な連邦問題」か否かで判断され、時にはこの「重要な」の定義に政治的な判断が含まれることもあると言われる:59。 米国著作権法には州法も一部存在していることから、これらは州裁判所の管轄となるが、特筆性の観点から州裁判所の判例が引用されることは少ない。 裁判所名に "D" が表記される場合、一審の連邦地裁 (District Court) の判例であることを意味している。Dの後ろには州の略称がつく (例: マサチューセッツ州連邦地裁であれば "D. Mass")。 「アメリカ合衆国各州の略号一覧」も参照 "Cir" は二審の連邦控訴裁 (United States Courts of Appeals) の意味で、第1-第11の巡回区 (Circuit) を指す (例: ニューヨーク州などを管轄する第2巡回区控訴裁であれば "2nd Cir")。なお、建国当初は三審の連邦最高裁判所判事が二審の連邦巡回裁判所 (Circuit Court) にも参加する形をとっていたが、1891年に二審が連邦控訴巡回裁判所 (Circuit Court of Appeals) に改組されたタイミングで、専任の裁判官のみで二審が構成されるようになった。さらに1948年、二審を第XX巡回区連邦裁判所 (Court of Appeals for the XX Circuit) に改称している。 判例名は一審では一般的に「原告名 (著作権者) v. 被告名」で記されるが、被告が二審や三審に上訴した場合は、原告名と被告名の順が逆転して表記されるため注意が必要である。 過去の改正により著作権法の条文体系が大きく変更しているため、判例の年代によりその判例が引用する条文が指し示す内容が異なる点にも注意が必要である。たとえば1947年改正法以前の第25条は、1947年改正法の第101条であり、これは1976年改正法で第412および第501 – 第504条に継承されている。各改正による条文対比表は 政府公式サイト を参照のこと。
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