判例の変遷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/12 02:33 UTC 版)
制限超過支払部分の取扱いについて、判例は、当初、これを残存元本へ充当することは結果においてその返還を受けたと同一の経済的利益を生ずることになるから、本法1条2項、4条2項に照らして許されないと解していた(最高裁昭和37年6月13日判決民集16巻7号1340頁)。これは、大審院が旧利息制限法2条の「裁判上無効」という文言の解釈として採用していた考え方を成文化したという、前述の立法者意思に忠実な解釈であるといえよう。 しかし、最高裁はその後、制限超過の利息、損害金は、本法1条1項、4条1項により無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じず、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局制限超過部分は、元本が存在するときは、民法491条によりこれに充当される旨判示して(前掲最高裁昭和39年11月18日判決)、見解を改めた。 また、判例は、元本充当の結果過払が生じた場合の処理について、本法1条2項、4条2項の規定は元本債権の存在することを当然の前提とするものであり、元本債権が既に弁済によって消滅した場合には、もはや利息、損害金の超過支払ということはあり得ないから、計算上元本が完済となった後に支払われた金額は、債権者の不当利得となる旨判示し(最高裁昭和43年11月13日判決・民集22巻12号2526頁)、その後、制限超過の利息、損害金を元本とともに1回で弁済した事案についても不当利得返還請求を肯定した(最高裁昭和44年11月25日判決・民集23巻11号2137頁)。 特に、長期間にわたり借入れと返済を繰り返している借り手については、超過利息が元本に充当され元本が完済された後も返済を続けているため多額の過払いになっていることも多く、近年、金融業者に対する過払金返還請求訴訟が相次いで起こされている。
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