作品に対するコメント・解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 18:29 UTC 版)
「加藤翼 (アーティスト)」の記事における「作品に対するコメント・解釈」の解説
美術ライター・キュレーターのエミリー・ウェイクリングはオーストラリアのアートマガジン「eyeline 76」において、加藤のプロジェクトとアーミッシュやお神輿との類似点や「リンゲルマン効果(社会的手抜き)」で知られるフランス人エンジニア、マクシミリアン・リンゲルマンの実験との関連性を指摘しながら、「共同作業というテーマが人間性と文明の本質を切り開いており、加藤の作品は2011年に特別な意味合いと新しい次元を獲得した。」と評価。 美術編集者・評論家の楠見清は「引き倒し/引き興すことで、その場の光景を転倒/倒立させ、ものの見え方や価値観を倒立させる。対象を倒壊させると同時に倒立させる──破壊と創造が表裏一体になった立体のかたちを造形的につくりだす能力には驚嘆させられる。」とコメント。 音楽家・ダンス批評家の桜井圭介は『一連の加藤「作品」は、藤田直哉が批判するような、誰のための・如何なる価値が果実となったのか判定出来ない「地域アート」と一線を画している。』とツイート。 横浜美術館館長の蔵屋美香は加藤の個展への展評において『うまく箱を動かすためには、力を加える「力点」、動きを支える「支点」、力が働く「作用点」を周到に配して、「てこの原理」を適切に作動させなければならない。・・・何かを立てる/倒すための協働作業が、何千年もかけて物理の法則を探ってきた人間の知恵の集積の上に成り立つものであることを教えてくれる。同時にまた、ピラミッドや塔、城や大仏といったモニュメントの建立が、人々のこころを一つの方向にまとめるための方途として、権力者によって都合よく使われてきた歴史も明かしてくれる(だから、引き倒し/引き起こしを権力者のものから弱い立場に置かれた人々のものへと奪還する加藤の作品であってさえ、そこにはたんなる「いい話」ではすまされない、集団の陶酔と力の行使に対する緊張がある)。・・・加藤の過ごした10年は、2010年代における日本の美術界の「政治の季節」に重なっている。2011年、東日本大地震後の福島県いわき市で、失われた灯台を模した構造物を地域の人々と共に引き起こした《The Lighthouses-11.3 PROJECT》により、加藤は大きな注目を集めた。2019年には、一部の展示が閉鎖され問題となった「あいちトリエンナーレ2019」で、思想信条を超えた話し合いの場として、毒山凡太朗と共に「サナトリウム」を立ち上げた。加藤は間違いなく、「政治の季節」を牽引してきたアーティストのひとりである。』とコメント。
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