二次健康診断等給付
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 10:21 UTC 版)
「労働者災害補償保険」の記事における「二次健康診断等給付」の解説
近年、定期健康診断における有所見率が高まっているなど、健康状態に問題のある労働者が増加している中で、業務による過重負荷により基礎疾患が自然経過を超えて急激に著しく増悪し、脳血管疾患及び心臓疾患を発症して死亡又は障害状態に至ったものとして労災認定された件数は、増加傾向にある。脳及び心臓疾患は生活習慣病といわれ、偏った生活習慣に起因することが多い疾病であるが、業務に起因するストレスや過重な負荷により発症する揚合もあるところである。脳及び心臓疾患の発症は、本人やその家族はもちろん、企業にとっても重大な問題であり、社会的にも様々な問題を惹起している。今後、労働者の高齢化がさらに進展し、脳及び心臓疾患に係る労災請求事案の増加が懸念される中、労働者に起こり得る甚大な被害の発生を防ぐことの重要性が増しているところである。一方、医療の分野においては、予防の重要性が広範に認識されるようになっているところであるが、脳及び心臓疾患については、労働安全衛生法で定める定期健康診断等により、その発症の原因となる危険因子の存在を事前に把握し、かつ、適切な保健指導を行うことにより発症を予防することが可能である。こうした観点から、平成13年4月の改正法施行により「二次健康診断等給付」を創設することとしたものである(平成13年3月30日基発第233号)。 二次健康診断等給付は、労働安全衛生法による健康診断のうち、直近のもの(一次健康診断)において、血圧検査、血液検査その他業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査であって、厚生労働省令で定めるものが行われた場合において、当該検査を受けた労働者がそのいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに、当該労働者の請求により行う(第26条1項)。二次健康診断等給付はその性質上、脳血管疾患等及び心臓疾患を予防するための給付であるため、一次健康診断の結果その他の事情によりすでに脳血管疾患等及び心臓疾患の症状を有する労働者は給付を受けることはできない。また特別加入者は労働安全衛生法でいう労働者ではないため同法の適用を受けず、二次健康診断等給付は受けることができない(平成13年3月30日基発第233号)。「血圧検査、血液検査その他業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査であって、厚生労働省令で定めるもの」は、以下の通りである(施行規則第18条の16第1項)。 血圧の測定 血中脂質の検査(次の検査のいずれか1つ以上とする)低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール) 高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール) 血清トリグリセライド(中性脂肪) 血糖検査 腹囲の検査又はBMIの測定 二次健康診断等給付の給付の内容は、以下の通りである(現物給付。第26条2項、平成13年3月30日基発第233号)。 二次健康診断 脳血管および心臓の状態を把握するために必要な検査のこと(一次健康診断の検査は除く)で、厚生労働省令で定めるものを行う医師による健康診断(1年度につき1回に限る)。「脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査であって厚生労働省令で定めるもの」とは、以下の通りである(施行規則第18条の16第2項)。空腹時の低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査 空腹時の血中グルコースの量の検査 ヘモグロビンA-c検査(一次健康診断において当該検査を行つた場合を除く) 負荷心電図検査又は胸部超音波検査 頸部超音波検査 微量アルブミン尿検査(一次健康診断における尿中の蛋白の有無の検査において疑陽性(±)又は弱陽性(+)の所見があると診断された場合に限る。) 特定保健指導 二次健康診断の結果に基づき、脳血管疾患等及び心臓疾患の発生の予防を図るために、面接により行われる医師又は保健師の保健指導(二次健康診断ごとに1回に限る)。二次健康診断の結果その他の事情によりすでに脳血管疾患等及び心臓疾患の症状を有すると認められる労働者については、療養を行うことが必要であるため、当該二次健康診断に係る特定保健指導は行われない(第26条3項、平成13年3月30日基発第233号)。 二次健康診断等給付は、労災病院、又は労災指定医療機関等で行われる。二次健康診断等給付の請求は、天災その他やむをえない理由がある場合を除き、一次健康診断を受けた日から3か月以内に、以下の事項を記載した請求書に、一次健康診断において上記の検査のいずれの項目にも異常の所見があると診断されたことを証明することができる書類(事業主の証明が必要)を添えて、当該病院等を経由して所轄都道府県労働局長に対して行わなければならない(施行規則第18条の19)。 労働者の氏名、生年月日及び住所 事業の名称及び事業場の所在地 一次健康診断を受けた年月日(事業主の証明が必要) 一次健康診断の結果 二次健康診断等給付を受けようとする健診給付病院等の名称及び所在地 請求の年月日 事業主は、二次健康診断の日から3か月以内に労働者からその結果を証明する書面の提出を受けたときは、提出の日から2か月以内に、結果に基づいた労働者の健康保持のための意見を医師に聴かなければならず、聴取した医師の意見は健康診断個人票(労働安全衛生規則第51条)に記載しなければならない(平成13年3月30日基発第233号)。 二次健康診断等給付は、労働者が一次健康診断の結果を了知しうる日の翌日から起算して2年の時効にかかる(第42条)。もっとも、二次健康診断等給付の請求は、原則一次健康診断を受けた日から3か月以内に行わなければならないことから、時効が問題となるのは特定保健指導を受ける場合に限られる。
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