事業主からの費用徴収
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 10:21 UTC 版)
「労働者災害補償保険」の記事における「事業主からの費用徴収」の解説
労災保険への加入手続は前述の通り、労働者を1人でも雇用したら行わなければならないものであるが、実際には、事業主による手続忘れや故意による未手続も多い。そのため未手続事業主の注意を喚起し労災保険の適用促進を図ることを目的として1987年(昭和62年)に費用徴収の制度が設けられた。さらに2005年(平成17年)11月より徴収金額の引き上げや徴収対象とする事業主の範囲拡大がなされている。 政府は以下のような事故について保険給付を行ったときは、その保険給付(療養(補償)給付、介護(補償)給付、二次健康診断等給付を除く)に要した費用の全部または一部を事業主から徴収することができる(第31条)。ただし、これによって労働者に対する保険給付が制限されるわけではない。 都道府県労働局及び労働基準監督署などの行政機関から、保険関係成立届の提出ほか所定の手続をとるよう指導(職員が直接指導するものに限る)を受けたにも関わらず、指導から10日経過しても事業主がその手続を行わない間に労災事故が発生した場合 → 「故意」と判断し、保険給付額の100%を事業主から徴収 厚生労働省労働基準局長の委託する労働保険適用促進業務を行う社団法人全国労働保険事務組合連合会の支部である都道府県労働保険事務組合連合会(都道府県労保連)又は同業務を行う都道府県労保連の会員である労働保険事務組合から、保険関係成立届の提出ほか所定の手続をとるよう勧奨(加入勧奨)を受けたにもかかわらず、10日経過しても事業主がその手続を行わない間に労災事故が発生した場合 → 「故意」と判断し、保険給付額の100%を事業主から徴収 行政機関等からの、保険関係成立届の提出ほか所定の手続をとるよう指導・加入勧奨を受けていないが、事業主が保険関係成立の日から1年経過してもその手続を行わない間に労災事故が発生した場合 → 「重大な過失」と判断し、保険給付額の40%を事業主から徴収この場合であっても、下記のいずれかの事情が認められるときは、事業主の重大な過失として認定しない。事業主が、その雇用する労働者について、労働者に該当しないと誤認したために保険関係成立届を提出していなかった場合(当該労働者が取締役の地位にある等労働者性の判断が容易でなく、事業主が誤認したことについてやむを得ない事情が認められる場合に限る)。 事業主が、本来独立した事業として取り扱うべき出張所等について、独立した事業には該当しないと誤認したために、当該事業の保険関係について直近上位の事業等他の事業に包括して手続をとっている場合。 1年以内の場合で特例的に保険給付を行った場合、通常の保険料とは別個に特別の保険料を徴収する。この徴収期間中は任意に脱退することはできない。 事業主が一般保険料を納付しない期間(督促状に指定する期限後の期間に限る)中に生じた事故 → 保険給付額の40%×滞納率を事業主から徴収 事業主が故意または重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故 → 保険給付額の30%を事業主から徴収 偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部または一部をその者から徴収することができる。この場合において事業主が虚偽の報告・証明をしたがためにその保険給付が行われた場合は、その者と事業主とが連帯して徴収金を納付するよう命ぜられることがある。 費用徴収は、療養開始日(即死の場合は事故発生日)の翌日から起算して3年以内に支給事由が生じたもの(年金給付については、この期間に支給事由が生じ、かつ、この期間に支給すべきもの)について、支給の都度行われる。なお、算出された額が1,000円未満の場合には費用徴収を行わず、また徴収金には延滞金を課さないとされる。 行政機関等からの指導・加入勧奨については、当該行政機関等が事業の存在を把握したものについて順次行われる。特に、事業の開始に際し、行政機関等への登録、届出、許認可等が要件となっている事業については、それらの行為に基づいて事業の存在が把握されるため、原則として指導等の対象となるものと考えてよい。なお、行政機関は事業の存在を把握しているに過ぎず、労災保険の適用・非適用までは把握していないので、労災保険の非適用事業であっても指導等の対象となる(ただし、この場合は非適用事業である旨を確認して指導等が終了する)。
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