保険給付制限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 04:27 UTC 版)
労働者が故意に事故を生じさせた場合は、保険給付は全く行われない(絶対的支給制限、第12条の2の2第1項)。業務遂行性の有無は問わない。ここでいう「故意」とは、「結果の発生を意図した故意」をいい、事故発生の直接の原因となった行為が法令上の危害防止に関する規定で罰則の附されているものに違反すると認められる場合について適用される(昭和52年3月30日基発192号)。したがって、「未必の故意」はここでいう故意に含まれないものと解される。 もっとも、自殺を一律に「故意」と判断するのは妥当ではない。例えば、業務上の精神障害によって、正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたと認められる場合には、結果の発生を意図した故意には該当しない。遺書を残して自殺したとしても、遺書自体は自殺に至る経緯に係る一資料にすぎない(平成11年9月14日基発545号)。 被災労働者が結果の発生を認容していたとしても、業務との因果関係が認められる事故については支給制限は行わない。 二次健康診断等給付については、支給制限の問題は生じない(平成13年3月30日基発第233号)。 労働者が故意の犯罪行為もしくは重大な過失により事故を生じさせた場合は、給付額(休業・傷病・障害(補償)給付)の30%を減額される場合がある(相対的支給制限。ただし年金給付については、療養開始後3年以内に支払われる分に限る。第12条の2の2第2項)。「故意の犯罪行為」とは、事故の発生を意図した故意はないが、その原因となる犯罪行為が故意によるものをいう(昭和52年3月30日基発192号)。 労働者が正当な理由なく療養上の指示に従わず悪化、または回復を妨げた場合は、休業(補償)給付の場合は10日分、傷病(補償)年金の場合は10/365の相当額を減額される場合がある(相対的支給制限)。 労働者が正当な理由なく報告書等の届出・物件の提出をしないときは、保険給付の支払いを一時差し止めをすることができる。 労働者が少年院、刑事施設等に収容等の場合、休業(補償)給付の支給は行わない(未決勾留の場合を除く)(第14条の2)。この期間は待期にも数えられない。 特別加入者の場合、次の事故に係る保険給付及び特別給付金の全部または一部を行わないことができる。 中小事業主(第1種特別加入者本人)の故意または重大な過失によって生じた業務災害の原因である事故 中小事業主、一人親方等の団体、又は海外派遣者の派遣元の団体もしくは事業主が、特別加入保険料を滞納している期間(督促状の指定期限後の期間に限る)中に生じた事故
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