事業の役割
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世界レベルの質の高い留学生を獲得するには、世界の大学ランキングで500位以内であることが条件とされる。 実際、2010年度、国際化拠点整備事業(グローバル30)に採択された全ての国立大学(私立では早稲田大学)は、予算的に厳しい条件にありながら 、世界ランキングで200位以内につけた。 最新のランキングにおいても、研究大学11校【RU11―研究大学11校】 は、全て200位以内につけている。 だが、世界トップクラスの大学であっても、優秀な学生のリクルートは容易ではない。現在、トップセールスに倣った、学長みずからによる、留学生獲得戦が、世界を舞台に繰り広げられている。2010年春、日本人留学生獲得のため、アメリカからハーバード大学のドリュー・ギルピン・ファウスト学長が、初来日した。ハーバードで学ぶ日本人留学生は、全学あわせても100名程に過ぎないが、学長みずから来日し、日本での広報活動を展開した。 このように、世界トップクラスの大学では、《未来のエリート候補生》たる質の高い留学生の獲得をめぐり、厳しい争奪戦が展開されている。日本の大学も、世界基準での「生き残り」を懸け、優秀な留学生の発掘・獲得という競争の「荒海」に漕ぎ出した。 例えば、早稲田大学が、大学トップとベトナム政府との間で、数年に及ぶ交渉を続けた末、2010年これが実を結び、ベトナム政府認定の「最優秀学生」を、理工系の箇所が獲得することに成功したことが報じられた。 こうした海外での優秀な学生のリクルートを目的に海外著名大学では、「サテライトオフィス」を、新興国に設置するなどの動きが加速しており、日本の有力大学でも、各大学が自前で「海外拠点事務所」の設置を進めるなど、努力が行われてきた。 「国際化拠点整備事業(大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業)」では、東北大・筑波大・東京大・名古屋大・九州大・早稲田大・立命館大が、それぞれで設置している「海外拠点事務所」を、日本留学への「総合窓口」となる『海外大学共同利用事務所』として活用することが求められている。この「海外大学共同利用事務所」では、留学説明会の実施、現地での教育事情の収集、地元の高校との交流などを通じ、新興地域・新興国の優秀な学生のリクルート機能を果たすことが期待されている。このためには、国を挙げたバックアップの体制も求められる。 【アジア】 : ▽インド・バンガロール(運営大学・東京大学))、▽インド・ニューデリー(立命館大学)、▽ベトナム・ハノイ(京都大学)。 【北アフリカ・中東】 : ▽チュニジア・チュニス(筑波大学)、▽エジプト・カイロ(九州大学)。 【ユーラシア】 : ▽ロシア・モスクワ(東北大学)、▽ウズベキスタン・タシケント(名古屋大学)。 【ヨーロッパ】 : ▽ドイツ・ボン(早稲田大学)。 「世界トップクラス大学」とのグローバルな「秀才」獲得競争では、政府から手厚い財政支援を受け、潤沢な資金力を武器に有利な条件にある海外著名大学が、その競争相手であり、その戦いは容易でない。 上記のとおり、日本では研究大学のうち11校-RU11が世界大学ランキングで200位以内に着けており、200位以内に11校がランクインしているのは、現時点ではアジアで、日本のみである。 しかし、近年、主要国やアジアの新興国において、高等教育や科学技術開発への財政支出を急拡大する動きが見られ、高等教育や科学技術への重視が鮮明となっている。このため、政府から手厚い財政支援を受けた新興国等の大学の追い上げは、激しさを増している。 このように、各国政府が、中長期的な展望のもと、21世紀の「知識基盤型社会」を見据え、戦略的な政策対応を進める一方で、日本では、この10年以上に渡り、こうした「世界の環境変化」に「逆行」する「政策対応」がとられた。このため、日本では、大学への財政支出が、主要先進国で「最低レベル」という厳しい状況にあり、そうした中で、『国際化拠点整備事業(グローバル30)』は、日本の大学にとって、「大いなる後押し」となるものと期待される。
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