中華民国旅券の取得要件
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「中華民国旅券」の記事における「中華民国旅券の取得要件」の解説
中華民国は、中国大陸の全域を統治する政体として、1912年1月1日に建国された国家である。1945年10月15日、中華民国は連合国軍最高司令官総司令部が発した一般命令第一号に基づき台湾に進駐し、同年10月25日の台湾光復式典によって、台湾を自国領に編入した。 1949年の国共内戦を経て、中華民国の実効統治領域は台湾地区のみとなり、中国大陸は中華民国に代わり、10月1日に中華人民共和国が統治するようになった。中華民国憲法は「中華人民共和国の存在を認めていない」ため、憲法上は、中華民国こそが「中国を代表する唯一の正統な政府(一つの中国)」となる。 中華民国の統治領域は、中華民国憲法増修条文において「自由地区」(台湾地区)と称され、それ以外の地域は大陸地区と称される。中華民国憲法は中華民国政府に対し、国内の特定地域のために、それ以外の地域に効力が及ばない法律を制定することを認めている。 台湾地区に居住し、中華民国戸籍に登録されている中華民国の国民は、中華民国旅券を取得する適格性を有する。中華民国旅券が、その所持人を中華民国の国民であると示していたとしても、それをもって同人が中華民国の戸籍を有する公民であると結論づけることはできない。中華民国国籍法によれば、国籍と戸籍には関わりがないからである。さらには、中華民国旅券の所持人が、必ずしも台湾地区の永住権を保有している訳でもない。 台湾の公民に加えて、一部の海外華僑も中華民国旅券を取得する適格性を有する。その対象者は、中華民国旅券を所持する両親の元に海外で生まれた者、中国大陸および香港ならびにマカオで生まれ海外居住権を有する者、1997年以前の香港および1999年以前のマカオで旅券を取得した華人居住者、2002年以前に華人であるという事実のみに基づいて旅券を取得した者を含める。 中国大陸および香港・マカオの華人居住者は、憲法上は中華民国の国民であるため、彼らもまた特別な状況下では中華民国旅券を取得しうる。中華民国憲法が及ばない外国にて、現地の永住権を保有する者であり、かつ中華人民共和国の旅券を保有しない者に交付される。その特別な状況とは、2002年の旅券条例施行細則第十八条の規定によれば、「政治、経済、社会、教育、科学技術、文化、体育、華僑事務、宗教および人道上の特別な事情を考量」と定められている。返還前の香港とマカオに居住していた華人は海外華僑として扱われたことから、中華民国憲法の及ばない外国にて生計を確立させるという要件を満たす必要もなく、中華民国旅券を取得する適格性を有した。 中華民国国籍法の定めるところによれば、2002年に修正された旅券条例施行細則の発布以前は、華僑身分証明書を取得した華人であれば台湾地区の居住歴および同地区への来訪歴の如何を問わず中華民国国籍を取得し中華民国旅券の交付を受ける要件を備えていた。 2002年の修正以降は、旅券条例施行細則第十三条に基づいて、華僑身分証明書はそれ単体では中華民国国籍を証明する文書としては認められなくなった(中華民国旅券交付申請者本人の出生証明書および父母のいずれかが中華民国国籍を有することを証明する文書の添付が必要とされる)。なお、華僑身分証明条例第三条の定めにより、中華人民共和国旅券の所持人は華僑身分証明書を取得する適格性を有さない。 中華民国旅券は、台湾地区で居住権を持つ者に対して自動的に交付されるものではない。台湾地区で中華民国戸籍に登録され中華民国旅券を持つ者のみが、台湾内での出入境管理から除外される。それ以外の中華民国旅券の所持人は、台湾への到着時に上陸査証(中国語:落地簽證; 英語:Landing Visa) を発給されるか、または入境を拒否される。台湾地区で中華民国戸籍に登録されている公民にのみ発給される中華民国国民身分証(中国語版)は、投票などの公民権を行使する際に用いられる。海外華僑の旅券は、台湾地区で中華民国戸籍に登録されている公民の旅券とは異なり、もっぱら各国の中華民国大使館、領事館、台北経済文化代表処など中華民国の在外機構のみが発給し、台湾地区にて発給されることはない。海外華僑の旅券には、華僑であることを示す特別な印が付される。ただし兵役に就いている者は除外される。中華民国戸籍を有する旅券の所持人には、中華民国国民身分証の統一番号(中国語:統一編號)を持つ者も含まれる。英国旅券を持つ者が、必ずしも英国の居住権を保有しているわけではないことに似ている。 中華民国旅券の有効期限は、通常10年間であるが、14歳以下の者は5年間であり、徴兵制度で中華民国国軍未就役の男性に対しては「5年間」 (2019年4月29日から10年間)に制限されている。 現在中華民国政府は、大陸籍と台湾籍の二重籍を認めておらず、中華人民共和国旅券を取得(大陸籍を取得)した場合、「台湾地区・大陸地区人民関係条例」(両岸条例)により、中華民国旅券は無効となり、台湾籍を喪失する。ただしこの場合も国内法上中華民国の国民としては扱われる。
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