レプリゼンテーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 15:12 UTC 版)
人間が創作した演劇・映像・文学・芸術などの中における表象を「レプリゼンテーション(representation)」と呼ぶ(日本語ではリプレゼンテーションとも表記される)。性的少数者の人々が公正に描かれることがレプリゼンテーションでは重視される。 性的少数者は映画やドラマ番組などの映像作品において正しく描写されてこなかった歴史がある。ドキュメンタリーの『セルロイド・クローゼット』(1981年)や『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして(英語版)』(2020年)、『テレビが見たLGBTQ(英語版)』(2020年)ではその性的少数者のレプリゼンテーションに関する歴史が語られている。テレビ番組、演芸、企業の広報などが性的少数者を侮蔑的に笑いものにする事例もたびたび起きている。 これらの誤った表象は性的少数者のステレオタイプや誤解を助長する。ステレオタイプの例としては、例えば「レズビアンのカップルは必ずブッチとフェムである」「バイセクシュアルの人はグループセックスを好む」「トランスジェンダーは不幸な犠牲者となる」「アセクシュアルの人はセックスの楽しさを知らないだけで一度経験させればわかってくれる」などがある。 また、陰惨な事件の引き金になることもある。『ジェニー・ジョーンズ・ショー (英語版)』というテレビ番組の1995年3月6日の放送にて、同性愛者の男性が同僚男性のジョナサン・シュミッツに片思いしていたことを本人の前で告白するという企画があり、この放送の3日後、シュミッツは告白してきた男性を殺害するという事件を引き起こした(ゲイ・パニック・ディフェンス)。 日本の映像界では、性的少数者ではない人たちが主体となってセクシュアル・マイノリティが描かれていることに対して、消費や搾取となっている問題点が指摘されており、改善が求められている。 映像作品における性的少数者に関するより良い表象は増えつつあり、少しずつ改善している。1977年には『That Certain Summer (英語版)』が放映され、同性愛を同情的観点から描いた最初のテレビ映画となった。1978年には『A Question of Love (英語版)』というレズビアンの女性を真面目に描いたテレビ映画も登場した。2014年から配信されたアニメ『ボージャック・ホースマン』ではこれまで表象として描かれることはほぼ無かったアセクシュアルのキャラクターが明確に登場し、当事者から称賛を受けた。『JUNO/ジュノ』での演技によりアカデミー主演女優賞にノミネートされた経験のあるエリオット・ペイジは2020年に男性であるとカミングアウトし、世界で最も有名なトランスジェンダーのひとりとなり、大きな話題を集めた。 GLAADの調査によれば、2020年のメジャースタジオが公開した118本の映画のうち、性的少数者として識別できるキャラクターがいた作品は22本(18.6%)だった。具体的にどの性的少数者だったかという内訳は、ゲイ男性が68%、レズビアンが36%、バイセクシュアルが14%で、トランスジェンダーはいなかった。また別の調査からは、2020年のテレビシリーズとして放送された773のシリーズレギュラーキャラクターのうち、9.1%が性的少数者であったという結果がでている。 コンピュータゲームの世界においても現在では数多くの性的少数者の表象が確認できるが、昔は珍しかった。1999年に開催された「Electronic Entertainment Expo(E3)」にて『シムピープル』というシミュレーションゲームの試作が展示されたが、その際にゲーム内で女性キャラクター同士の結婚が展開され、多くのゲームファンは騒然となった。それから20年、ゲームの表象は激変し、2020年には「The Game Awards」で「Game of the Year」に輝いたゲーム『The Last of Us Part II』ではレズビアンの主人公とトランスジェンダーのキャラクターが大々的に登場した。 文学では昔から性的少数者を明確には描写できなくとも、暗示させるような表象があったことが知られている。ゲイ表象としては紫式部の『源氏物語』(1008年)、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』(1890年)、レズビアン表象としてはジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュの『カーミラ』(1872年)、ラドクリフ・ホール (英語版)の『寂しさの泉 (英語版)』(1928年)など枚挙にいとまがない。初期のトランスジェンダー文学としてはヴァージニア・ウルフの『オーランドー』(1928年)が有名である。
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