ミサイルへの採用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/19 02:43 UTC 版)
「ブースト・グライド」の記事における「ミサイルへの採用」の解説
1960年代を通じ、スキップ・グライドの概念は関心を持たれていたが、射程延長の手段としてではなく、現代的なミサイルに懸念はないものの、ICBM用の機動可能な再突入体の基礎としてだった。最初の目標は再突入体が再突入の最中に経路を変更し、それにより対弾道ミサイル(ABM)が、こうした機の動きを、迎撃成功に十分なほど速やかに追尾できなくすることである。よく知られる最初の例は1959年のアルファ・デルコの実験であり、これにブースト・グライド再突入機(BGRV)の一連の試験であるASSET(Aerothermodynamic Elastic Structural Systems Environmental Tests)やPRIMEが続いた。 後、この研究はパーシングIIのMARVに使われた。この場合、滑空段階での射程延長はない。弾頭は短時間、弾道を調整するために揚力を用いる。これはシンガー・カーフォット慣性航法装置とグッドイヤー・エアロスペース社のアクティブレーダーとのデータを組み合わせ、再突入の過程の後期に行われる。同じコンセプトが、核武装した多くの国家の装備する戦域弾道ミサイルのために開発されている。 ソビエト連邦でもアメリカ側のABMを回避するためのMARVの開発にいくばくかの努力を費やした。しかし、1970年代にアメリカの防衛力の整備が打ち切られ、この計画を続ける理由は無くなった。2000年代には アメリカ側が地上配備型ミッドコース防衛を導入したためにこの図式が変わり、ロシア側はこの研究作業の復活に至った。ソビエト連邦期にはこの機体は「オブイェークト4202」と呼ばれ、2016年10月に試験に成功していることが報告された。2018年3月1日、アバンガルド (極超音速滑空体)(ロシア語: Авангард)としてシステムが公開され、2019年12月27日にはICBMに積まれるものとしておおやけに就役した。ウラジーミル・プーチンはアバンガルドが実際の任務に就いたことを発表し、この滑空体の機動性は現用の全てのミサイル防衛を無力化すると主張した。 中華人民共和国でもブースト・グライドを行う弾頭、DF-ZF(アメリカの諜報機関には「WU-14」として知られる)を開発した。アメリカとロシアのMARVの設計と対照的に、DF-ZFの主な目標は、従来的な弾道弾が描く軌道を用いて標的に到達するよりも低い高度を飛び続ける間、ブースト・グライドを射程延長のために使うことだった。低空飛行の目的はアメリカ海軍のイージスシステムのレーダー探知領域からできる限り長く逃れるためであり、それによってシステムが攻撃に対応する時間を短くすることである。DF-ZFは2019年10月1日に公開された。ロシア連邦による同様の努力はKholod、およびGLL-8 Iglaの極超音速実験計画に至った。さらに近年ではRS-28 Sarmatに搭載可能なYu-71極超音速滑空体を計画している。 ブースト・グライドは、アメリカの「迅速なグローバル打撃」(PGS)計画の要件を満たす解決法として、いくらか関心を集める話題となった。この計画では、アメリカから発射した兵器を地球上のいかなる地点でも1時間以内に命中させる兵器を模索していた。PGS計画では作戦の方法を定義しておらず、また現行の研究には先進極超音速兵器のブースト・グライド弾頭や、ファルコンHTV-2極超音速機、また潜水艦発射ミサイル等が含まれている。ロッキード・マーチン社ではこのコンセプトに関し、AGM-183A ARRWを開発している。
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