ペリカン便との統合と失敗
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「ゆうパック」の記事における「ペリカン便との統合と失敗」の解説
2007年10月5日、日本郵政と日本通運両社の宅配便事業を統合することを目的に、合弁会社を2008年10月1日をめどに設立し、ゆうパックが日本通運の宅配サービス「ペリカン便」と事業統合することを発表。 その後、2008年6月に統合準備会社JPエクスプレス株式会社を設立(設立当初は出資比率は50%ずつ、2008年8月に日本郵便66%、日本通運34%に変更)、2008年8月末までに合弁会社の事業の詳細、新ブランドや新サービスの内容を公表、宅配便事業の統合は2009年4月に行うと発表された(実際には、JPEXの出資比率は2009年4月に変更され、この時点ではペリカン便のみを譲受。ゆうパックの割譲は同年10月に予定していた)。システム・運送体制は「ペリカン便」、運送料金体系は「ゆうパック」をベースとし、新しいブランド名を発表する予定。また、料金後納扱いのゆうパックは、「JPEX掛売」(即ち、ペリカン便扱い)へ移行するようアナウンスを開始する。 しかし、2009年9月11日に予定されたゆうパックの割譲(JPEXへの完全統合)が、総務大臣の認可が降りないことにより延期することを発表。同年10月1日時点では、既に廃止準備に入った一部地域のペリカン便事業所の集配業務を、郵便事業の一部支店が代行することになり、さらに2009年12月24日には、2010年7月1日付で郵便事業がJPEXからペリカン便(JPエクスプレス宅配便)事業を譲受することを発表。同日以降の郵便事業が手がける荷物のブランド名は「ゆうパック」に統一、システム・運送体制は従来のゆうパックをベースとするが、サービスレベルはJPEXを継承し、その後速やかにJPEXを清算させることが判明。 統合は予定通り2010年(平成22年)7月1日に実施も、準備不足と荷物の急増や送り状の混在(従来の2つのブランドの荷物を扱うことになった上、中元シーズンの開始時期であった)が原因で、荷物を集積する各ターミナル局の業務はパンク、全国で大規模な遅配が発生し、現場は極度の混乱に陥った。7月15日には正常化宣言が出されたが、このように事業統合に相応しくない時期を選ばざるを得なかったのは、荷物取扱量の減少により、最終的な累積赤字が980億円に膨れ上がったJPEX事業の清算を、8月31日に行わざるを得なくなったという背景があった。 この遅配問題との直接の関連は不明だが、これまでゆうパックを取り扱っていたデイリーヤマザキが、2010年(平成22年)9月1日よりヤマト運輸へ提携先を切り替えると発表。 なお、統合の2010年(平成22年)7月1日以降、配達日数に若干の変更があった。これは以下の要因による。 運送経路は従来のゆうパックのものをベースとしつつ、JPEXから継承したターミナル施設、自動仕分機を活用して荷物の仕分作業を行うこととした。 ゆうパック事業が荷物専用のサービスという位置づけになったため、従来は郵便物とともに搭載・運送されていたゆうパックは、新たに荷物専用便が仕立てられ運送されることとなった(荷物専用便数は郵便物便数に比べて少ない)。また、ゆうパックの航空機積載は離島等を除いて行われないこととなった。 配達日数はJPEXのものがベースとなったため、One DayサービスやOne Nightサービスなどで統合後のサービス縮小がみられた。 従来、郵便関連のコールセンターは日本郵政グループ共通の番号を使用しており、従前のラベルにもこの番号が表示されてきたが、2010年7月以降に配布された「郵便事業株式会社」名のラベルおよび2012年10月以降に配布された現行「日本郵便株式会社」名のラベルは、ゆうパック専用コールセンター番号の表示に変更されており、番号自体は、JPEXから継承した番号が表示されている(ゆうパック以外の、例えば、旧「モーニング10」などのラベルは、日本郵便に移行後の現在も、従前通り「日本郵政グループコールセンター」の番号が記載)。なお、従前より支店単位で設置していた集荷専用フリーアクセスも、継続して利用可能となっている。2004年のリニューアル以前より稼動し、支店ごとのフリーアクセスが設置される前から運用されていた、一部地域で利用可能な0120-950-333(東京23区内は0120-950-489)のフリーダイヤルもいまだに利用可能となっている。 このほか、2004年9月以前に発行されたお問い合わせ番号11桁の送り状ラベル(一般元払い用と書留用)が、今般の統合を以って日本通運名のペリカン便ラベルとともに使用停止となった(現在は、民営化以前を含め、2004年10月以降に発行されたもののうち、民営化前の代引ゆうパック用ラベルや2010年6月以前に発行されたゴルフ・スキーゆうパック/空港ゆうパック用ラベルなどのような一部を除くラベルと、JPエクスプレス名の送り状であれば原則利用可能である)。なお、統合前に発行されたラベルにはない、現行の時間帯指定(のうち、14時以降枠での指定)を希望する場合や、輸送中の下積厳禁の取り扱いを希望する場合は、摘要欄に記載することで対応可能となっている(いずれも、受付担当者に口頭で伝え、その場でシールの貼り付けを行うことでも対処可能)。 以上の体制による事業統合後も取扱個数は減少を続け、郵便事業会社の2010年度(平成22年度)営業損失1612億円のうちJPEX継承に関するものが1066億円を占めるに至る程に経営状況が悪化したことから、収支改善のために輸送体制の効率化を図る目的で、2011年度(平成23年度)からはゆうパックの専用輸送便を廃止し、郵便物との混載に戻すこととなった。これにより、2011年8月28日以降、ゆうパックは郵便物との混載による輸送体制に戻った他、旧日本通運・JPEXのターミナル施設を継承したターミナル支店のほとんども廃止され、これらの拠点に移されていた区分・仕分け作業も統括支店に戻ることとなった。また、輸送体制変更に伴う送達日数への影響を緩和するため、長距離区間でのゆうパックの航空機積載も復活した。 2012年10月1日の日本郵便株式会社発足に伴い、企業名を変更したラベル(ロゴマークは、新設されたJP POST郵便局に変更)が新調されるが、当面は、従来の「郵便事業株式会社」名のラベルも並行して配布する形となり、1年以内に差し替えを順次行うとしている(2012年現在)。なお、郵便事業名ラベルの配布完了後も、当面は利用可能としている。
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