フラッパーの語源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/14 16:15 UTC 版)
「フラッパー (flapper)」という言葉は、ひな鳥が羽を羽ばたかせて (flap) 飛び立つ訓練をしている様子を意味し、そこから転じて未成熟な若い女性を表すスラングとなったといわれている。また他の説として、まだ髪を結い上げることが出来ない若い女性の束ねた髪が背中でひらひらする (flap) ところから、イングランド北部で10代の少女のことをフラッパーと呼んでいたという説や、古語で娼婦のことをフラッパーと呼んでいたという説がある。 1630年代初頭では、年若い娼婦が「フラップ」というスラングで呼ばれていた。1890年代終わりのイングランドでは「フラッパー」が10代半ばの活発な少女を意味する言葉として使われるとともに、とくに年若い娼婦を意味するスラングとしても使われるようになっていた。 「フラッパー」という言葉が文献に出てくるのは、イングランドが1903年初頭、アメリカが1904年のことで、小説家デズモンド・コークが自身の大学時代を綴った『サンフォード・オブ・マートン (Sandford of Merton)』の「気絶したフラッパー」という記述が初出である。1907年にはイングランドの俳優ジョージ・グレイヴス (George Graves) が、イングランドでは舞台で軽業を売り物にする若い女芸人のことをフラッパーと称するとアメリカ人に説明している。 1908年にはイギリスの高級紙『タイムズ』でも「フラッパー」という言葉が使用されるようになった。ただしタイムズでは「“フラッパー” は、髪を結い上げ長いドレスを着用(して社交界にデビュー)する前の年若い淑女を意味する」という注釈つきで使用されていた。1910年11月にAE・ジェームズが、不運な14歳の少女を主人公として『ロンドン・マガジン』に掲載した『フラッパー陛下 (Her Majesty the Flapper)』という題名の一連の物語が人気を博している。1911年ごろまでには、新聞の劇評で「フラッパー」がいたずら好きで茶目っ気がある、あるいは異性の気を惹くそぶりを見せる役柄の代名詞として使用されるようになっていった。 1912年ごろまでには、ロンドンの舞台興行主ジョン・タイラー (en:John Tiller) が『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューで、「フラッパー」を「いまにも世に出そうな」やや年長の少女という意味で用いている。「フラッパー」は大胆で溌剌とした10代の少女を指す言葉として広く知られていたが、イギリスでは徐々に衝動的な性質で大人気ない女性全般を意味する言葉となっていった。第一次世界大戦時にフラッパーという言葉はますます使用されるようになっていったが、これはおそらく出征で男性が不足した職場に女性が登用され始めたことと関係している。1919年の『タイムズ』には、戦争からの帰還兵たちが職場に復帰すると女性の職探しが難しくなり、「フラッパーたちの将来」が懸念されるという内容の記事を掲載している。このような社会情勢のなか、フラッパーは「独立心旺盛で享楽的な若い女性」を指す言葉へと変化していったのである。 1920年までに、フラッパーは特定の世代とその行動様式を示す言葉として一般的になっていった。当時のイギリスでは多くの若い男性が第一次世界大戦で命を失ったために、適齢期の女性が結婚相手を見つけられずにいた。R・マレイ=レスリー博士はその講演で「ある種の社交家のなかには……浮ついた性格で、露出度の高い衣服を着てジャズを愛好するフラッパーと称される人々がいる。責任感がないうえに行儀も悪く、ダンス、新しい帽子、男性と自動車などを国家の大事よりも重要視する女性たちだ」と批判している。 1920年代初めのアメリカでは10代の若い女性たちが好んだ、留金をせずにオーバーブーツ(雨天時に靴に被せるゴム製、ビニール製の靴 (en:Galoshes))を履くといったファッションを指す言葉として「フラッパー」が使われるようになった。また、歩くたびにとめられていないオーバーブーツの留め具がひらひらする様子も「フラッパー」と呼ばれていた。 イギリスでは1930年代なかばでも「フラッパー」という言葉が時々使用されてはいたが、すでに死語となりつつあった。1936年の『タイムズ』では「ブロット(泥酔 (blotto))」などと同じくフラッパーが時代遅れのスラングに分類されている。
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