ネーデルラント 1765年9月-1766年3月
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「モーツァルト家の大旅行」の記事における「ネーデルラント 1765年9月-1766年3月」の解説
レオポルトはハーゲナウアー宛ての書簡の中で一家はネーデルラントには立ち寄らず、パリへ向かってそのままザルツブルクの家に帰ると明言していた。しかしながら、彼はオランダ総督ウィレム5世の姉であるナッサウ=ディーツ妃の使節からの説得を受け、デン・ハーグに向かい宮廷の公式な客人として子どもたちを妃に謁見させることにした。一行がカレーに上陸した後、ヴォルフガングが初めての病である扁桃炎にかかり、その後レオポルトが長引く眩暈の発作に悩まされたため、リールへ入ったのは一か月遅れとなった。9月の初旬には一家はヘントへと移り、そこでヴォルフガングはベルナルディンス・チャペル(Bernardines-)に新しく設置されたオルガンを演奏した。その数日後には、彼はアントウェルペンの大聖堂のオルガンも演奏している。9月11日、一家はようやくデン・ハーグへと辿り着いた。 デン・ハーグに到着すると今度はナンネルがひどい風邪にかかり、滞在第1週目に行われた最初の妃の御前演奏に参加することができず、さらにその数日後の王子への御前演奏も欠席せざるを得なかった。レオポルトはナンネルの快復を確信した上で、9月30日にオード・ドーレン(Oude Doelen)のホールに2人の神童が登場するという告知を出した。この演奏会の知らせではヴォルフガングの年齢を8歳とする一方(彼は9歳だった)、ナンネルは正しく14歳となっていた。広告はヴォルフガングに焦点を当てたものだった。「この若き作曲家の両手からはあらゆる序曲が紡ぎだされる(中略)音楽愛好家は思い思いの音楽を持って彼に対面するがよい。さすれば彼はそれを初見で弾きこなすであろう。」この演奏会が実際に行われたかどうかは定かではなく、セイディーは延期されていてもおかしくないと考えている。もし開催されていたのであればヴォルフガング1人が出演したことになる。なぜなら、この時にはナンネルの風邪は腸チフスへと変わっていたからである。彼女の病状は次第に悪化していき、10月21日には臨終の宣告を受けるまでになった。王宮から往診に来た医師が治療法を変えたことで危機を脱したナンネルは、その月の終わりには快復していた。今度はヴォルフガングは病に罹るが、12月の半ばまでには再び調子を取り戻した。 2人の子どもは1766年1月22日にオーデ・ドーレンで行われた演奏会に出演することができ、そこではヴォルフガングがロンドンで作曲した交響曲、K.19、そしてネーデルラントで書き上げられた新作の交響曲『交響曲第5番』も初披露を迎えた可能性がある。この演奏会の後、彼らはアムステルダムで過ごし、3月のはじめにデン・ハーグへと戻った。彼らが戻ってきた理由は、王子の成人を市民が祝う式典が近く行われることになっていたからである。ヴォルフガングは小オーケストラとハープシコードのためのクォドリベット(英語版)『Galimathias musicum』K.32を作曲し、これは3月11日に王子を讃える特別演奏会で演奏された。この曲はこの行事のために作られた楽曲の中の1曲である。ヴォルフガングはピエトロ・メタスタージオのリブレット『アルタセルセ(英語版)』(『誠実に身を守れ(英語版)』K.23を含む)の台詞を使用し、妃にアリアを作曲している。また、『オランダの歌曲 Laat ons juichen, Batavieren!によるクラヴィーア変奏曲』K.24も書いた。さらに、かつてフランス王妃やイギリス王妃にしたのと同様、妃のためにK.26-31のヴァイオリンソナタ集を書き上げている。また、以前はこの数年後に書かれたと考えられていた『旧ランバッハ交響曲』K.45aとして知られる交響曲も、デン・ハーグにおいておそらく王子の成人の祝典演奏会のために作曲されたとみられる。 3月の終わりにデン・ハーグを発った一家はまずハールレムに立ち寄るが、そこではグローテ・ケルクのオルガニストがヴォルフガングを教会へと招き、国内最大級のオルガンを弾かせている。そこから途中のアムステルダムやユトレヒトでコンサートを開きつつ南東へと陸路を進み、ネーデルラントを後にするとブリュッセルとヴァランシエンヌを経由して5月10日にパリに到着した。
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