ドライブレコーダー「事故時の第3の目」
航空機には、フライトレコーダーという運行状況を記録する装置が装備され、航空機事故の原因究明の際に重要な証拠として活用されています。しかし、全国各地で毎日約2,500件も発生している交通事故の原因究明は、従来、当事者の話と目撃証言だけに頼っていたのがほとんど。双方の話が食い違って検証に多くの時間がかかる場合も少なくありません。
そこで考えだされたのが、事故時の目撃者に代わり、事故の前後数十秒間を画像に記録する「ドライブレコーダー」(車載型画像記録装置)。
国土交通省の04年度実証実験で、具体的な効果が立証されています。タクシー会社3社を対象にした実験で、月間1台あたりの事故発生件数は装着前が0.102件だったのに対し、装着後は0.086件と、減少率は約15%。装置の有無が事故の抑止に直結していることがわかりました。
この効果を踏まえ、国はドライブレコーダーを活用した取り組みを進めています。国土交通省は、06年度から2010年度までの5年間の交通安全に関する計画で、安全運転を確保する重点施策の一つに「映像記録型ドライブレコーダーの普及」を挙げています。
ドライブレコーダーの装備は、タクシーや運送会社などの業種で導入され始めていますが、一般の人の認知度はまだまだ低いのが実態です。近年は、個人での購入もされるようになってきましたが、市場の拡大はこれからが本番。現在、事業者、個人向けに様々な製品が発売されています。
その中で、富士通テンのドライブレコーダーは、急ブレーキ時や事故による衝撃を受けた前後20秒の映像と音声を記録します。カメラと本体は分離されていて、ルームミラーの裏につけるカメラで撮られた映像は、常に本体部の半導体メモリーに記録。メモリーにある事故前の12秒間のデータと、事故後8秒間の映像を合わせ、事故前後の状況を記録するというもの。
ただでさえ人の記憶はあいまい。まして事故に遭えば、冷静な思考を保つのは困難です。しかし当事者の記憶ではない、第3の目が記録した映像は客観的で決定的な証拠。事故状況を正確に把握する決め手になります。
またその効果は、トラブル処理だけではなく、運転マナーの向上にもつながります。事故だけでなく急発進や急減速のデータも残ることから、この「記録されている」という心理環境が、安全運転の意識につながり、事故抑止に結びつくようです。さらに、急発進や急減速が減ることで、燃費の改善といった環境問題にも寄与できます。
将来、ドライブレコーダーが記録したデータから、急減速の行動傾向を分析し、どのポイントでブレーキを制御すれば、安全性能の高度化につながるかなど、画期的な安全技術が生まれるかも知れません。
ドライブレコーダーは今後の成長が見込まれている製品。民間調査会社の調査によると、2010年は出荷台数で06年度見込み比約2.7倍の25万台、市場規模は同比2.1倍の135億円とされています。
市場拡大の要因は、低価格化と普及を後押しする国の動向。エコドライブ管理システム(EMS)普及事業を行う運輸低公害車普及機構(東京都新宿区)は、富士通テンの運輸向けドライブレコーダーをEMS機器として認定。導入費用の3分の1を補助しています。燃費改善につながる装置として補助対象にしており、価格面の負担を減らし、利用を促しています。
(掲載日:2007/04/25)
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