ジャンルとして確立以降
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 02:04 UTC 版)
1988年から真船一雄が週刊少年マガジンで連載の『スーパードクターK』は医療漫画でよくある現実味、万能感とは逆に最大限活かした長編、本ジャンルの極北とも評される。同作は医師を原案協力としてクレジットすることで主人公の技量に現実味と説得力を持たせ、そういった専門家監修は1980年以降の医療漫画でよくみられるようになり『ブラック・ジャック』で描かれた医師としての超人性は『スーパードクターK』では身体的なものとなり、現実と虚構のバランスをとった。 動物医療を題材とした漫画としたサブジャンルを決定付けたのは佐々木倫子が花とゆめで連載の『動物のお医者さん』で、21世紀の医療漫画はそれまであまり注目されることのなかった専門分野を題材にしていることも多いが、それの先駆けにも挙げられ、同作は医療漫画でよくある涙を誘うような話は全くなく、専門的な診療もないが、連載に当たって募集したエピソードを元に描かれた大学獣医学部で学ぶ学生にリアリティを感じさせた。また佐々木はビッグコミックスピリッツで1995年連載開始の『おたんこナース』で原案、取材として看護師をクレジットし、医療漫画でリアルな舞台設定の傾向が見られ始め、基本はコメディだが人間模様や心情の変化、病気や死との向き合いなどから看護師ものの標準作である。 1995年に連載開始した森本梢子の『研修医なな子』は女性向け医療漫画としてはおそらく最初の作品である。 2000年に始まった山本航暉の『ゴッドハンド輝』は医療漫画として少年向け及び週刊少年マガジン史上最多の全62巻のヒット作で、同作は世間ではあまり知られていない領域、スポットが当たり辛い業界人に注目、内科診断の重要性、麻酔科医の必要性、理学療法士、臨床薬剤師、栄養士、臨床工学技士、製薬会社の営業といったことが描かれ、また、日常に役立つ家庭の医学を取り扱った情報漫画の要素もあり、現実とフィクションをうまく織り交ぜ、ドラマチックな治療や凄い技、医療従事者の苦悩や患者のドラマ、医療情報に主人公の成長が詰まった同作は医療漫画の理想とも評される。 2000年代は村上もとかの『JIN-仁-』、山田貴敏の『Dr.コトー診療所』のようなヒューマンドラマ作品、佐藤秀峰の『ブラックジャックによろしく』、乃木坂太郎の『医龍-Team Medical Dragon-』、くさか里樹の『ヘルプマン!』といった医療監修、綿密な取材をして描かれた作品が発表された。また『ヘルプマン!』は介護現場の問題を取り上げた先駆であった。 2006年出版された細川貂々の『ツレがうつになりまして。』は当事者による医療エッセイ漫画がまだ少ない中でその先駆けとして登場した。 2010年代になると現実のチーム医療が反映されたものや医療関係の職種、登場する病気などが多様化した。 病気をめぐる主観的で複雑な個々の経験を表現したコミックがふえており、それを「グラフィック・メディスン」と呼び、日本でも2018年に一般社団法人日本グラフィック・メディスン協会が設立されている。 2020年から新型コロナウイルスが流行するとそれを取り入れた、しりあがり寿がコミックビーム連載の『NEW NORMAL DAYS』、いがらしみきおの『ふつうのきもち』、複数の漫画家によるコロナ禍の日々を描く『MANGA Day to Day』などが発表された。
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