ジャンルと構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 10:50 UTC 版)
『カンタベリー物語』の構造は枠物語と呼ばれるものである。しかし、チョーサーは他の枠物語には見られない工夫を凝らしている。多くの枠物語は1つの(たいていは宗教的な)テーマに絞っている。『デカメロン』ですら日ごとのテーマが決められていた。しかし『カンタベリー物語』では、テーマのみならず、語り手の階級、各話の韻律、スタイルにも多様化がはかられている。巡礼団という設定がそれを可能にし、さらに話を競い合うという設定は、話をバラエティ豊かにし、様々なジャンル、スタイルに精通したチョーサーの腕の見せ所となった。 物語の構造が線形であるが、ただ話が順番に語られるだけではない。『総序』においてチョーサーは物語を語らず、語り手となる登場人物たちを紹介する。これは『カンタベリー物語』が全体的なテーマより、登場人物のキャラクターに重きを置いていることをはっきりと示している。話が済んだ後で登場人物たちが感想を述べ合ったり、他人の話を遮ったり、話の途中で口を挟んだりする。 巡礼団がいつ・どこにいるのかに関して、チョーサーはあまり気を遣っていない。巡礼そのものではなく、語られる話に専念しているように見える。
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