シベリア・トラップ
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シベリア・トラップ(露: Сибирские траппы、英: Siberian Traps)は、ロシアのウラル山脈の東に、中央シベリア高原を中心として広がる洪水玄武岩である。緯度50 - 75度、経度60 - 120度にわたる面積2,000,000km2は、西ヨーロッパの面積に匹敵する。
解説
2億5100万年前のP-T境界頃に200万年以上続いたと考えられる大規模な火山活動で、マントルプルームがシベリア・クラトンを貫いて噴出したもの。凝灰岩や火砕岩が分布し、珪長質である流紋岩やかんらん岩を伴うことから、爆発的噴火があったことが分かる。これにより、当時の生命体のうち属レベルで8割以上が絶滅したと推定される[1]。
2000年以降は、ライデン大学とケンブリッジ大学の共同研究の結果、シベリアの洪水玄武岩中に含まれるウランとトリウムの放射年代測定の結果が2億5100万年前に一致しないため、巨大隕石の衝突を原因とする学説もある。また、ソヴィエト連邦の崩壊後は、プーチン大統領の指揮のもとで天然資源開発が進み、ノリリスクなどで大規模なニッケル・銅・パラジウムなどの天然資源や、核兵器や原子力発電に用いるためのウラン採掘が行われている[2]。
脚注
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参考文献
- 井尻正二、端山良和『地球の起源と歴史』法政大学出版局、1984年4月。ISBN 978-4-588-75602-3。
関連項目
外部リンク
- Nature & Earth 「酸性雨やオゾン層の破壊がペルム紀末に起きた種の大量絶滅を引き起こした」 - ScienceNewsline、2013年11月22日付(2015年11月20日閲覧)
- NEWS & VIEWS「大量絶滅を引き起こした巨大火山活動」 - Nature ダイジェスト、 Vol. 8, No. 12、2011年12月号(2015年11月20日閲覧) (
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シベリア洪水玄武岩
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/08 17:02 UTC 版)
1992年に、過去6億年間でもっとも大きな火山噴火のひとつとされているシベリア洪水玄武岩(シベリア・トラップ)の噴出が、P-T境界と同時期に起こったと発表された。シベリア洪水玄武岩は現在残っている面積は日本(約38万平方km)の約2倍の67万5千平方kmであるが、元の範囲の推定値は拡大し続けている。火山活動は1000km以上離れた少なくとも4箇所の独立した中心地を持ち、溶岩はアメリカ全土(約963万平方km)の面積に近い700万平方kmを覆い、噴出総量は400万立方kmと推定されている。火山活動の中心地のひとつシベリア北西部ノリリスク地区は溶岩の厚さが3700mあるが、ここの溶岩をアルゴン年代法で分析した結果火山活動の開始は2億5000万年前プラスマイナス160万年であるとされた。また同じ地区の溶岩をウラン・鉛年代測定法で分析した結果、噴火年代は2億5170万年前プラスマイナス50万年から2億5110万年プラスマイナス40万年とされている。すなわち生物の大絶滅と同時に起こっており、P-T境界の大絶滅の重要な原因と考えられている。現在見られる玄武岩質溶岩の噴火はハワイのキラウエア火山噴火のように比較的おだやかで、火山灰を成層圏まで吹き上げるような爆発的な噴火ではない。シベリア洪水玄武岩も大部分はそのような噴火であったと考えられるが、一部においては非常に爆発的な噴火を起こしたことが確認された。すなわち揮発成分を多く含みマントル深部から急速に上昇したとされ、またダイヤモンドの母岩でもあるキンバーライト・パイプ(地殻中のマグマの上昇速度は新幹線並みとされる)がタイミル地方東部で確認されている。 火山の噴火による環境への影響は下記のものが想定されているが、実際にどのような環境変化が生物を大量に死滅させたかは確認できていない。 空気中に放出された大量の火山灰による地上への日射量減少による低温化、いわゆる「火山の冬」 放出された硫黄が空中で酸化されて「硫酸エアロゾル」となって大気中に漂い、地上に到達する日射量を減少させることによる低温化 大量の硫黄が空中で酸化して生成した酸性雨による環境破壊 火山ガスの主成分の二酸化炭素(温室効果ガス)による温暖化 シベリア洪水玄武岩は厚い石炭層の上を覆った。地下の石炭は高温により分解してメタンガス(二酸化炭素よりも強い温室効果ガス)や二酸化炭素となって空中に放出された可能性があり、これらの温室効果ガスに由来する温暖化 大規模な火山活動で排出された二酸化炭素による温暖化、それに伴うメタンハイドレートの溶解により(水蒸気も二酸化炭素よりはるかに強い温室効果ガスである)温暖化が加速され、さらに多くのメタンハイドレートの溶解、 世界各地のP-T境界の地層から大量の硫化物が見つかっている事や、中国煤山のP-T境界の地層からマントル由来のストロンチウム同位体の顕著な増大から、シベリア洪水玄武岩とP-T境界の大絶滅が同時進行であったと推定される。なおP-T境界の前段階であるガダルピアン末の大絶滅において、中国雲南省にある洪水玄武岩の峨眉山巨大マグマ区との同時性が検討されている。この洪水玄武岩はシベリア洪水玄武岩より規模はかなり小さいもので、年代分析ではガダルピアン末の大絶滅と重なる数字が出されているが、両方の事件が同時に生起したと言う確認は取れていない。
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