ゴールデンソーンのインタビュー
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「カール・デーニッツ」の記事における「ゴールデンソーンのインタビュー」の解説
ニュルンベルク裁判の際に精神医学者レオン・ゴールデンソーンから受けたインタビューの中でデーニッツは、自身がヒトラーの後継者になったことについて「ヒトラーが私を選んだのは、海軍軍人として評判が高く分別のある男でないと、きちんとした和平は結べないと思ったからに違いない。私は喜んで引き受けた。当然ではないか。当時はヒトラーのユダヤ人絶滅計画のことなど知らなかった。ニュルンベルクに来て初めて知ったのだ」「崩壊しつつある国家の指導者の地位を引き受けることは犯罪なのかね。ドイツの天敵であるロシアに武器や人員を奪われるのを防ぐのが犯罪だというのかね。我々が降伏しなければならないのは分かっていたし、その相手はロシアではなく英米であってほしいと思っていた。」と述べている。 ニュルンベルク裁判については「そもそも外国の法廷がどうして主権を有する他国の政府を裁けるのだ。我々が戦争に勝っていたらルーズベルト、モーゲンソー、チャーチル、イーデンらを裁くことができたというのか。我々にはできなかっただろうし、そうしようとも思わなかっただろう。いかなる裁判が行われるにせよ、それは当の国家とそこに設けられた法廷による物でなければならない」と批判している。 ヒトラーについては「彼のいうことはいつも筋が通っているように思えたし、彼の要求はドイツのためを思ってのことと感じられた。今にして思えば彼はユダヤ人や近隣諸国民に対してあまりにも配慮に欠けていた。」「彼は極めて頭脳明晰だった。私はドクター・ギルバートから受けた知能テストで数字を9桁まで記憶できたが、ヒトラーは驚くべき記憶力を発揮し、読んだことのある物はなんでも思い出せたのだ」と述べている。ゲーリングについては「この裁判に関する限り、ゲーリングの行いに悪いところなど思い当たらない。これまでいかなる嫌疑も証明できてはいないではないか。私はゲーリングに言ったことがある。国家社会主義の問題点はそれが分裂した家だったことであり、ドイツは隣人の事を考えずにコミュニティで生きていこうとしたのだ、と。ゲーリングは私に同意していた。だから、ゲーリングでさえも検察が世界の人々に信じ込ませようとしているほどには悪い人間ではないのだ」と述べている。 同インタビューの中で自分はユダヤ人に対して偏見はないと主張した。その実例としてデーニッツは、1934年にデーニッツの艦がスペインの港に停泊した際にドイツ領事の反対を押し切ってスペイン北部に銅山を所有するユダヤ人を艦の午餐会に招いたことと、またヒトラーが海軍士官学校の責任者の将校がユダヤ系であるとして罷免を要求してきたときに拒否したことをあげている。ユダヤ人迫害を知っていたかという質問に対しては「知っていたとも言えるし、知らなかったともいえる。1938年のユダヤ人襲撃やユダヤ人に課された罰金については、何かで読んで知っていた。だがUボートや海軍の問題で手いっぱいでユダヤ人のことを気にかけてはいられなかった」「私にやましいところはない。残虐行為や犯罪行為には加担していない。祖国のためにヒトラーの戦争遂行には手を貸したが、だからといって私がユダヤ人絶滅の手助けをしたという批判に晒されるのはおかしい。それはまったくのでたらめだ」と答えている。 強制収容所については知っていたことを認めたが、「当時収容されていたのは1万2000人の政敵だけだった。いまアメリカ占領下のドイツだけで50万人のドイツ人が収容所に入れられている。それを考えたことはあるか。」「(強制収容所は)ある程度は正当だと言える。1933年にヒトラーが共産主義者を収容所に放り込んでいなければ、内戦が勃発し、流血の惨事になっていただろう。共産主義者は合法的に選ばれた政府に対しても反乱を起こす。ドイツにおける内乱の危機は1932年に最高潮に達していた。この時に共産主義か国家社会主義かの選択が迫られたのだ。そしてヒンデンブルクら保守派はヒトラーを選んだ。私もそうだった。もう一度共産主義か国家社会主義を選ぶことになっても、私はまた同じ選択をするだろう。有害思想の持ち主を収容所に入れたことによりドイツは血を流さずにすんだのだ。内乱になった方がよかったとでもいうのか」と述べている。 ソ連や共産主義については嫌悪感を隠さず「ロシアは世界最悪の犯罪国家だし、共産主義は最も邪悪な思想だ。連中が私を共同謀議に加担したかどで告発するなどお笑い草だ。ロシア人はいつも陰謀を企てているではないか。ロシアは我々と戦争になる前、デンマークを少々とポーランドが欲しいと言ってきた。それが今では政治的な陰謀を企てたと言って私を告発している。」と批判している。
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