クライミング・ボーイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/05 08:11 UTC 版)
クライミング・ボーイ(climbing boys)と呼ばれる少年たち(時には少女)は、厳密には煙突掃除人見習い(chimney sweeps' apprentices)と呼ばれ、大人であるがゆえに煙突や煙道に入れない親方掃除人(マスター・スイープ、master sweep)に弟子入りするという形をとった。親方掃除人は教区から報酬を得て、孤児や貧民に技術を教えた。彼らは彼に完全に依存していた。少年らやその保護者は治安判事の面前で契約書に署名し、成人になるまで親方に拘束されることとなった。救貧法に基づく後見人は教区の費用を削減するために、自分が世話をしているワークハウスの子供たちをできるだけ多く(煙突掃除に限らず)徒弟制度の見習い(弟子)に出す義務があった。親方掃除人には見習いにその技術と秘訣を教えること、2着目の服を与えること、週に1回身体を洗うこと、教会に通わせること、火のついた煙突には登らせないことなどの義務があった。見習いは親方に従うことに同意した。7年間の見習い奉公が完了すると職人掃除人(ジャーニーマン・スイープ、journeyman sweep)となり、彼自身が選んだ親方掃除人の下で働くようになれた。それ以外は別の掃除夫や親に売られたりした。値段は7シリングから4ギニーだった。 一般的には訓練の開始は6歳の男子が良いと考えられていた。シャフツベリー卿は4歳の少年と出会ったことがあったが、ひ弱だと認識されていた。親方には多くの見習いがおり、朝から街中を歩きまわって「煤を払うぞー(スートゥ・オー・スイープ、Soot -Oh, Sweep)」などの掛け声を挙げ、掃除されていない煙突の危険性を思い出させた家主たちに自分たちの存在を知らせた。作業を行うとき、親方は暖炉に布を掛け、見習いは靴や余計な衣服を脱いで暖炉の後ろに回った。煙道は家屋と同じくらいの高さのところで数回曲がっており、その寸法は14インチ×9インチだった。帽子をかぶり、大きな平たいブラシを頭にかざして、体を斜めにして楔のようにし、煙道に入った。背中と肘と膝を使ってイモムシのように煙道を這い上がり、ブラシを使って緩いススを取り除き、それが自身の頭上に振った後、下の方へと落ちていき、滑らかで安全な煙突にするために固い部分はスクレイパーを使って削り落とした。頂上に到達すると迅速に滑り下りて煤の山の中に戻る。そして煤を袋に詰めて、親方の手押し車や庭に運び出すのも彼らの仕事だった。 煤は貴重品であり、1840年には1ブッシェル9ドルで売ることができた。見習いは1日で4~5本の煙突を掃除した。最初の頃は膝や肘を擦りむくため、親方は彼らを熱い火のそばに立たせた後、塩水で濡らしたブラシで強く擦り付けるなどして、皮膚を硬くさせた。これは十分に硬くなるまで毎晩行われた。見習いに賃金はなく親方の家に住み込みという形で衣食住が保証された。少年たちは床や地下室で昼間に煤を集めるために使った袋や布を布団代わりにして寝ていた。これは「スリーピング・ブラック(sleeping black)」として知られている。少年たちは女主人によって庭の浴槽で身体を洗われたが、これは週に一度あるかないか程度のものであった。ある掃除人はサーペンタイン池で少年たちを洗っていた。別のノッティンガムの掃除人はクリスマス、聖霊降誕祭(英語版)、ガチョウ祭り(英語版)の年3回しか洗わないと述べていた。時折、親方は少年たちにいつもより早く、あるいは高く煙突を登るように強いなければならない時があり、この時、小さな火のついた藁か硫黄のロウソクを灯して、やる気を出させていた。また、別の少年を背後から登らせて、尻や足の裏にピンを刺すことで、「失神」(窒息)を防ぐ方法もあった。 煙突のサイズは様々であった。一般的な煙道は、長さ1.5レンガ、幅1レンガの大きさに設計されていたが、多くの場合、1レンガの正方形、つまり9インチ(230 mm)x 9インチ(230 mm)以下に狭められていることもあった。煙突はまだ熱を持っていることも多く、時には火がついていることすらあった。不注意なクライミング・ボーイは顎と膝がくっついた形で煙道に挟まり、立ち往生してしまう可能性もあった。もがくほど、より密着して悪化した。この場合、下から押し出されるか、ロープで引っ張り出されるまで何時間もこの状態が続いた。もがいた結果、落ちてきた煤で窒息する危険もあった。最悪は少年の生死問わず、煙突の側面のレンガを外して取り除くことになった。煙突が特に狭い場合には「buff it」と言われ、つまり裸でやるように言われた。そのような場合以外では、ズボンと厚手の荒い綿布でできたシャツを着るだけだった。
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