ギャリソンキャップとは? わかりやすく解説

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ギャリソンキャップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/30 10:08 UTC 版)

ギャリソンキャップをかぶる英王立空軍ジョック・スターラップ大将(左)と米空軍ウィリアム・フレイザー英語版中将(右)(2005年撮影)

ギャリソン・キャップ(Garrison cap)は、帽子の一種である。ギャリソンとは駐屯地の意。サイド・キャップ(Side cap)、舟形帽などとも呼ぶ。

概要

ギャリソン・キャップの起源には諸説ある。一つは、スコットランドグレンガリー帽(glengarry cap)から派生したものであるとする説、もう一つは、1800年ごろからイギリスフランス陸軍ユサールが略帽として被っていた「ボネ・ド・ポリス」(Bonnet de police)と呼ばれるフェズ帽ないしナイトキャップのような帽子から派生したとする説[1]、そしてオーストリア・ハンガリー帝国騎兵が被っていた略帽から派生したとする説である。

このいずれか、もしくは相互の要素を受け継ぐ形で19世紀末に英国陸軍に「トリン・キャップ」と呼ばれる帽子が導入された[1]。これが現在のギャリソン・キャップの始まりである。

正面から見ると二等辺三角形ないし山形、上下からは紡錘形に見える独特の形をしている。折り畳んでベルト肩章などに挟めるため携帯しやすく、第一次世界大戦以降、軍隊等の制帽の一つとして用いられている。この場合、用途により「野戦帽」「戦闘帽」などの呼称も用いられる。パイピングの色で階級兵科を示す場合もある。

各国への影響

ソ連軍の略帽:ピロートカ、正面と横向き

ギャリソンキャップはその使いやすさから全世界に広まり、それぞれの風土に合わせ、また現地の民族帽と結びつくなどして多種多様な変化がなされた。

オーストリアでは、普墺戦争敗北後の1868年に制定された服務規程(Adjustierungsvorschrift)によって騎兵部隊に赤色の略帽を採用した[要出典]。共通兵科の山岳帽と似てボタン止めの耳当てが付いていたが、庇は革ではなく本体と同素材の布で出来ており折り畳み・展開が可能であった。その後1915年になると歩兵部隊での人気が高まり、陸軍用のフェルトグラウ色略帽も導入された。これは後継国であるハンガリー王国軍の制帽のデザインに大きな影響を与えた。

イギリスでは、オーストリア・ハンガリー帝国の山岳帽のように耳当てとなる部分を正面のボタンで止めるスタイルへと変わった。いつ頃そうなったのかは不明だが、第二次ボーア戦争中にヨーマン帝国義勇騎兵連隊英語版プリンス・オブ・ウェールズの羽根をあしらったボタンを付けている姿が確認できる[1]

一方、ロシアでも第1次世界大戦前の1913年に航空兵向けに採用されたもの[2]を1941年にソ連が復活させた。「ピロートカ」の名はパイロットに由来する。耳当ての中央に赤い星をあしらったシンプルなデザインである。こちらは大祖国戦争の間に歩兵向けに導入され、戦後は東側諸国の間に広まったが、装飾を好んだ中東欧諸国とは対照的に共産主義的観点から大きな差はない。

アメリカでは、第一次世界大戦時のアメリカ外征軍にてオーバーシーズ・キャップ(Overseas cap, 海外帽)としてヨーロッパ製のギャリソンキャップが採用されたのが始まりとされる。1941年にはギャリソンキャップとして制式化され、官帽型のサービス・キャップに代わって制帽として支給されるようになった[3]。その後、海軍・空軍・海兵隊の略帽に採用された。そのため、アメリカ式装備の軍隊ではとりわけ空軍にギャリソンキャップを採用している国が多い。

日本では、昭和初期に略帽として導入が検討されていたが最終的に戦闘帽が導入された。現在は航空自衛隊が略帽として採用している。色はジャケットと同じ濃紺で、曹士幹部でパイピングの色が異なる。

その他、ボーイスカウト団員などが被ることもある。アメリカでは退役軍人の制帽として知られる(公的行事では最後に所属した部隊・軍艦のネーム入りのものを被る。名誉勲章受章者はこれに加えて同章を胸に着ける)。

ギャラリー

アメリカ

イギリス・英連邦

フランス

ドイツ

その他ヨーロッパ

南米

アジア

警察・軍隊以外における使用例

脚注

関連項目


ギャリソンキャップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 04:15 UTC 版)

軍服 (第二次世界大戦の米陸軍)」の記事における「ギャリソンキャップ」の解説

ギャリソンキャップは勤務帽としても戦闘帽としても使われ略帽である。占領軍がよく被っていたため、日本人にとって米軍象徴のような印象がある帽子である。 陸軍第一次世界大戦中1917年海外派遣軍用に「オーバーシーズキャップ」という類似の略帽最初に制定したが、第一次世界大戦後には廃止されていた。1926年陸軍航空隊創設された際に航空隊用にギャリソンキャップが再制定された。陸軍1930年代機械化着手し1933年装甲車戦車兵向けにもギャリソンキャップを支給するになった1939年には全軍将校支給対象になったが、この段階でも実際支給海外派遣軍の一部のみだったらしく、1941年3月25日指令以降にようやく広く使用されるようになった11月10日陸軍規定でギャリソンキャップの名前が与えられた。1941年以降内国地域でも徐々に着用されるようになった第二次大戦中のギャリソンキャップには、丸み帯びたまちの付いた前期型スリット省略され前後垂直な中期型簡略化された四角形後期型三種類がある。素材OD色ウール製、カーキ色コットン製、少数だがHBT生地の物もある。 兵用の略帽には、兵科色パイピング入っている。歩兵ライトブルー騎兵黄色砲兵緋色機甲は緑と白。通信オレンジと白。工兵緋色と白といった具合である。将校兵科に関係なく金と銀で。将官は金だった。パイピング入っていないものもある。階級章はその中心部帽子前縁から1/2インチ位置入っており。少尉は金の線、中尉は銀の線、大尉二本の銀の線、少佐は金のオーク中佐は銀のオーク大佐将官は星の数といった具合である。 ギャリソンキャップを被るアーサー・ホワイト少将1945年) ギャリソンキャップを被る兵士たち1942年

※この「ギャリソンキャップ」の解説は、「軍服 (第二次世界大戦の米陸軍)」の解説の一部です。
「ギャリソンキャップ」を含む「軍服 (第二次世界大戦の米陸軍)」の記事については、「軍服 (第二次世界大戦の米陸軍)」の概要を参照ください。

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