キャラクターソングから一つの音楽ジャンルへ
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「ボカロ (音楽ジャンル)」の記事における「キャラクターソングから一つの音楽ジャンルへ」の解説
2007年12月7日発表のryoのボーカロイド曲『メルト』は「VOCALOIDとしての初音ミク」でなく、「1人の少女としての初音ミク」を映し出した楽曲となり、以降、VOCALOIDではない「一人の個人としてのVOCALOID」を描く楽曲も誕生していった。『メルト』の誕生は「歌ってみた」のブームを巻き起こしたということも相まって、『メルト』は初音ミクを「殺した」とまで形容される楽曲となった。これは後に「メルトショック」と呼ばれている。初音ミクが発売されてから1年を過ぎた頃からボカロ曲のリスナーの男女比が1対1となり、次第に「萌えカルチャー」としてのボカロ曲から「音楽ジャンル」としての初音ミクへと変化していった。2008年4月に投稿されたcosMo@暴走Pの楽曲『初音ミクの消失』などの「ボカロならでは」の音楽も数多く製作されていた中で、2008年の中頃にはポップスや打ち込みサウンドを主流としていたボカロ曲に、バンド出身者によるロックが参入してくる、いわゆる「VOCAROCK」が隆盛したとされている。164の初投稿作『shiningray』、DECO*27の初投稿作『僕みたいな君 君みたいな僕』、OneRoom(ジミーサムP)の楽曲『Scene』などがその代表例とされている。またこの時期には、現代音楽やブレイクコアを取り入れたもの(Treow)、プログレッシブ・ロックの影響を受けたもの(sasakure.UK)など、先鋭的な作風でのヒットも見られるようになった。 2008年8月27日にはlivetune feat.初音ミク『Re:package』が初のメジャーで流通したボカロアルバムとなった。同時期に、ニンテンドーDSiのソフト『うごくメモ帳』のサービスが開始し、ボカロ曲のカラオケが本格的に始まったことがボカロ曲の流行にも影響を与えたとされている。 2009年5月にデビューしたwowakaやハチ(米津玄師)などを筆頭に、この頃から「VOCALOIDであること」に焦点を当てた作品だけでなく、後に「VOCALOIDっぽい」と認識されることになるような作風を持つ楽曲も多数生まれてきた。その特徴としては、wowakaの『裏表ラバーズ』でのBPM159・16分音符の早口歌唱や、ハチの楽曲における特徴的な音階(『Persona Alice』のブルー・ノート・スケール、『結ンデ開イテ羅刹ト骸』のメロディック・マイナー・スケール)の採用が挙げられる。また「サビで転調する」歌が多く見られるようになったのもこの時期だとされており、この特徴は後に「2010年の3大ヒットボカロ曲」と形容されるwowakaの『ワールズエンド・ダンスホール』、DECO*27の『モザイクロール』、ハチの『マトリョシカ』などの楽曲にも見られる。このほかトーマは2011年5月の『バビロン』において、ポスト・ハードコア的な過剰性・複雑性を取り入れている。 また、2009年頃から当時の若年層がボーカロイド曲を耳にし始めたとされている。2009年にはJOYSOUNDのカラオケランキングで『メルト』がランクイン、2010年にはトップ10曲中の5曲がボーカロイド曲となる程の人気を博した。カラオケ「JOYSOUND×UGA」では、2011年のVOCALOIDの演奏回数は前年の1.7倍に達し、徐々にボカロ曲が裾野を広げていったことが窺える。同年から2012年ごろにかけてはメディアを通してボカロ曲が世間に広まっていった時期とされており、たとえば2011年9月17日にニコニコ動画上に投稿された黒うさPの楽曲『千本桜』は、カラオケなどを介して広く伝搬していった。 この間、後のwowakaやハチの活動停止を受けて、2011年から彼らの影響を受けたと考えられている楽曲も多数登場した。例えば、2011年11月からボカロPとしての活動を開始したkemuのデビュー曲『人生リセットボタン』はBPM200という速いテンポに16分音符を使用したロック音楽となっている。2013年3月に投稿された日向電工のヒット曲『ブリキノダンス』には16分音符の早口歌唱を始めとした、wowakaの影響を受けたと考えられるような特徴も数多く見受けられる。 2012年頃には『カゲロウプロジェクト』に代表される「プロジェクト系」の進行が見られた。他にも椎名もたの楽曲『ストロボラスト』はJust the Two of Us進行とリリースカットピアノを共に用いるという新たな音楽ジャンルを切り開いた。「リリースカットピアノ」は、2012年に投稿されたlumoの楽曲『逃避ケア』、2013年に投稿された150Pの楽曲『孤独ノ隠レンボ』、2013年にスズム名義で投稿された楽曲『世界寿命と最後の一日』、2014年に投稿されたまふまふの楽曲『戯曲とデフォルメ都市』などにみられ、2016年以降のボーカロイド曲にも影響を与えた。
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