オレゴンの爆発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/31 17:54 UTC 版)
1970年11月、体長14メートル、重量8トンのコククジラが、オレゴン州フローレンス近傍の海岸に打ち上げられて死んだ。当時、オレゴン高速道路局(現在のオレゴン州運輸局)がこの海岸の管轄であり、クジラの死骸を取り除く責任を負っていた。米国海軍と協議の末、岩をどけるのと同じ方法でクジラをどけるのが最良であろうと結論付け、11月12日に、クジラを破砕するために500kgのダイナマイトを使った。この決定は、クジラを埋めてもすぐに顕れてしまうから意味がないだろうが、ダイナマイトを使えば鳥などの屍肉食(腐肉食)動物が片付けてくれる程度に小さい破片に分解することができるだろうと考えたためだった。この作業の責任者ジョージ・ソーントンは、当時、爆破のためにどの程度の量のダイナマイトが必要か全く見当がつかなかったと語ったと記録されている。後にソーントンは、この管区の技師デイル・アレンが狩りに出かけていたためにクジラを取り除く作業に抜擢されたのだと語っている。 爆破の結果はテレビのニュースリポーター、ポール・リンマンによってフィルムに記録されていた。リンマンは、「爆発がクジラの脂肪を信じられない範囲に飛び散らせた」ために「青臭い(land-lubber)記者」が今や「脂臭い(land-blubber)記者」になったと冗談を言った。この爆発によりクジラの脂肪の大きな塊が、海岸からかなり離れた距離にまで落下し、自動車を叩き潰した。しかしクジラの大部分は分解せずに残り、オレゴン高速道路局の局員が撤去しなければならなかった。 このニュースの終わりに、ポール・リンマンは「レーン地域に再びクジラが流れ着くことがあったとしても、責任者は何をするべきかを忘れないばかりでなく、何をするべきでないかも忘れることはないだろう」と述べた。1979年に41頭のマッコウクジラが近くに着岸したが、州の公園当局はそれを焼いて埋めたことが、オレゴン運輸局の従業員新聞 TranScriptで報じられた。現在[いつ?]、海岸の責任者は着岸して死んだクジラは沖へ曳航することにしている。腐った死体はサメをおびき寄せ、海岸の利用者を危険にさらすことになるためである。 近年まで鯨の爆破の話は単なる都市伝説だと考えられていた。しかし人気作家デイブ・バリー(英語版)が1990年5月20日のマイアミヘラルド(英語版)のコラムにこの事件の場面を書いたことで広く公衆の関心を集めた。いくらか後に、この記事の簡約版が「Farsideがオレゴンで現実に」というタイトルで電子掲示板で配信されてから、オレゴン州高速道路局にメディアから問い合わせの電話がかかりはじめた。しかし、この電子掲示板の記事は、その事件が25年も前に起こったことだということを伝えておらず、バリーの記事をコピーした誰かはその元記事の筆者が誰かを記すのを怠っていた。デイブ・バリーによると、定期的に誰かがその「作者不明」の記事が転送してきて、その事故になんらかの記事を書いただろうと言ってくるのだという。これらの見落としのために、オレゴン運輸局のTranscriptは、以下のように記した。 「電子掲示板にその話が掲示されてからというもの、我々は国中の詮索好きな記者からの問い合わせの電話がかかり始めた。」とオレゴン運輸局の広報コーディネータ、エド・ショープは語った。「彼らはそのクジラが最近流れ着いたものだと考えており、政府が脂肪のことでドジを踏んだニュースに興奮している。彼らはその話が25年の埃をかぶっていると知ると落胆している。」 「ショープは記者やオレゴン、サンフランシスコ、ワシントンD.C.およびマサチューセッツの単なる物好きからの電話の対応に追われている。ウォールストリートジャーナル、ワシントンDCの雑誌Governingが今年の6月号でその着岸したクジラについての不滅の伝説について特集した。そしてまだ電話は鳴り続けている。『定期的に問い合わせが来ます』とショープは語った。彼の電話はオレゴン運輸局のクジラホットラインと化した。『25年も前の話で未だに電話をかけてくる人がいるというのは面白いですよ。』」 KATUが報じたこのニュース映像は、後に、幾つかのウェブサイトで動画ファイルとして再掲載され、かなりよく知られたインターネットミームとなった。これらのウェブサイトは、アニマルライツ活動家の批判を引き付けた。彼らは動物虐待行動を茶化していると言って批判した(実際にはそのクジラは既に死んでいたが)。彼らの批判のeメールは、後に困惑したサイトの管理者によって公開された。 オレゴンの爆発するクジラの話は、一時期Usenetでも広く知られており、特に都市伝説のためのニュースグループ、alt.folklore.urbanで議論されていた。この事故は、バリーの記事の完全なコピーも含めて、このニュースグループの1991年のFAQに記録され、ピーター・ヴァンデルリンデンによってメンテナンスされた。その当時は「Tb」(真実だと信じられているが完全には立証されていない)に区分されていた。1992年に投稿者snopes (都市伝説のファクトチェックサイトSnopes.comの創設者デヴィッド・マイケルソン) がこれを本当か嘘かを確かめようと試みて、ニュースグループは真実であるという報告を受け、こうしてこの情報は真実に区分された。
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