「事実上のアウンサンスーチー政権」の樹立
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「アウンサンスーチー」の記事における「「事実上のアウンサンスーチー政権」の樹立」の解説
2015年11月8日に実施された総選挙において、NLDが圧倒的な勝利を収め、アウンサンスーチー自身も連邦議会下院議員に当選したことが選挙管理委員会に発表された。10日に行われた外国メディアの取材に対し、アウンサンスーチーは新たに選出される新大統領について、憲法上アウンサンスーチーの就任が禁じられていることに合わせた措置に過ぎず何らの権限を持たない傀儡であり、「私がすべてを決定する」と断言した。 ただし、こうしたアウンサンスーチーの立場や、コーコージーなど民主化運動の有力者を議員候補リストから排除するなどの党運営について、「憲法の無視」「権威主義的な姿勢」などという批判がニューヨーク・タイムズなどからなされた。違憲の疑いも指摘されるが、アウンサンスーチー自身は憲法に規定がないため違憲ではないと主張している。 2016年3月22日、ミャンマー次期大統領のティンチョーは議会に新内閣の閣僚名簿を提出し、新政権にアウンサンスーチーが入閣することを明らかにした。3月30日、ティンチョーは正式に大統領に就任し、新政権が発足した。日本のマスコミはこの政権を「事実上のアウンサンスーチー政権」と評価している。アウンサンスーチーは外務大臣(国防治安評議会(英語版)のメンバー)、大統領府大臣、教育大臣、電力エネルギー大臣の4閣僚を兼任した。ただし、この中の教育大臣と電力エネルギー大臣のポストについてはほかに適任者が現れるまでの暫定措置であったとされており、政権発足後すぐに電力・エネルギー相はテイン・セイン政権でエネルギー省次官を務めたペー・ジン・トゥン(Pe Zin Tun)、教育相は教育省勤務経験のある西ヤンゴン大学学長のミョー・テイン・ジー(Myo Thein Gyi)へ交代させる人事案が連邦議会に提示されている。ミャンマーの憲法では国会議員と国務大臣を兼任することはできないため、アウンサンスーチーは大臣就任に伴って連邦議会下院議員を自動失職した。 4月6日、ミャンマー連邦共和国国家顧問のポストを新設し、それにアウンサンスーチーを任命する法案が成立した。この「国家顧問」は、憲法の規定で大統領に就任できないアウンサンスーチーに国家の最高指導権を委ねるための措置であるとみなされている。国家顧問は大統領に政治上の「助言」を与えることができるとされているが、アウンサンスーチーの「助言」は事実上、大統領への「指示」となっており、このためアウンサンスーチーが事実上の首相とみなされることもある。 外相就任後の4月5日、中国の王毅外相と会談した。王外相は今回の訪問がアウンサンスーチーからの招待であることを明かしたうえで「政権が交代しても両国の永続的友好関係は変わらない。農業やインフラ分野の経済協力を進める」と応じている。王外相は6日までミャンマーに滞在し、ティンチョー大統領とも会談した。 5月3日、ミャンマーを訪問した日本の岸田文雄外務大臣と会談した。 2017年9月、ミャンマー西部ラカイン(Rakhine)州で、ミャンマー政府がイスラム系少数ロヒンギャと武装勢力の関わりを何ら検証しないまま、ロヒンギャの村を放火した事実がBBCにより放映された。これらミャンマー政府によるロヒンギャへの対応について、国連関係者から「民族浄化」であるとの指摘がされるなどしており、同国の事実上の指導者であるアウンサンスーチーに対して、授与されたノーベル平和賞を取り消すよう求める請願運動がネット上で行われ、36万を超える署名が寄せられている。オックスフォード市より1997年に授与された名誉市民権(英語版)は、ロヒンギャ問題への対応不足を理由に2017年に剥奪されている。ロヒンギャ虐殺の黒幕とも呼ばれている反イスラーム主義団体969運動の指導者アシン・ウィラトゥは当初アウンサンスーチーの支持者であり、アウンサンスーチーも支持層の1つである969運動を積極的に制止しなかったとされる。2018年11月12日にアムネスティ・インターナショナルが、アウンサンスーチーのロヒンギャへの対応に失望したとして2009年に授与した「心の大使賞」を取り消すと発表。14日に米国副大統領のマイク・ペンスが、会談先のシンガポールでアウンサンスーチーに対し「ロヒンギャに対する迫害は『理由なき暴力』だ」と述べるなど、強い口調で非難したことが明らかにされている。2018年12月、パリ議会は、アウンサンスーチーが指導者としてロヒンギャに対する暴力・虐殺に対応しなかったとして、パリ市名誉市民の称号の取り消しを決定した。 2019年10月21日に迎賓館赤坂離宮で安倍晋三内閣総理大臣と会談を行い、翌22日の即位礼正殿の儀に参列した。 2020年11月8日に執行された総選挙ではNLDの苦戦も予想されたが、蓋を開けてみれば圧勝となった。惨敗を喫した国軍は不正投票があったと主張。
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