「フィルム・ノワール」という語の発明
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「ニーノ・フランク」の記事における「「フィルム・ノワール」という語の発明」の解説
ニーノ・フランクは、1946年の夏にフランスの映画館に上映されたアメリカの劇映画の一群を記述するために「フィルム・ノワール」という語を発明した、とたびたびクレジットされている。ジョン・ヒューストン監督の『マルタの鷹』、オットー・プレミンジャー監督の『ローラ殺人事件』(1944年)、エドワード・ドミトリク監督の『ブロンドの殺人者』(1943年)、ビリー・ワイルダー監督の『深夜の告白』(1944年)、フリッツ・ラング監督の『飾窓の女』(1944年)がそれである。ナチのフランス占領の時代、アメリカ映画はフランスでは許可されず、1946年夏というのは、フランスの観客にとって、これらの大戦中のアメリカ映画を観る最初の機会であった。 1946年、フランクと仲間の批評家ジャン=ピエール・シャルティエが2つのもっとも早い映画記事で、1940年代からのハリウッドの犯罪劇を「フィルム・ノワール」と記述した。『Un nouveau genre 'policier': L'aventure criminelle(探偵ものの新ジャンル、犯罪的冒険もの)』と題したフランクの記事は、1946年8月に、社会主義学習雑誌『レクラン・フランセ』に掲載された。同記事では、「感傷的なヒューマニズム」や「社会的な幻想」を排除し、妄想狂のフレンチ・ノワールのテーマとしての「暴力的な死のダイナミズム」を挙げ、「犯罪心理学と女嫌い」のアメリカ的傾向に注意を引いた。フランクの記事はこう述べている。「…これらダークな映画、これらフィルム・ノワールは、探偵映画の通常の流れとの共通点はなにもない…」。さらに「…これらダークな映画のためにふさわしい表示をみつけだすのは困難であることを反映している」と述べている(リー・ホースレーの本からの英訳)。 同記事は、「フィルム・ノワール」作品とは「…探偵映画ジャンルと呼ばれていたものに属しているが、犯罪映画と名づけるのが比較的よく、あるいは、もっとよいのは犯罪心理学映画であろう」と述べている。ジャン=ピエール・シャルティエのエッセイは、1945年11月から保守学習誌『ラ・ルヴュ・デュ・シネマ』に掲載された。同エッセイは『Les Américans aussi font des films noirs(アメリカ人もフィルム・ノワールをつくる)』と題され、「フィルム・ノワールの共通の糸と彼がみなしたもの、ペシミズムと人間性への嫌悪」と批評している。フランクとシャルティエの「フィルム・ノワール」という語の使用は、おそらくガリマール社の「ハードボイルド」探偵・犯罪フィクションの叢書「セリ・ノワール」にインスパイアされたものであろう。同叢書には、アメリカの小説家による作品の翻訳と、アメリカの犯罪小説のスタイルをモデルにしたフランスの小説家が著したものの両方が含まれている。 フランスの小説家コンビ「ボワロー=ナルスジャック」の書いたいくつかの小説は映画化されたが、彼らも「フィルム・ノワール」の語の発展のためになにがしかのクレジットがされる価値があるだろう。ボワロー=ナルスジャックの小説『死者の中から』は、アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』に翻案され、『悪魔のような女』はアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の『悪魔のような女』へと翻案された。 チャールズ・オブライエンの調査では、「フィルム・ノワール」の語は1938年と1939年にフランスの映画レヴューと新聞記事に使用されている。そこでは、マルセル・カルネ監督の『霧の波止場』(1937年)とジャン・ルノワール監督の『獣人』(1938年)のようなフランス映画を参照している。オブライエンは、1930年代末の記事に「フィルム・ノワールという露骨な祈りを1ダース」見つけたと述べている。『L'lntransigeant』紙では『霧の波止場』を「フィルム・ノワール」と呼び、『Action française』紙では1938年1月のフランソワ・ヴィネイユのレヴューで、『Le Puritain』(監督ジェフ・ムッソ、1937年)を「un sujet classique: le film noir, plongeant dans la débauche et le crime.(古典的な主題、つまりフィルム・ノワール、放蕩と犯罪にのめりこむこと)」と呼んでいる。
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