ワイン 種類

ワイン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 17:15 UTC 版)

種類

赤ワイン(左)、白ワイン(右)
スイートワイン[1]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 556 kJ (133 kcal)
13.4 g
0.1 g
ビタミン
ビタミンB6
(1%)
0.01 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
5 mg
カリウム
(1%)
70 mg
カルシウム
(1%)
5 mg
マグネシウム
(1%)
5 mg
リン
(1%)
7 mg
鉄分
(2%)
0.3 mg
他の成分
水分 75.2 g
アルコール 11.1 g

(100 g: 96.4 mL、100 mL: 103.7 g) アルコール: 14.5 容量 %
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

ワインは世界で最も多くの地域で飲用されているアルコール飲料の一つである。ワインは主に以下の3種類に分類される。

白ワイン
主に無色に近い色調から(時に緑色がかった)黄色みを帯びたワインを白ワインと呼ぶ。白ブドウなど主に色の薄い果皮のブドウを原料とし、発酵には果汁のみを使用する。酸味の強いものは、一般的に魚料理に合うとされる。白ワインは、料理と合わせる辛口からデザートワインにする極甘口まで甘さに幅がある。なお、フランス東部のジュラ地方にはヴァン・ジョーヌ: Vin jaune、黄ワイン)という特殊な白ワインがある[2]
赤ワイン
透き通った赤や濃い紫、あるいは赤褐色のワインを赤ワインと呼ぶ。一般に白ワインよりも渋みの成分であるタンニンを多く含み、長期保存が可能である。主として黒ブドウや赤ブドウを原料とし、果実を丸ごとアルコール発酵させる。この発酵の過程で、果皮に含まれる色素やタンニンが抽出される。マロラクティック発酵により減酸が行われることも多い。濃厚な風味のものは一般的に肉料理に合うとされる。また冷やすと香りの成分が揮発しにくくなったり苦味が増したりするため、冷やさないのが普通である。一般的に赤ワインには辛口しかなく、コクとタンニンにより、ライトボディーからフルボディーといった分類がなされる。白ワインと違い、飲む人の体質とワインの銘柄との相性により激烈な頭痛を起こすことがある。その原因はチラミンヒスタミンの多さにあるとも言われているが、ヒスタミンの含有量は、他の発酵食品と比較して多くはない[3]。また、フラボノイド類により喘息の重症化とは有意な逆の相関関係が示されている[4]
ロゼワイン
ロゼ(rosé)とはフランス語で「ピンク色」を意味し、時にピンク・ワインとも呼ばれる赤みを帯びた淡い色調のワインを指す。製法には、果皮の色の薄いブドウを赤ワインのように醸造する方法や、赤ワインと同じブドウを白ワインのように醸造する方法、赤と白の双方のブドウによる混醸、赤ワインの醸造途上で色の素である果皮を取り除く方法などがあり、味わいも様々である。中には赤ワインと白ワインを混合したものや白ワインに着色しただけの製品もある。

ほかに発泡ワインオレンジワインなどの特殊な製法のものがある。ワインの風味を構成する味覚は、白ワインでは酸味・甘味であり、赤ではそれに渋みが加わる。加えて、香りが風味の重要な要素であり、これらのバランスが取れているワインが一般的に良いものとされる。

ワインの主成分はエタノール、各種の有機酸グリセリンアミノ酸核酸、タンニン、炭酸ガスなどである。各種の有機酸の中では酒石酸リンゴ酸クエン酸乳酸酢酸コハク酸の6つがワインの風味に関して最も重要な要素と考えられている。また、貴腐ワインにはグルコン酸が多く含まれている。

魚介類との相性に関しては、従来はタンニンが関与していると信じられていたが、タンニンではなくフェノール化合物、カルボニル基を持つ物質、が関与するとの報告がある[5]。特に、鉄分の含有量は魚介類料理との相性に大きく影響を及ぼし、鉄分濃度に依存し1-オクテン-3-オン、(E,Z)-2,4-ヘプタジエナールなどの物資により生臭味が増強されてしまう[5]とされている。なお、鉄の起源は、土壌、製造工程中の鉄製品、コラージ(澱引き)に依存している。

ワインは瓶に詰められた後でも熟成が進み、風味は変化を続ける。熟成期間はボルドーワインなどの一部のワインでは50年以上もの熟成に耐えるものもあるが、多くは1年から10年ほど、長いものでも20年から30年である。安価なワインでは熟成によって品質が向上することはあまりなく、むしろ早く飲まないと劣化してしまう。長い熟成に耐えるものを長熟、逆に早く飲むものは早飲みという。作られて間もないワイン(「若いワイン」と表現する)は、ブドウの生の味が強く、渋すぎたり、酸味がきつすぎたりするということもあるが、熟成が進むと角が取れてまろやかになる。また、年数が経てば総数が減るため希少価値により価格も高くなる傾向にある。ただし、熟成したワインがどれも同じように高くなるというわけではなく、生産年、地域、作り手の知名度などにより価格は大きく異なる。

ワインが食文化に根付いているヨーロッパでは日常的に飲まれることも多いが、近年では[いつ?]日本における日本酒と同様に、1人あたりの需要量は減少傾向にある。イスラム教においては飲酒が教義により禁止されているため(「ハラール」を参照)、イスラム教発祥地である現在の中東諸国では、ワインの生産は、イスラエル世俗主義国家であるトルコ、比較的リベラルイスラム教徒キリスト教徒が住むレバノンヨルダンパレスチナエジプトなどに限られる。日本を含むアジア諸国では、1人あたりの需要量は依然として少なく、需要の伸びは著しい[注釈 1]

日本では、冷やしてストレートで飲むものと言うイメージが強いが、ヨーロッパではホットワインは冬の定番の飲み物である。ホットワインもそうだが、香料やスパイスを入れたフレーバーワイン(スパイスワイン)もなじみ深い。特に中世ヨーロッパではストレートで飲めるワインは最高級品であり、滓を取ったり、香料やスパイスを加えたりして飲みやすくするのが通常であったため、歴史は古い。


注釈

  1. ^ 中国の2010年ワイン消費量の上昇予測は非常に高い数字になっている[6]
  2. ^ ワインビネガーを作る場合は、意図的に酢酸菌によって酢酸醗酵を行わせ、ワインに含まれるエタノールを酢酸へ変えさせている。

出典

  1. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  2. ^ 佐藤正透『暮らしのフランス語単語8000』語研、2014年、18頁。 
  3. ^ 発酵食品に含まれるアミン類『東京都健康安全研究センター研究年報 2004年』(和文要旨)
  4. ^ 田中敏郎、平野亨、比嘉慎二、有光潤介、河合麻理「アレルギーとフラボノイド」『日本補完代替医療学会誌』第3巻第1号、日本補完代替医療学会、2006年、1-8頁、doi:10.1625/jcam.3.1NAID 130000079399 
  5. ^ a b 田村隆幸「ワイン中の鉄は,魚介類とワインの組み合わせにおける不快な生臭み発生の一因である」『日本醸造協会誌』Vol.105 (2010) No.3 pp.139-147, doi:10.6013/jbrewsocjapan.105.139
  6. ^ ワイン消費量の推移、主要国の現状と予測 AFP(2007年6月20日)2020年8月14日閲覧
  7. ^ 石毛直道の発酵コラム 第4回「酒」キリン食生活文化研究所
  8. ^ 橘勝士「グルジアのワインと文化」『日本醸造協会誌』Vol.95 (2000) No.9 p.651-657, doi:10.6013/jbrewsocjapan1988.95.651
  9. ^ 世界最古のワイン醸造痕跡見つかる ジョージア、8000年前」AFP(2017年11月14日)2020年8月14日閲覧
  10. ^ 'Oldest known wine-making facility' found in Armenia BBC(11 January 2011)2020年8月14日閲覧
  11. ^ “The Origins and Ancient History of Wine”
  12. ^ White wine turns up in King Tutankhamen's tomb USA TODAY
  13. ^ 日本放送協会. “イスラエル 1500年前に造られた巨大ワイナリーの遺跡発掘”. NHKニュース. 2021年10月13日閲覧。
  14. ^ a b McGovern, Patrick E. 2003. Ancient wine: the search for the origins of viniculture. Princeton University Press
  15. ^ Karam, Michael (2005) "The Wines of Lebanon" Saqi Books - reference book on Lebanese wine
  16. ^ H. Johnson Vintage: The Story of Wine pgs 18-43, 61-86 & 106 Simon and Schuster 1989 ISBN 0-671-68702-6
  17. ^ 引用:McGovern, Patrick E. 2003. op. cit., p. 202
  18. ^ a b H.Johnson Vintage: The Story of Wine pgs 18-43, 61-86 & 106 Simon and Schuster 1989 ISBN 0-671-68702-6
  19. ^ J. Robinson (ed) "The Oxford Companion to Wine" Third Edition pgs 141, 520 & 714 Oxford University Press 2006 ISBN 0-19-860990-6
  20. ^ a b c Integrated Viticulture Online Database "Mourvedre" University of California-Davis,2009年12月17日閲覧
  21. ^ ワインの歴史を教えてください。”. サントリーお客様センター. 2021年10月13日閲覧。
  22. ^ Harold McGee 香西みどり訳『マギー キッチンサイエンス』(2008年、共立出版)p.699,713
  23. ^ アーカイブされたコピー”. 2008年8月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年6月25日閲覧。
  24. ^ K. UEKI and G. OKAMOTO: A Comparative Study of Disease Tolerance of Vitis coignetiae and Several Grape Cultivars., 植木啓司、岡本五郎:ヤマブドウ樹と数品種の栽培ブドウ樹の耐病性比較 J. ASEV Jpn., 16, 3-8 (2005)
  25. ^ 中山正男「日本におけるワイン用原料ブドウ栽培」『日本醸造協会誌』Vol.88 (1993) No.9 p.654-659, doi:10.6013/jbrewsocjapan1988.88.654
  26. ^ a b 日本放送協会. “ワイン生産日本一の山梨が挑む世界市場 カギはAI活用の有機栽培技術 | NHK | WEB特集”. NHKニュース. 2022年8月23日閲覧。
  27. ^ a b c d 日本放送協会. “よし、北海道を飲もう!~ワインの神に愛される北の大地”. NHKニュース. 2021年11月28日閲覧。
  28. ^ 温暖化進むとワインの味は…? 味を予測しCOP24で試飲体験 - NHK
  29. ^ 原昌道「マロラクチック発酵について」『日本釀造協會雜誌』Vol.62 (1967) No.8 p.803-808, doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.62.803
  30. ^ 『応用微生物学 改訂版』、村尾澤夫・荒井基夫、培風館発行、1993、p113
  31. ^ ワイナリー便り-マロラクティック発酵-
  32. ^ 原昌道、水野昭博「赤ワインのマロラクチック発酵におけるL-, D-乳酸の生成」『Hakkokogaku Kaishi』59(1), 17-22, 1981-01-25, NAID 110002778756
  33. ^ ワイン醸造の基礎 第3回 −マロラクティック発酵の話 きた産業 (PDF)
  34. ^ 柳田藤寿, 篠原隆, 後藤昭二「品種別赤ワイン仕込経過中の乳酸菌の分布と分離同定」『山梨大学醗酵研究所研究報告』32巻 pp.5-13, 1997年, 山梨大学工学部附属発酵化学研究施設, NAID 110000359820
  35. ^ 「選んで作るマイワイン キッコーマン、原酒7種からブレンド」日経MJ』2018年10月19日(フード面)2018年10月27日閲覧
  36. ^ 篠原隆「ワイン発酵と微生物学研究について」『山梨大學工學部研究報告』第51巻第1号、山梨大学工学部、2002年、81-88頁、doi:10.34429/00001593NAID 40006976921 
  37. ^ 酒精強化ワインってどんなお酒?”. ENOTECA. 2021年1月13日閲覧。
  38. ^ 【ご当地Price】ドイツ「アイスワイン」4100円 温暖化で不作、希少価値さらに『日経MJ』2020年4月6日(アジア・グローバル面)
  39. ^ レーズンでワイン?アンズの香り漂う「麦わらワイン」週刊朝日』2015年10月23日号(2018年10月27日閲覧)。
  40. ^ a b “Ein Wein, der nicht sein darf” (ドイツ語). Kölner Stadt-Anzeiger. (2005年2月28日). https://www.ksta.de/redaktion/ein-wein-der-nicht-sein-darf-259083 2023年6月13日閲覧。 
  41. ^ a b Strohwein returns to Mosel” (英語). Harpers Wine & Spirit (2008年7月23日). 2023年6月13日閲覧。
  42. ^ http://www.winery.or.jp/ass/kizyun.pdf ワイン表示問題検討協議会『国産果実酒の表示に関する基準』日本ワイナリー協会
  43. ^ 生産統計(2005年) 国際連合食糧農業機関 (FAO) 同年の世界総生産量は291万6000トンであった。
  44. ^ NHKクローズアップ現代第2483回「フランス ワイン危機」[リンク切れ]NHK
  45. ^ ロブションも認めた 世界水準の中国ワイン”. 日本経済新聞 (2021年10月31日). 2021年11月1日閲覧。
  46. ^ 「新緯度帯」ワインに注目『読売新聞』2012年9月25日朝刊11面・高橋直彦記者
  47. ^ ジャンシス・ロビンソン【ワインリポート】温暖化が生む「泡なしシャンパン」『日本経済新聞』朝刊2021年7月11日19面
  48. ^ 日本産ワインは400年前に作られていたことが明らかに”. 熊本大学. 2017年4月13日閲覧。
  49. ^ 日本ワイン表示厳格化「王国」山梨、思い交錯『日本経済新聞』電子版(2018年10月19日)2018年10月27日閲覧
  50. ^ 教派いろいろ対照表 Archived 2010年8月19日, at the Wayback Machine.
  51. ^ 『ワインの文化史』p.44
  52. ^ ワインツーリズムとは??富士の国やまなし観光ネット(2018年10月27日閲覧)






ワインと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ワイン」の関連用語

ワインのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ワインのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのワイン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS