ブドウ ブドウの概要

ブドウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/18 06:11 UTC 版)

ブドウ属
種なしのオータムロイヤル種 (Autumn Royal)
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
: ブドウ目 Vitales
: ブドウ科 Vitaceae
: ブドウ属 Vitis
  • 本文を参照

紀元前2世紀ごろの中央アジア・フェルガナでの呼称 budaw(ブーダウ)に対する中国語の音写「蒲陶」が変じて「葡萄」となった[2][3]

特徴

ブドウ
100 gあたりの栄養価
エネルギー 288 kJ (69 kcal)
18.1 g
糖類 15.48 g
食物繊維 0.9 g
0.16 g
0.72 g
ビタミン
チアミン (B1)
(6%)
0.069 mg
リボフラビン (B2)
(6%)
0.07 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.188 mg
パントテン酸 (B5)
(1%)
0.05 mg
ビタミンB6
(7%)
0.086 mg
葉酸 (B9)
(1%)
2 µg
ビタミンC
(13%)
10.8 mg
ミネラル
カリウム
(4%)
191 mg
カルシウム
(1%)
10 mg
マグネシウム
(2%)
7 mg
リン
(3%)
20 mg
鉄分
(3%)
0.36 mg
亜鉛
(1%)
0.07 mg
マンガン
(3%)
0.071 mg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
ブドウ果実の断面図

は両側に切れ込みのある15 - 20センチメートルほどの大きさで、穂状のをつける。野生種は雌雄異株であるが、栽培ブドウは1つの花におしべめしべがあり、自家受粉する自家結実性であるため、他の木がなくとも1本で実をつける。果実は果柄(かへい)を通じて房状になり[4]果皮は緑色または濃紫色で、内部(果肉)は淡緑色である。果皮についている白い粉状のものはブルームとよばれる蝋物質で、水分の蒸発を防ぐために実から自然に出てくる[1]

主に熟した果実を食用とするが、果実は子房が肥大化した、いわゆる真果である。外果皮が果皮となり、中果皮と内果皮は果肉となる。果実のタイプとしては漿果に属する。大きさは2 - 8センチメートル程度の物が一般的である。ブドウの果実は枝に近い部分から熟していくため、房の上の部分ほど甘みが強くなり、房の下に行くに従い甘味も弱くなる。皮の紫色は主にポリフェノールの1種であるアントシアニンによるものである[1]。甘味成分としてはブドウ糖果糖がほぼ等量含まれている[1]。また、酸味成分として酒石酸リンゴ酸が、これもほぼ等量含まれる。

ブドウ属の植物は数十種あり、北アメリカ東アジアに多く、インド中東南アフリカにも自生種がある。日本の山野に分布する、ヤマブドウエビヅルサンカクヅル英語版(ギョウジャノミズ)もブドウ属の植物である。

現在、ワイン用、干しぶどう用または生食用に栽培されているブドウは、ペルシアカフカスが原産のヴィニフェラ種 (V. vinifera) と、北アメリカ原産のラブルスカ種 (V. labrusca)である。

栽培されるブドウには生食用ブドウと加工用ブドウがあり、加工用品種は醸造・干しブドウ・ジュースなどに利用される。生食用はテーブルグレープ英語版、酒造用はワイングレープ(wine grapes)と呼ばれている。

栽培法

ブルゴーニュ地域圏、クロ・ド・ヴジョーの葡萄園。垣根作りの農園である

ブドウは温帯の農作物で、平均気温が10度から20度程度の地域が栽培適地である。北半球では北緯30度から50度、南半球では南緯20度から40度の間に主要産地が存在する。最適の降水量は品種によって差があり、ヨーロッパブドウは一般に乾燥を好み、アメリカブドウは湿潤にも強いが、種全体としてみれば年間降水量が500 mmから1,600 mmあたりまでに主要産地が存在する。

ブドウは水はけがよく日当たりが良い土地を好む。他の果樹と同様、ブドウも種子から育てると質の良い果実ができにくく、またを土に挿すと容易にを生やすため、古来から挿し木によって増やされてきた。しかし、19世紀後半に根に寄生するブドウネアブラムシ(フィロキセラ)によって大打撃を受けたため、以後は病害虫予防のために台木を使用することが一般的となった。

収穫期は品種によって差があるが、日本においては最も早いデラウェアが7月下旬から収穫が始められ、最も遅い品種は11月上旬まで収穫される。また、ハウス栽培の場合はこれよりも早くなる。

世界で木の仕立て方は、4種類ある[5]。括弧()内は地域。

  1. 垣根仕立て。(全世界)
  2. 株仕立て。(フランス、スペイン)
  3. 棒仕立て。(ドイツ〔モーゼル〕)
  4. 棚仕立て。(日本、イタリア及び南米の一部)

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 206.
  2. ^ a b 日本ワイン検定事務局『日本ワインの教科書』柴田書店(2021年)p.37
  3. ^ a b 飯間浩明 「ブドウ」分け入っても分け入っても日本語(2020年)
  4. ^ a b ブドウの枝にがん抑制作用日経産業新聞』2019年9月17日(医療・ヘルスケア面)2019年10月5日閲覧
  5. ^ 中山正男、「日本におけるワイン用原料ブドウ栽培」 『日本醸造協会誌』 1993年 88巻 9号 p.654-659,doi:10.6013/jbrewsocjapan1988.88.654,
  6. ^ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典3 飲料・栄養素』小林彰夫監訳 朝倉書店 2005年9月10日 初版第1刷 p.107
  7. ^ 瀧井康勝『366日誕生花の本』日本ヴォーグ社、1990年11月30日、294頁。 
  8. ^ 中世ヨーロッパ 食の生活史』p.44 ブリュノ・ロリウー著 吉田春美訳 原書房 2003年10月4日第1刷
  9. ^ 中川 (2002)、pp.179-180.
  10. ^ 中川 (2002)、p.183
  11. ^ 中川 (2002)、p.131
  12. ^ 『飲食事典』本山荻舟 平凡社 p536 昭和33年12月25日発行
  13. ^ 『果物・野菜散歩』pp. 28 - 29 金沢大学大学教育開放センター 平成9年8月1日
  14. ^ 『播州葡萄園120年』稲美町教育委員会 2000年
  15. ^ a b c d 竹下大学 2022, p. 165.
  16. ^ 『ワインの科学』p.70 清水健一 講談社ブルーバックス 1999年1月20日第1刷
  17. ^ “Dietary table grape protects against ultraviolet photodamage in humans: 2. molecular biomarker studies” (英語). Journal of the American Academy of Dermatology. (2021-01-20). doi:10.1016/j.jaad.2021.01.036. ISSN 0190-9622. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0190962221001845. 
  18. ^ FAOSTAT”. www.fao.org. 国際連合食糧農業機関. 2023年10月5日閲覧。
  19. ^ a b 特産果樹生産動態等調査 / 確報 令和2年産特産果樹生産動態等調査”. 農林水産省 (2023年3月31日). 2023年11月18日閲覧。
  20. ^ a b c 作物統計調査 / 作況調査(果樹) 確報 令和3年産果樹生産出荷統計” (PDF). 農林水産省大臣官房統計部 (2023年5月31日). 2023年11月18日閲覧。
  21. ^ 『果実の事典』p.433 杉浦明、宇都宮直樹、片岡郁雄、久保田尚浩、米森敬三編 朝倉書店 2008年11月25日初版第1刷
  22. ^ 『果物・野菜散歩』pp.31-32 金沢大学大学教育開放センター 平成9年8月1日
  23. ^ 農文協 編『ブドウ大事典』農山漁村文化協会、2017年、167頁。ISBN 978-4-540-17181-9 
  24. ^ 『地域食材大百科第3巻 果実・木の実、ハーブ』p.290 農文協 2010年8月25日第1刷
  25. ^ 『改訂版原色牧野植物大図鑑 REVISED MAKINO'S ILLUSTRATED FLORA IN COLOUR』(ISBN 4-8326-0400-7-C0645)
  26. ^ 『ヤマブドウ 安定栽培の新技術と加工・売り方ぁ』(P.42-58)農文協 ISBN 4-540-02124-9
  27. ^ 山ぶどうのホームページ【岩手県 久慈地方】”. 2013年1月14日閲覧。
  28. ^ 月山ワイン山ぶどう研究所”. 2013年1月14日閲覧。
  29. ^ 本坊酒造株式会社”. 2013年1月14日閲覧。
  30. ^ ひるぜんワインへようこそ”. 2013年1月14日閲覧。
  31. ^ a b c d e f g h i 竹下大学 2022, p. 162.
  32. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 207.
  33. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 159.
  34. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 158.
  35. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 161.
  36. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 163.
  37. ^ a b c 竹下大学 2022, p. 160.
  38. ^ a b c d e 竹下大学 2022, p. 164.
  39. ^ 「シャインマスカット」の無核化にはストレプトマイシン処理が有効 茨城県農業総合センター園芸研究所 (PDF)
  40. ^ かほく市公式 かほく市の特産 ぶどう
  41. ^ 近畿農政局 ぶどう(大阪南河内地域)
  42. ^ マイ大阪ガス 関西のギモン、調べます!炎の探偵社 -100年前、大阪は日本屈指のブドウ王国だった!?
  43. ^ 中央果実基金ニュースレター 沼隈町果樹園芸組合のぶどう生産・販売の取組紹介
  44. ^ たのしく生まるる田主丸町 産業の歴史 - 「巨峰開植の地」田主丸
  45. ^ 宇佐市 - 観光文化情報 - 食・お土産・特産品 西日本有数の生産量を誇る ~安心院ぶどう~
  46. ^ 飼い主のためのペットフード・ガイドライン 環境省、2020年4月29日閲覧。






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