産業カウンセラー 現状と注意点

産業カウンセラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/19 01:05 UTC 版)

現状と注意点

資格活用度の現状

上述の様に、心理学関連資格の中でも知名度の高いものの一つであることから取得を考える者は多いが、心理カウンセラーなどの心理職や隣接職種を含めた雇用求人において、「産業カウンセラー資格」を他の資格よりも優先的に資格要件として掲げて募集している機関はほとんど無く、求人数は非常に限られる。

2009年日本産業カウンセラー協会が実施した「産業カウンセラー等の実態調査[14][15]」によると、産業カウンセラー有資格者のうち、勤務先で実際に「カウンセラー」としての職種に就いていると回答した者は全体の15.6%のみで、最多となった回答は「一般事務職(16.9%)」であり、産業カウンセラー資格の取得がカウンセラー職としての就職に有利になっているという内容の報告ではなかった[14][15]「産業カウンセラー資格取得により培ったスキルを活かした全ての活動で得る報酬額」を問う設問で最も多かった回答は「(年収)50万円未満(17.7%)」という現状で[14][15]、産業カウンセラー資格の収入面での活用度は、そもそも養成講座を受講した場合約210,000円[7]を費やす必要があることと照らし合わせると、非常に厳しい現実が浮き彫りとなった[14][15]。しかし、在職者がキャリアアップなどのため、あるいは日常生活におけるスキルアップのために取得を目指す資格としては、その勉強期間の短さや合格率の高さなどから比較的取り組みやすいとされており、[1][7]、「産業カウンセラー資格取得後の状況や気持ちの変化」についての回答で最多となったのは「日常の人付き合いで自分や他者の言動に注意するようになった(48.3%)」である[14][15]

在職者が資格を取得する際の注意点

産業カウンセラー試験の受験者には、管理職人事労務担当者などが多く、人に関わるそれらの立場の在職者にとって、資格取得に当たって得る基礎的な知識は有益であると言われている[7]。しかしながら、在職受講者と他の労働者との関係においては、専門家相談機関で精神科医などの医師臨床心理士が行っているような心理療法心理カウンセリングは、本来成立しない[16][17]。それは、在職受験者と他の労働者との間には、同じ企業・事業所内において既に何らかの人間関係利害関係が構築されているためであり、万が一にもその状況下でカウンセリングを行った場合には、既存の関係性がカウンセリング行為に深く影響を及ぼす「二重関係」「多重関係」に陥ってしまい、カウンセリングが機能しないばかりか、逆に当該労働者の心身の健康を悪化させる恐れがあると指摘されており、禁じられている[16][17][18]。これは、他分野の心理カウンセラーにおいても「二重関係(多重関係)の回避[16][17]」と呼ばれる倫理上の義務として同様に大前提とされており[16][17]、例えば教育分野のスクールカウンセラーにおいては、在職の教職員や退職した教職員OBの登用などは行わず、校外・学外から心理職専門家を別途招くことで、「第三者性」「外部性」を確保するための業務上の配慮を行っている[19][20]

在職受験者は、カウンセラーなどの立場を担うことはできなくとも、

  • 他の労働者の心の不調に早い段階で気づける、専門的なメンタルヘルスケアを精神科医や臨床心理士に託す際に何らかの対外窓口となる等、企業・事業場においてのメンタルヘルス対策への援助[要出典]
  • 個人の働き方・生き方や仕事を選択する際のキャリアカウンセリング等を通じたキャリア開発への援助[要出典]
  • 働きがいのある職場を作るために、人間及び組織の質を高め成長を促進する職場における人間関係開発への援助[要出典]

が期待されている[要出典]


  1. ^ a b c d 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “産業カウンセラー試験”. 2010年2月21日閲覧。
  2. ^ a b 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “日本産業カウンセラー協会とは”. 2010年2月23日閲覧。
  3. ^ a b 厚生労働省 (2009年). “職業能力評価推進給付金で厚生労働大臣が定める職業能力評価”. 2010年2月24日閲覧。
  4. ^ a b 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “産業カウンセラーの3つの活動領域”. 2010年2月28日閲覧。
  5. ^ Yahoo!学習 (2010年). “資格情報、解答速報 - 産業カウンセラー”. 2010年3月3日閲覧。
  6. ^ Yahoo!学習 (2010年). “医療・福祉・心理からさがす - 資格情報、解答速報”. 2010年7月14日閲覧。
  7. ^ a b c d e 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “産業カウンセラー養成講座”. 2010年2月28日閲覧。
  8. ^ a b 日本産業カウンセラー協会 (2011年). “産業カウンセラー試験合否結果について”. 2012年2月1日閲覧。
  9. ^ asahi.com (2010年). “キャリアアップを目指す「社会人のための大学院・専門職大学院」特集”. 2010年7月3日閲覧。
  10. ^ a b c 日本産業カウンセラー協会 (2010年). “2010(平成22)年度産業カウンセラー養成通信講座のご案内 (PDF)”. 2010年7月14日閲覧。
  11. ^ 東京都医師会 (2004年). “産業医とは”. 2010年2月1日閲覧。
  12. ^ 日本臨床心理士資格認定協会 (2009年). “臨床心理士の職域”. 2010年1月30日閲覧。
  13. ^ 日本産業保健師会 (2009年). “日本産業保健師会とは”. 2010年2月13日閲覧。
  14. ^ a b c d e f 日本産業カウンセラー協会 (2009年). “産業カウンセラー等の実態調査 (PDF)”. 2010年12月1日閲覧。
  15. ^ a b c d e f 日本産業カウンセラー協会 神奈川支部 (2009年). “養成講座を修了された皆様へ -養成講座で学んだことをどう活かすか-”. ウェブ魚拓. 2010年4月22日閲覧。
  16. ^ a b c d American Psychological Association (2010年). “Ethical Principles of Psychologists and Code of Conduct”. 2010年12月1日閲覧。
  17. ^ a b c d 東京学芸大学 (2005年). “カウンセラーの職業倫理について”. 2010年12月2日閲覧。
  18. ^ 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “産業カウンセラー倫理綱領 (PDF)”. 2010年2月1日閲覧。
  19. ^ 文部科学省 (2004年). “拡充事業 - 事業名:スクールカウンセラー活用事業補助 (PDF)”. 2010年12月1日閲覧。
  20. ^ 文部科学省 (2007年). “児童生徒の教育相談の充実について -生き生きとした子どもを育てる相談体制づくり-(報告)”. 2010年1月31日閲覧。






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