無停電電源装置 無停電電源装置の概要

無停電電源装置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/22 05:18 UTC 版)

パソコン用無停電電源装置 Scott Power Corporation Desklite

日本では一般に、商用交流電源に接続して使用する、交流入力・交流出力のものをUPS: Uninterruptible Power Supply)と呼ぶことが多いが、本来は入出力の種類に関係なく、入力断に対して出力が断(off)にならない電源装置の全てを示す。このため日本では、交流出力の無停電電源装置と直流出力の無停電電源装置を区別するため、交流出力のものをCVCF: Constant Voltage Constant Frequency、定電圧定周波数)電源と呼ぶこともある。以下、交流入出力のものを中心として述べる。

概要

データセンター用大型UPS設備
東芝 TOSNIC

無停電電源装置は、主に、商用電源から電力を受ける装置、電力を蓄積する装置と、前2者のいずれかから一定規格の電力(一般的には、商用電源と同様のもの)を供給する装置で構成される。接続している商用電源が断になったときは、機器に蓄積していた電力を供給し、瞬時電圧低下停電が機器に対して起こらないようにしている。なお現在では、瞬時電圧低下は特にによるものが多く、雷サージ対策として用いられることが多いが、無停電電源装置自身は概ねサージ防護機器ではなく、雷サージを受けると故障するので、別途、サージ防護機器と併せて使用する必要がある。

対応できる停電時間は、数分 - 30分程度のものが多い。無停電電源装置の能力を超える長時間の停電に対しては、別途、発電機などと組み合わせるか、停電後、無停電電源装置から電力の供給が続いている間に、コンピュータなどの需要機器の使用を終了させるといった措置が必要である。

停電時の補助電源として二次電池電気二重層キャパシタなど(以下、単に「二次電池」と表す。)電池を使用するものを静止型無停電電源装置といい、フライホイールを用いたものは回転型無停電電源装置という[1]。小規模電源用には古くから真空管を用いた静止型無停電電源装置が実用に供されていたが、真空管では大電流を得ることが困難であるため、大規模電源用には過去、回転型無停電電源装置が実用に供されていた。その後、半導体デバイスの進歩に伴って静止型無停電電源装置でも大電流を得ることが可能になり、今日では大規模電源用にも静止型無停電電源装置が一般的となっている。

今日の無停電電源装置には、データセンターなどで使用される大型・集中型[2]のものと、パーソナルコンピュータなどの個人用機器などを含め、小規模なサーバー用や医療用モニタなどに用いられる小型・分散型[3]のものがある。いずれにしても無停電電源装置には高い信頼性が要求されることから、概ね、専門家による定期予防保守により長期継続使用をするものと、規定期間の使用、いわゆる「使い切り」にしたものの二つに分かれる。無停電電源装置の価格は、規模・保守性などの要素によって決まるが、一般に大型・集中型になるほど高価になる傾向がある。

信頼性確保の手段には、故障や保守点検時も正常に給電するためのインバータや二次電池の冗長設置、インバータの機能が完全に失われたときに、商用電源に無瞬断で切り替えることが可能なバイパス機能などがある。しかし使用部品数の増加は故障率を上げる原因となるため、できるだけ少ない部品数で必要な信頼性を確保する配慮がなされる。

用途

無停電電源装置の出力コンセントの例

無停電電源装置は、高い供給信頼性が必要で一瞬たりとも電圧低下・停電が許されない、病院内の人工呼吸器などを始めとした、生命維持装置やコンピュータ・通信防災・制御機器、および放送機器(演奏所送信所・大規模中継局)などで使用されている。そのほか、クリーンルーム溶鉱炉の制御装置・発電所・航空管制塔など、無停電電源装置の用途は多岐にわたる。

一方、最近では、コンピュータの停電防止などを目的に、家庭用の無停電電源装置も製造・発売されている。また、光回線終端装置に電源を要する「ひかり電話」(FTTH) においても、停電時の通話不能を回避する手段として有効である[4]

その他、無停電電源装置は電力のピークカット(ピークシフト)にも応用可能である[5]。普通、短時間のピークカットを目的としたものになるが、蓄電力を大きくすれば長時間のピークシフトにも適用可能なものとなる[6]

バッテリー自体の値下がりにより、防災の観点から一般家庭や小規模な事務所でも万一に備えて設置される場合が増えている。詳しくはポータブル電源を参照。


注釈

  1. ^ 特に二次電池の劣化については致命的な欠点の一つとなり、経年によって非常に大きな劣化が発生する。製品にもよるが出荷時のバッテリー容量の20%から50%を下回った段階でいわゆる"寿命"が訪れ、内蔵バッテリーの交換もしくは製品の入れ替えを行う必要がある。

出典



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