対日有害活動
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警察白書における報告内容
北朝鮮による工作
国交がないため、外交官としてスパイを送り込めない北朝鮮は、工作船を使ってイリーガルスパイ(民間人に偽装したスパイ)を送り込んだり、国内にいる在日韓国・朝鮮人を脅して協力(土台人)させたりといった活動を繰り広げてきた。西新井事件等の北朝鮮による拉致事件が行われたのもこの時期である。朝鮮人民軍偵察総局(朝鮮労働党対外情報調査部の後継組織)をはじめとする情報機関が他人の身分を乗っ取り、諜報活動に使うために行った(背乗り)とみられている。
不審船などによって日本人拉致、工作員の輸送、土台人の獲得工作、麻薬・覚醒剤の密輸等、現在の日本に悪影響を与えるような工作活動を指す場合が多い。不審船に関しては、1957年から2002年まで確認されているだけでも20件あまり確認されている。 北朝鮮による日本に対する非難声明や、朝鮮総連の活動についても対日工作とみなしている。
中国による工作
国家安全部、中国人民解放軍総参謀部第二部などの中国の情報機関の活動はしばしば真空掃除機に例えられる。中国機関は日本では非合法な工作活動を重視せず、政界・財界・言論界などの幅広い有力者と公式に接触して一つ一つは機密性の高くない情報を大量に収集し、分析する事でインテリジェンスを得ているとされる(OSINT)。政治工作においても非合法な手法は取らず、政財界だけでなく文化人、宗教家などに対して息の長いロビイングを行うことで長い時間をかけて親中化させる手法をとっているとされ、外交部の外交官の活動と一見見分けのつきにくい活動を行っている。
こうした手法のためか中国によるスパイ事件は北朝鮮やソ連に比べて摘発された事例は少ないが、非合法な工作活動も行われることがあり、摘発された事件には1976年に摘発された汪養然事件、1978年に摘発された研究文献等中国流出事件、2003年に摘発された国防協会事件などがある。また、2012年には中国人民解放軍総参謀部第二部機関員とみられる在日大使館一等書記官の工作(李春光事件)が摘発された。中国大使館に所属する「オフィシャル・カバー」の機関員が摘発されたのは初のことである。
また、人材交流が高まるにつれ民間企業の持つ軍事的に利用可能な技術や安全保障に関わる機密事項の不正流出、公務員と中国人との異性関係(ハニートラップ)を元にした情報漏えい事件(上海総領事館員自殺事件)などが発生している。
1978年に締結された日中平和友好条約によって中国からは大量の留学生が来日するようになり、また日本からの訪中者も増加しているため、こうした中で中国が活発に日本の軍事・経済情報の収集活動を行っている可能性があるとして、外事警察では注視している。
ロシアによる工作
ソ連時代、東京のソ連大使館・通商代表部・アエロフロート航空支店・タス通信、ノーボスチの支局には、KGBあるいはGRUの工作官が多数駐在していた。また、日本人の身分を乗っ取り本人に成りすまして国内で活動する背乗りも黒羽・ウドヴィン事件であきらかとなった[1]。ソ連による浸透工作(人民戦線戦術も参照)や世論誘導など[2][3][4]の間接侵略(シャープパワーも参照)が暴露された「レフチェンコ事件」や、それを裏付ける「ミトロヒン文書」などの情報によると、彼らはジャーナリスト・国会議員・自衛隊幹部・シベリア抑留者などを協力者として諜報活動を行っていた[5][6][7][8][9]。表面化した諜報事件には防衛秘密の漏洩事件であるコノノフ事件、宮永スパイ事件、マチェーヒン事件などがある。
またKGB所属の国境警備隊は、漁船を買収した「レポ船」を使って北海道にイリーガル(民間人スパイ)を送り込んだ事が判明している。日本への領海侵犯事件では、ラズエズノイ号事件などの例がある。
ソ連が崩壊し、ロシア連邦となって以降も、SVR(KGBの後継組織)とGRUは諜報活動を続けている。とくに2000年にプーチンが大統領に就任して以降、諜報活動が活発化していることから、外事警察は、軍需産業に転用(デュアルユース)可能な科学技術や、「二島返還論」による温度差(分断工作)のため返還運動の分裂や退潮の可能性を孕む「北方領土問題」に対するロシアの外交官・情報機関員の活動を警戒している[10][11][12][13]。また、ハイブリッド戦争やサイバー戦とみられるネット上での情報操作も活発化している[14][15][16]ことから、インターネット・リサーチ・エージェンシーなどの動向にも注意が必要である。
近年の諜報事件としては2000年に摘発されたボガチョンコフ事件、2005年に摘発されたサベリエフ事件、2006年に摘発されたペツケビッチ事件などがある。
不正輸出・産業スパイ
核兵器などの大量破壊兵器に関わる物資が輸出され、製造を企む国や勢力に渡った場合、重大な事態を引き起こす可能性があるため、精密誘導兵器や核関連の製造に関わる各種機器は事前に許可が必要(輸出貿易管理令)[17]なものがあり、また外国企業等への技術・情報提供に対して事前に許可が必要(外為法外国為替令)[17]な場合があり、これら軍事転用の見地から不正と見なされる輸出や技術移転を取り締まる活動を行っている。不正輸出には日本の会社が外国に輸出する場合と、外国がダミー会社を作って行う場合がある。
不正輸出の事例にはミツトヨの不正輸出事件が挙げられる。同社は三次元測定機(核開発に転用可能)数台を現地法人や子会社を通じマレーシア、シンガポール、イラン、リビアに不正に輸出し、当時の社長らが外国為替及び外国貿易法違反の罪で警視庁公安部によって逮捕されている。このほか東芝機械ココム違反事件や北朝鮮への不正輸出事件も参照。
また、各国の情報機関による日本企業の最新技術を狙った産業スパイ活動も活発化しており、現在でも政府機関、大学、企業等から多くの技術や情報が流出しているとみられている。
- ^ ロシアの背乗りスパイ | 文藝春秋 電子版
- ^ 偽情報で世界を攪乱 ロシアの「積極工作」INTELLIGENCE MIND Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) 小谷賢(日本大学危機管理学部教授) 2022/01/08 06:00:00
- ^ 「ロシアの工作」ウクライナ侵攻と共に増す情報戦 数々の権謀術数にソ連時代からの影が付きまとう ウクライナ侵攻、危機の本質 | 東洋経済オンライン 2022/03/04 7:00
- ^ ロシアの偽情報工作の歴史は? - 日本経済新聞 2022年4月8日
- ^ 日本においてロシア諜報機関に協力した情報提供者の類型化 - J-Stage 犯罪心理学研究 2017 年 55 巻 1 号 p. 29-45
- ^ 「国外退去となった8人のほとんどはSVRとGRUに所属するスパイです」~総理官邸に迫るロシアスパイ、だまされた内調職員が手口を暴露【第1回】 | TBS NEWS DIG 2022年5月5日(木) 08:00
- ^ 会食の度に受け取る“手土産”はいつしか10万円に…「もういいです、やめますって言えば良かった」~総理官邸に迫るロシアスパイ、だまされた内調職員が手口を暴露【第2回】 | TBS NEWS DIG 2022年5月6日(金) 08:00
- ^ 「先日は仕事が忙しくて行けませんでした」約束をすっぽかしたロシア人の男…これが危機の兆候だった~総理官邸に迫るロシアスパイ、だまされた内調職員が手口を暴露【第3回】 | TBS NEWS DIG 2022年5月7日(土) 08:00
- ^ 「外事一課を舐めるな!」目の前に現れた3冊の警察手帳…「何も知らずに脳天気だったのは私だけでした」~総理官邸に迫るロシアスパイ、だまされた内調職員が手口を暴露【第4回】 | TBS NEWS DIG 2022年5月8日(日) 08:00
- ^ ロシアの「次の」情報工作にどう対応する 日本の「防諜」態勢に問題 春名幹男 インテリジェンス・ナウ 2022年7月7日 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
- ^ ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...FSB内通者のメールを本誌が入手 2022年11月25日(金)17時40分ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
- ^ 「北海道は日本の領土でない」ロシア国営メディアが喧伝 プロパガンダの一環か 9/12(火) 18:55配信 J-CASTニュース
- ^ 「北海道に全ての権利有する」と脅しをかけるロシア、実際に占領は可能なのか 2022.5.17(火) JBpress
- ^ ロシア、他国干渉のためひそかに3億ドル支出=米当局 14 Sept 2022 BBCニュース
- ^ ロシアの「影響工作」費用、2014年以降に3億ドル超か 19 Sept 2022 ForbesJapan
- ^ ロシア「裏工作力」侮れず 敵対国の中枢機能に「毒」 - 日本経済新聞 16 Sept 2022
- ^ a b 安全保障貿易管理 経済産業省
- 1 対日有害活動とは
- 2 対日有害活動の概要
- 3 警察白書における報告内容
- 4 外部リンク
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