久保帯人
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/18 05:07 UTC 版)
作風
久保の作風は「スタイリッシュ」という言葉でしばしば形容される[2][71]。アニメ版『BURN THE WITCH』の監督を務めた川野達朗や漫画家の芥見下々も、久保の作品には「スタイリッシュな印象」を受けていたと語っている[71][72]。
ライターのSYOは久保作品の魅力として、「デザイン性あふれる世界観や画面構成、卓越した画力によるアクションの見せ方」を挙げている[73]。また、SYOは『BURN THE WITCH』のSeason1を評し、「クリフハンガー的な“引き”の上手さも、百戦錬磨の久保帯人らしさを感じさせる」と表現している[73]。
コミックスの本扉には「キャラクターのイメージ」や「そのキャラクターが思っていることを遠回しに書い」た詩が収録されている[74][75]。芥見は久保との対談においてこの詩のことを「巻頭歌」と呼称した[76]。シンガーソングライターのキタニタツヤはこの詩について、「巻頭歌には、どこまでも考察できる奥深さがあります」と述べている[77]。
久保は漫画を描く際に心がけていることとして、「多様性とバランス」を挙げている[23]。『BLEACH』の象徴的な要素である和のテイストと刀についても、そこまでこだわりがあるわけではなく「描いていくうえで面白かったから取り入れているだけ」であるとし、「『BLEACH』の個性は、和の中に洋風のイメージが適度に混じっていることだと思っています」と述べている[42]。
影響
車田正美の『聖闘士星矢』と水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』は、久保に大きな影響を与えた[78]。久保は自身の絵について、「両方が混ざって、『BLEACH』になっているんじゃないかなと自分は思っています[78]」「絵で影響を受けたのは間違いなく『聖闘士星矢』だと思います[79]」と語っている。また、漫画家の松井優征との対談では、『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する妖怪の「見えないんだけどいるかもしれない」という概念に惹かれたことを語り、松井はこのような概念が久保の作品にも反映されていると指摘している[10]。
作品に音楽からのインスピレーションを取り入れており、キャラクターごとにテーマミュージックを設定している[80][81]。また、絵を描く際は「必ず(中略)音楽を聴いて」おり、「描くシーンに合わせて音楽を選んでい」ると説明している[82]。『BLEACH』における台詞については、バッド・レリジョンの歌詞の内容から影響を受けたとしている[78]。音楽雑誌『rockin'on』の編集者として久保を取材した小川は、同作の「登場人物がやけに孤独なバックグラウンドを持っているところ」や「それを勢いと情熱でぶったぎっていくところ」を例に挙げ、「『BLEACH』という作品そのものもロックっぽい」と形容している[83]。
構図やカメラワークで影響を受けた映画として、『300〈スリーハンドレッド〉』と『スナッチ』を挙げているが、「でもそれは全部(『BLEACH』の)連載が始まってからなんで、初期から影響を受けてるかって言われると、ちょっとわからないですね」とも語っている[84]。また、MTVなどケーブルテレビのミュージックチャンネルをつけっぱなしにしていることが多く、中でも映像作家のクリス・カニンガムによるミュージック・ビデオに刺激を受け、創作意欲をかきたてられたという[82]。
また、学生時代に5年ほど空手をやっていた経験があり、「それが連載を続ける上での基礎体力にもなっています」と述べている[11]。
漫画制作
ネーム
門倉 (2010)によると、久保の作業プロセスでは、まず「原稿用紙サイズの紙に(中略)コマ割り、構図、キャラの表情までがしっかりと入った『ほぼ下描き』状態の」ネームが作成される[85]。このネームは「いつもほぼ一発で仕上げ」られ、「前段階のラフもなければ、消しゴムで消して直すようなこともほとんどない」という[85]。久保は「1話分、最初から最後まで頭の中で映像を作ってから描くんです。(中略)断片的に浮かんでいたイメージをまとめて、映像にしていく感じですかね。」と説明しており[86]、「映像作品の監督」との類似性を自ら言及している[87]。松井は『BLEACH』の構図やカメラワークについて、「本当に唯一無二」「どこを探しても僕は似た漫画を読んだことがない」と評している[84]。
台詞
作品には「話を楽しめる最低限の説明だけをして、後は想像で楽しんでもらえれば」という思いが反映されており、「説明は最小限」にとどめられている[52]。台詞も削ることを重視し、「ニュアンスを正確に伝えようと思ったら、言うべきことよりも、言わない方がいいことを見つけなくちゃいけない」と述べている[6]。また、台詞について、「声に出した時にきれいな響きの音になるよう意識しています。響きのきれいなセリフは、歌詞と同じようにより深く印象に残るものになると思います」と述べている[88]。学生時代に愛読していた辞書が「言葉の組み立てやつなぎ方を知るのに役立った」のだという[14]。
漫画家・堀越耕平との対談では、「台詞を書きたくてシーンを描いていて、シーンを描きたいから漫画を描いている」と語っており、「台詞とキャラクターが同時にできる場合と、名前から思いつく場合があります」とキャラクターの作り方についても説明している[89]。
作画
速筆であり[1]、『BLEACH』の連載では1話分の人物のペン入れをほぼ1日というペースで完成させていた[26]。久保は半年あまりで終了した『ZOMBIEPOWDER.』の連載を振り返り、「この試行錯誤の経験があったから、絵を描くのが速くなったのかもしれません」と語っている[20]。
『BLEACH』において、主人公の「イメージカラーを“黒”に設定し、より画面上で映えさせるために“白”を効果的に使うように工夫をしはじめて以降、コントラストを特に意識するようになった」という[90]。また、回を重ねるごとに「何を描くべきか、より何を描かないかが重要」だと思うようになったと述べている[91]。
たとえば背景だったら、あえて描かずに白く見せることが大事だったりする。コマの中にキャラクターを描くことはもちろん大事なんだけど、じつは何も描かれていない、余白の部分こそが大事なんじゃないか、と最近思うようになってきた(中略)何もないことが“溜め”になって次のコマに生きたりするんです — 久保帯人[91]
漫画を描く道具については、「無くなったらテキトーなとこ行ってテキトーに買う[3]」、「どこのメーカー、とかそういうことにこだわりは全然ない。基本的に、使うものは、きれいかどうかで選んでいる[92]」と説明している。
2019年後半、新型コロナウイルス感染症の影響によって仕事場にアシスタントを呼ぶことが困難な状況となり、アナログからデジタルの作画へ段階的に移行した[93]。
注釈
- ^ 1996年当時には、好きな漫画家として高河ゆんの名前を挙げていた[3][5]。
- ^ 久保は同作の制作背景について、以下のように回想している。「最初に描いたときは31ページだったんですが、浅田さんから“ページを増やせるよ”と言われたんで追加のアイデアを山ほど考えたんですよ。ところが後で増やせるのはたった5ページだとわかって、考えたアイデアが全然入らないじゃないか、と内心怒ったことを覚えています(笑)」[18]。
- ^ 当時の様子を、浅田は以下のように述懐している。「本誌デビューの『刻魔師 麗』ではかなり苦労をしたはずです。45ページのネーム募集に募集に『麗』のプロトタイプの31ページのネームを回しましたので、時間のない中直してもらいました。締切がギリギリになってしまい広島から東京に出てきて旅館で描いてもらったんですが、その旅館はカンヅメ用の場所でして…まあ古くてシャワーの出も悪くて、臭いは古い家の臭いで…。原稿UP後、二度と原稿を遅らせない、と先生は言ってました。」[15]。
- ^ 通常、『週刊少年ジャンプ』の連載会議には、開始から3話分のネームを提出し、連載に値する作品かどうかの判断材料とする[20]。
- ^ 当初2020年3月21日から東京国際展示場にて開催が予定されていた「AnimeJapan 2020」の中で行われる予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためイベントが開催中止になったことを受け、予定していたイベント開催日時と同日同時刻にYouTube Live、Periscopeにて生配信された[54]。
- ^ 2015年9月3日にアカウントを削除した[94]。
- ^ 『BLEACHイラスト集 JET』付属の限定コミックに初収録された[107]。
- ^ 2020年10月20日現在。
- ^ 第1クール(2022年)、第2クール『-訣別譚-』(2023年)
- ^ ラジオCD 『BLEACH “B” STATION THIRD SEASON VOL.2』(SVWC-7572)に収録された[121]。
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