てこ てこの概要

てこ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/30 04:06 UTC 版)

てこ を使えば、100 kg の物体を 5 kg の物体で持ち上げることができる。

てこ梃子、梃,英語: Leverage)とは、弱いで重たいものを動かしたり、微小な運動を大規模な運動に変換する道具のこと。単純機械の一つであり、あらゆる機械の基礎となっている。

てこの原理

支点・力点・作用点の関係

てこには支点力点作用点があり、支点を中心に回転しうる天秤輪軸がある時、力点は力を加える点、作用点は力が働く点であり、普通は作用点にはおもりなどの負荷がある。支点は動かないよう固定しているため、力点を動かすと作用点が動く仕組みである。

てこを使う上で重要なのは、支点・力点・作用点の位置関係、特にその間隔である。てこで大きな力を得ようと思えば、なるべく支点から離れたところに力点を置く、あるいは支点のなるべく近くに作用点を置けばよい。小さい力を得ようと思えばその逆を行えばよい。実験をすると支点から力点までの距離が支点から作用点までの距離の2倍であれば、得られる力は加えた力の2倍になることがわかる。この関係を式で表すと、下記のようになる。

この節の加筆が望まれています。

古代イタリアのシチリア島シラクサに生まれたアルキメデスは、「てこの原理」を発見し、物理学の類いにした。これは、シラクサがポエニ戦争に巻き込まれた時、大きな威力を発揮した。特に投石機などである。また、さらにその時、「我に支点と長い棒を与えよ。されば地球をも動かさん。」と言ったとされる伝説が残されている。

てこの種類

てこは支点、力点、作用点の位置関係により、以下の三種類に分類される。三点を一直線上に並べたとき、真ん中が支点になるものを第1種てこと呼ぶ。同様に真ん中が作用点であれば第2種、力点であれば第3種と呼ぶ。英語では、てこの三種類で真ん中に来る点をそれぞれfulcrum(支点), load(作用点), effort(力点)として、flex と呼ぶ覚え方がある[5]

ここでは、説明のため支点、力点、作用点が一直線上にあるが、実際はその必要はない。くぎ抜きはそのよい例。

第1種てこ

第1種てこの図。手の記号がある所が力点。支点は三角形で支えられている。矢印の大きさは力の大きさを表す。

てこで大きな力を得る場合は、力点と作用点の間に支点を置く。力点を右側とした場合は、左から「作用点、支点、力点」の順になる(右図参照)。力点で加えた小さい下向き力は、三角形で支えられる支点を媒介して、作用点で大きな上向きの力となる。 力点と作用点を入れ替えると要する力は大きくなるが、動きを大きく、あるいは速くすることができる。

代表的なてこの一種で、古くから巨石などを動かすのにも使われてきた。この種類のてこを用いて大きなものを小さい力で動かす仕組みを使っている道具として、くぎ抜き洋はさみ缶切りラジオペンチ等がある。 小さなものを速く大きく動かす仕組みとしてはトレビュシェットがある。おもりが落下することによって石弾を高速で投擲(とうてき)することができるが、おもりは石弾の数倍〜数十倍の重量が必要となる。

第2種てこ

第2種てこの図。

大きい力を使う場合はもうひとつの構図もある。作用点を中心に置き、力点と支点が外側になる場合である。力点を左側に置いた場合は、左から「力点、作用点、支点」の順になる(右図参照)。力点に加えた小さい上向きの力は、作用点で大きな上向きの力となる。

これも、小さい力を大きな力に変えて加えることができる。この方法を使って大きな力を加えて用いる道具には、栓抜きくるみ割り器、割り器、穴あけパンチ、空き缶つぶし器等がある。

第3種てこ

第3種てこの図。

逆に、てこで大きな運動を得る場合は、支点を力点と作用点の外側で、かつ力点に近い場所に置く。左側を作用点とした場合は、左から「作用点、力点、支点」の順になる(右図参照)。力点に加えた小さな運動は、作用点において大きな運動となる。その代償として、この種類のてこでは、加えた力よりも小さい力が伝えられる。この種類のてこを用いた道具には、ピンセットトング、手持ち式のホッチキス和鋏などがある。

てこの応用

実際の道具や機械には、てこの仕組みを複数使っているものがある。例えば爪切りは、力点、支点、作用点、各2つずつあると考えることができる[6]

鉄道連動装置では、かつて転轍機信号機を人力で動かすために、巨大なレバーをてことして動かしていた。その名残で、電気的なスイッチの操作で済むようになった後も「てこ」と呼び習わされている。

てこの原理は格闘技における関節技にも使用されており、少林寺拳法でも重宝すべき原理とされている[7]

工事現場のてこ

てこは工事現場などで、てこの原理を使って石や樹木をこじ上げて動かしたり、石材の合端を合わせたり、樹木の向きを変えるための専用の道具の名称でもある[8]。木製の木でこや鉄製の金てこがある[8]

追いてこ
てこを物体の下にこじ入れ、てこの先と地面の接する点を支点に物体を向こう側に移動させる方法[8]
持ちてこ
てこを物体の下にこじ入れ、てこの先と地面の接する点を支点に物体を持ち上げる方法[8]
はねてこ
てこを物体の下にこじ入れ、角材などの枕を差し込み、それを支点に物体を持ち上げる方法[8]
舟漕ぎ
てこを使って3人がかりで物体を少しずつ移動する方法[8]。両脇を”はねてこ”で支え、舟ののような動きで押しつつ、後ろから”追いてこ”で押す。

脚注

  1. ^ 小学校では力を加える点を力点、てこが力を重りに与える点を作用点としているが、作用反作用の法則により力点も作用点も外力を受け、反力を出しているという点でなんら変わりがない。そのため力学では力点・作用点をまとめて作用点(もしくは着力点)と呼ぶ。
  2. ^ en:Leverを参照。
  3. ^ アーカイブされたコピー”. 2007年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月10日閲覧。
  4. ^ en:Fulcrum
  5. ^ 参考 en:LeverのMnemonic
  6. ^ てこを使ったさまざまな道具たち 理科ねっとわーく、2017年10月4日閲覧。
  7. ^ 『少林寺拳法のススメ』16頁。
  8. ^ a b c d e f 人力による運搬組立て工法の手引”. 日本造園組合連合会. 2019年10月16日閲覧。

関連項目




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