音圧 (Sound Pressure)
音圧
媒質中を音波が通過するとき、媒質の粒子が振動し、媒質内の圧力が上昇し降下する。その圧力の変化量、すなわち、音波によって生ずる媒質内圧力の静圧からの変化量を音圧と呼ぶ。瞬時値、波高値、実効値で表すが、とくに指定がないかぎり、ある時間内の実効値で表す。単位記号はPa(N/m2)。
参照 音圧レベル音圧
騒音とは人間が不快感を感じる音、すなわち、大きすぎる音、嫌な音色の音、突発的な音などを総称するが、一般的に大きな音を騒音ということが多い。
音には必ず発生源があり、固体面が振動している場合と、空気面の乱れが原因となっている場合とがある。固体面や空気面に強制力が作用して振動や乱れが発生すると、この面に接している空気に疎密波が生じ、これが音波となって伝播し鼓膜を振動させ神経を経て大脳に達し音として感じさせる。
音波が伝播する速度を音速といい、空気中の場合は近似的に次の式で求められる。
C = 331.5 + 0.61 t (C : 音速 m/秒、 t : 温度 ℃)
従って常温 t = 10~15℃ では C = 340 m となる。
音源から毎秒放射される音波のエネルギーを音響出力といい P で表す。
音波が単位面 1 m2を毎秒通過するエネルギーを音の強さといい、記号は(J)、単位は W/m2 を使う。
音波の圧力を音圧といい P で表し、単位は N/m2 で表す。
音の強さ、音圧の表現は J または P 表示では桁数が多くなって不便なため、これを統括して簡単な数字で表す目的をもって音圧レベルという言葉を用い、デシベル(dB)という単位を与えた。
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音圧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/12 07:18 UTC 版)
音圧(おんあつ、英: sound pressure)とは、音波の伝搬により媒質に生じる圧力であり、静圧からの変動分として表される[1][2]。大気中においては大気圧からの変動分である[3][4]。媒質中のある点における、ある瞬間の音圧を瞬時音圧といい、ある時間内の瞬時音圧の実効値を実効音圧という[5][6]。通常は実効音圧を単に音圧という[5][7]。音圧のSI単位はパスカル(Pa = N/m2)[8]。
概要
音波は、一般的には、固体、液体、気体などの媒質中を伝わる密度変化の波である[9]。液体が水である場合は特に水中音と呼ばれ、水中音響学という研究分野もある。また、固体の場合は、気体や液体のような伸縮に対する弾性だけでなく、ねじり変形と曲げ変形に対する弾性もあり、ねじり波と曲げ波も伝搬される[10]。
空気中の微粒子の密度についてみると、粒子が密になった部分では圧力が増加し、疎になった部分では圧力が低下する。このような圧力の変化が伝播していくのが、空気中の音波であり、音波による大気圧からの圧力の変化が音圧である。こうした空気中の音圧の変化が耳に達すると、音がするという感覚が得られる[9]。
空気中の音波は疎密波であり、音圧は粒子密の部分では正値、疎の部分では負値をとる。音響学では、電気分野において交流電圧を実効値で示すのと同様に、特段の明示がない場合でも音圧を実効値として扱うことがある[9]。
単位体積毎の媒質に含まれる音波のエネルギーである音響エネルギー密度は、音圧(実効音圧)の2乗に比例する。これはまた、1秒間に単位面積を通過する音のエネルギーとして定義される音の強さ(単位:W/m2)に比例する[9]。
解説

(1) 無音時の媒質は密度一定である
(2) 音伝播による密度の濃淡パターン
(a) 密度の高低は圧力の高低と対応
(b) 点 x0 での圧力 p の時刻 t に対する変化
加えられた力に対して元に戻ろうとする力が働くという性質(弾性)を有する媒質(弾性媒質)に加えられた外力が、弾性と慣性の働きによって、媒質中の密度変化(圧力変動)として伝搬される弾性波が音波であり[11]、弾性媒質である空気中を伝わる音波が耳という器官に達して得られる感覚が音である[12]。
音波は媒質を構成する粒子[注釈 1]の疎密の状態を進行方向と同じ方向の振幅により伝搬する縦波であり[11]、図の(1)(2)については、それぞれ(1)音波のないとき(静圧状態(Static pressure))と、(2)音波のあるとき((1)に対して音による圧力の変化が加わったもの(Sound pressure))の、ある瞬間における音波の進む方向における媒質の疎密の状態を模式的に示したものである。
この音波による媒質の疎密の状態(図の(2))に対応して、媒質の圧力を縦軸に、音波の進行方向を横軸にとりグラフに表したものが(a)である。線の間隔が狭いほど(密なほど)圧力が高く、逆に線の間隔が広いほど(疎なほど)圧力が低い。
定義
瞬時音圧
媒質中の位置
同じ音圧の音であっても周波数が異なれば、その音の大きさ(音の知覚的な大きさを表す感覚量)は、必ずしも同じではなく[42]、 概して、低い周波数領域では、最も感度の良い1~5kHz付近に比べて、相対的に高い音圧レベルでないと同じ大きさに聞こえない[43]。
この周波数による音の大きさの違いについて、基準となる周波数(1,000Hz)の純音の音圧レベルと同じ大きさに聞こえる、ある周波数の純音の音圧レベル(ラウドネスレベル)を線で示したものが等ラウドネスレベル曲線であり、フレッチャー=マンソンによるものが著名である[42]、等ラウドネスレベル曲線の測定は古くから測定が繰り返されており、近年では、鈴木と竹島によるものがISO 226:2003として規格化されている[43]。
A特性音圧レベル

平坦特性をZ特性といい、A,C特性は等ラウドネス曲線のそれぞれ60,100phonに近似した重みづけである。その中間のB特性と、航空機騒音評価のために提案されたD特性は音源の改善により用いられなくなった[44]。
さまざまな周波数により構成される音の大きさの評価について、周波数による感覚的な音の大きさの違いを踏まえて、周波数による聴感補正を行った音圧を用いる。通常用いられるサウンドレベルメータ(騒音計)には、このような周波数による聴感補正を行う周波数補正回路が、音の大きさのレベルを近似的に測定する目的で挿入されている[45]。
騒音の測定に用いる聴感補正は、A特性によるものが一般的である。A特性は、フレッチャー=マンソンの40 phon[注釈 5]における等ラウドネスレベル曲線を逆にしたものに近似される。このA特性により周波数重みづけを行った音圧pAを用いて算定した音圧レベル(A特性音圧レベル)LAを、騒音レベルといい、騒音の大きさの評価に用いられる[46]。
音圧の用語
音圧の語を含む用語には、以下のようなものがある。
- ピーク音圧
- 瞬時音圧のうち、対象時間中の最大絶対値(=最大振幅)をピーク音圧と呼ぶ。JISでの定義は「ある時間内で最大の絶対瞬時音圧」(英: peak sound pressure)[13]。
- 実効音圧
- 周期的に変化する音については、変化の1周期における瞬時音圧の実効値を実効音圧といい、これも音圧と呼ぶ[7]。JISにおいては「音圧」を「特に指定しない限り、ある時間内の瞬時音圧の実効値」と定義する[13]。
- 基準音圧
- JISでは「習慣的に選ばれた音圧で、気体の場合には20μPa、液体及び固体の場合には1 Pa」と定義される。(英: reference sound pressure)[13]
- 20μPaは非常に聴力のよい人がかろうじて聞きうる1kHzの純音の音圧(実効値)にほぼ相当する[9]。
脚注
注釈
出典
- ^ 音響用語辞典 2003, p. 44, 「音圧」.
- ^ a b c
瞬時音圧 媒質中のある点で,対象とする瞬間に存在する圧力から静圧を引いた値。 instantaneous sound pressure
JIS Z 8106:2000(日本産業標準調査会、経済産業省)、2頁 - ^ 大野・山崎『機械音響工学』 2010, pp. 2, 13.
- ^ a b 電気音響振動学 1978, p. 5.
- ^ a b 電気音響振動学 1978, p. 6.
- ^ 音響・音声工学 1992, p. 7.
- ^ a b c 音楽工学 1969, p. 9.
- ^ a b 電気音響振動学 1978, pp. 5–6.
- ^ a b c d e f 山本・高木『環境衛生工学』 1988, pp. 72–77, 80.
- ^ 大野・山崎『機械音響工学』 2010, p. 1.
- ^ a b 阪上『建築音響』 2019, p. 2.
- ^ 山本・高木『環境衛生工学』 1988, p. 75.
- ^ a b c d JIS Z 8106:2000「音響用語」(https://kikakurui.com/z8/Z8106-2000-01.html)(JIS Z 8106:2000)
- ^
静圧 媒質中のある点で,音波のないときに存在する圧力。 static pressure
JIS Z 8106:2000(日本産業標準調査会、経済産業省)、2頁 - ^
位置
音圧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 15:53 UTC 版)
音圧は、音波によって引き起こされる周囲からの圧力のずれである。空気中ではマイクロフォンによって、水中ではハイドロフォンによって測定される。国際単位系において、音圧の単位はパスカル (記号: Pa) である。瞬間音圧は、ある点でのある瞬間の音圧である。有効音圧は、ある時間内で瞬間音圧のRMSをとったものである。音を波として記述したとき、音圧と対になる変数は粒子速度(英語版)である。 振幅が小さいとき、音圧と粒子速度は線形の関係にあり、両者の比が比音響インピーダンスである。音響インピーダンスは波の特徴と媒質の両方に依存する。 ある瞬間の局所的な音の強さは音圧と粒子速度の積であるため、ベクトル量である。
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