龍姫湖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 08:26 UTC 版)
温井ダムによって形成された人造湖は、龍姫湖(りゅうきこ)と呼ばれる。総貯水容量は8,200万立方メートルでドラム缶に換算すれば約4億本分、太田川水系では最大規模であり、広島県内においても弥栄(やさか)ダム(小瀬川)の人造湖・弥栄湖に次ぐ規模の大きさを誇る。湖名の由来は地元の温井地区に古くから伝わる民話「江の淵の大蛇」に因む。これは姫が大蛇(龍)に化けるという内容のものであり、この民話より湖名を付けている。2005年(平成17年)には財団法人ダム水源地環境整備センターが選定する「ダム湖百選」の一つに、広島県内では神龍湖(帝釈川ダム・帝釈川)、八千代湖(土師ダム・江の川)、本庄水源地(本庄ダム・二河川)および弥栄湖と共に選ばれている。2002年(平成14年)には郵便切手にも描かれたが、ダムが図案となったのは温井ダムのほかは黒部ダム、佐久間ダム(天竜川)、小河内ダム(多摩川)、日吉ダム(桂川)しかない。 龍姫湖周辺は様々なレクリエーション施設が整備されているが、これは補償交渉におけるダム対策協議会の要望と旧加計町の地域振興策によるものである。湖畔にはリゾートホテルである温井スプリングスを始め、半島部には延長1.5キロメートルの観光用散策道路などがある自然生態公園、レンタルサイクリング施設やバラ園、カフェテラス、さらには宿泊も可能なロッジもある龍姫湖のさとや工芸センターなど、多種にわたる施設が存在する。またダム本体も積極的に開放されており、エレベーターでダム内部を巡視するための監査廊に立ち入ることもできるほか、ダムの真下にも行くことができる。滝本ダム付近より国道を右折して旧国道186号に入り、滝山川発電所を通過して滝山峡を北進するとダム直下付近に行くことができるが、現在は落石の危険があるため滝山川に架かる橋よりダム本体まで通行止めとなっており本体には行けない。毎年5月から6月にかけては洪水調節のために湖の水位を下げるための放流が実施され、ダム中部にある常用洪水吐き2門から勢いよく放流する様が見られる。夏には「龍姫湖まつり」が開催されるほか、2010年(平成22年)からはダム周辺を発着点とする88キロメートルの長距離マラソン大会「安芸太田しわいマラソン」が開催されている。名勝・三段峡にも比較的近いほか、世界遺産に登録された石見銀山と厳島神社の中間付近に位置し、道路の便も良いため訪問しやすい。 こうしたダムを中心に据えた様々な観光施設の整備など積極的な地域振興を実施したことで、安芸太田町の観光客数はダム完成前に比べ増加した。ダム完成前後で比較すると旧加計町の観光客数は前年の2.4倍に増加し、ダム完成翌年の2002年(平成14年)には年間観光客数が100万人を突破。それ以降も概ね年間80万人前後で推移するなど、旧加計町が目指した地域振興策は成功を見ている。観光地として成功したダムとしては年間訪問客数が延べ130万人を超える神奈川県の宮ヶ瀬ダム(中津川)を筆頭に北海道の金山ダム(空知川)、岩手県の御所ダム(雫石川)、京都府の日吉ダムなどがあるが、温井ダムもその成功例である。「ダムで栄えた村はない」と批判される面があるが、工夫次第で町の活性化につながった一例でもある。温井ダムは広島県の主要な観光地の一つとして、重要な位置を有している。
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