領域喪失の代償
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/15 21:26 UTC 版)
「ハンブルク攻囲戦 (1686年)」の記事における「領域喪失の代償」の解説
3回の敗戦と和約(1645年のブレムセブルー条約、1658年のロスキレ条約と1660年のコペンハーゲン条約)を通じてデンマークは故地の一つであるスコーネ地方、即ち国土の1/3をスウェーデンに奪われた。ネーデルラントの支援下で敢行した報復戦争は、緒戦の成功にも拘らず失敗に終わる。ルンドの和約(1679年)によって、デンマークは奪還した地域を再び手放さなくてはならなかった。この領土喪失の代償として、今やハンブルクが狙われることになったのである。講和から幾日も経たない内にクリスチャン5世はハンブルクに対する1回目の攻囲戦を開始したが、ハンブルクが220,000ターラーを支払い、ピンネベルク(英語版)の和議で臣従の請求権の法的な確認を約束すると兵を引いた。 過去のドイツにおける伝統的な歴史記述では、フランス国王ルイ14世を1686年における2回目のハンブルク攻囲戦を背後で推進した者と見なしてきたが、それは部分的に不当な主張である。なぜならフランスは交渉を通じて解決を図るよう繰り返し注意を促し、自ら仲介を申し出ていたからである。またスウェーデン国王カール11世も、自国に対するさらなる報復戦争への関心を逸らすべく、その努力をハンブルクに向けるようクリスチャン5世を鼓舞していた。 ルイ14世は、裕福なハンブルクの併合によるデンマークの伸長に、国益を見出さなかった。 カール11世はクリスチャン5世の義弟であり、ハンブルクに対抗するための助力を彼に申し出た。 実際にデンマーク軍による攻撃は、バルト海沿岸と北ドイツ(英語版)を数十年にわたって抗争に巻き込んできた、二つの同盟の解消を背景に実施された。それらはスウェーデン=フランス同盟とデンマーク=ネーデルラント同盟である。スウェーデンは1679年、フランスの国益に即した行動が、ドイツにおける自国の所領を引き換えにしかねないことを経験しなくてはいけなかった。スウェーデン領ポメラニア、ヴィスマールとブレーメン=フェルデン公領(英語版)はデンマーク軍、ブランデンブルク軍とリューネブルク軍に奪われた。フランスの介入により、サン=ジェルマン講和条約でその大部分は返還されたものの、いくつかの小さな領域(ヴィルデスハウゼン(英語版)、テディングハウゼン、デルフェルデン、カミーンとグライフェンハーゲン(英語版))は失われた。他方、デンマークはスウェーデンに奪われた領土を奪還する上で、ネーデルラントからの援助が不足していたと認識せざるを得なかった。同年、フランスがブランデンブルクと同盟し(ドイツ語版)、スウェーデンと同君連合で結ばれていたプファルツ=ツヴァイブリュッケン公領を1681年に併合する(再統合政策(ドイツ語版))と、フランスとスウェーデンの関係は急速に悪化する。その結果、1679年にはまだスウェーデン、ひいてはハンブルクに味方していたフランスでは、1682年にルイ14世がクリスチャン5世と秘密の同盟条約を締結し、デンマークに補助金と要求の承認を与えた。 フランスの支持を失ったスウェーデンは、軍備(何より打撃を受けた艦隊の再建)を改めて整えたり、新しい同盟国を探したりするための時間を稼ぐべく、ひとまずデンマークとの和解を模索する 。1682年8月と1683年5月には、スウェーデンの使節がノルウェーとの交換、そしてスコーネ地方の最終的な放棄と引き換えにドイツにおける全てのスウェーデン領、スウェーデンと同盟していたシュレースヴィヒ=ホルシュタイン=ゴットルプ公領に対するデンマークの要求の承認、さらにハンブルクとリューベックを征服する際の軍事的支援まで提案したとされる。しかし、このような支援の実効性やスウェーデンの熱意には疑問が持たれている。同国はすでに1654年(ドイツ語版)と1666年(ドイツ語版)、同様の戦争において比較的弱体なハンザ都市、ブレーメンに対し、要求を貫き通すことができなかったからである。クリスチャン5世が1684年と1685年、リューベック司教領(ドイツ語版)とシュレースヴィヒ、ホルシュタイン両公領におけるホルシュタイン=ゴットルプ家の領地を占領すると、カール11世はこれを認めたものの、1686年にスウェーデンは改めて陣営を換えたブランデンブルク=プロイセンとともに、フランスに対抗するアウクスブルク同盟に参加した。フランスはデンマークともども孤立したのである。
※この「領域喪失の代償」の解説は、「ハンブルク攻囲戦 (1686年)」の解説の一部です。
「領域喪失の代償」を含む「ハンブルク攻囲戦 (1686年)」の記事については、「ハンブルク攻囲戦 (1686年)」の概要を参照ください。
- 領域喪失の代償のページへのリンク