釜谷山とは? わかりやすく解説

毛勝三山

(釜谷山 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/08 09:41 UTC 版)

毛勝山

剱岳の早月尾根から望む毛勝山
標高 2,414.52[1] m
所在地

日本

富山県魚津市黒部市
位置 北緯36度42分04秒 東経137度35分27秒 / 北緯36.70111度 東経137.59083度 / 36.70111; 137.59083
山系 飛騨山脈立山連峰
プロジェクト 山
テンプレートを表示

毛勝三山(けかちさんざん)は、富山県魚津市黒部市の間にある山岳群である。飛騨山脈立山連峰の北に連なり、毛勝山・釜谷山・猫又山で構成。この三山[注釈 1]は、片貝川源流でもある。登山道については後述。高山植物ハイマツなどの植物も多い。山麓の雪渓の近くには、多くの山菜が自生している。

概要

中部山岳国立公園の北端に当たる山々で、毛勝三山の一つである釜谷山(2415m)は魚津市の最高峰となっている。毛勝山と猫又山は登山道が整備されているが、国土地理院地図には登山道が記載されていない。なお釜谷山は登山道が無い。

毛勝三山ではライチョウの生息が確認されており、立山連峰のライチョウ生息地では北端に当たる。[2]

毛勝山(けかちやま、けかつやま)

毛勝三山を代表する標高2,415 m (2414.52m) の[3][4][注釈 2][注釈 3]で、日本二百名山に選定されている。

由来

古くは瀧倉ヶ岳、ケカチ山といったという[6]

毛勝谷からきた名前で、夏に水不足になると、融雪を促すため人々がで毛勝谷などの雪渓を崩したと伝えられ、毛勝谷の名は水不足[注釈 4]による凶作すなわち飢渇(けかつ、けかち、きかつ-飢饉の意)が毛勝に転訛したという説がある[7]

「ケカチ谷」とは、年中雪の消えない谷のことで、長野県北部の小谷(おたり)村や新潟県西頸城あたりの方言だといい。戦国末期、越後落人が移り住んだからだという説もある[8]

片貝では山を付けず「けかち」と呼ぶ人が多い。地元の(古くからいる)人々の発音では「きかつ」と聞きとれる。この地方の言葉で「かつ」とは「切る」とか「打つ」といった意味がある。

自然

この山の標高1400〜1500m地点にある万年雪(高さは6〜10m)は、海から20km地点に存在するのは国内で唯一であり、世界でも珍しいとされている。この万年雪は夏まで残る。

釜谷山(かまたんやま)

釜谷山

剱岳の早月尾根から望む釜谷山
標高 2,415 m
所在地 富山県魚津市黒部市
位置 北緯36度41分22秒 東経137度35分09秒 / 北緯36.68944度 東経137.58583度 / 36.68944; 137.58583
山系 飛騨山脈立山連峰
プロジェクト 山
テンプレートを表示

毛勝三山で最も標高が高い。標高2,415 m。魚津市の最高峰でもある。 「富山県山名録」によれば、古名を「姥倉ヶ岳」といったが田部重治らが釜谷から登攀した際に命名した。[9]この「釜」は谷に見られるポットフォールのことであるという。

猫又山(ねこまたやま)

猫又山

剱岳の早月尾根から望む猫又山
標高 2,378.16[1] m
所在地 富山県魚津市黒部市中新川郡上市町
位置 北緯36度40分52秒 東経137度35分25秒 / 北緯36.68111度 東経137.59028度 / 36.68111; 137.59028
山系 飛騨山脈立山連峰
プロジェクト 山
テンプレートを表示

標高2,378 m[3]片貝川の実質的な源流の山である。

「にいかわのむかしばなし」(柴垣光郎著)によれば、昔、猫又(妖怪)が黒部の山の中に追われ逃げてきて、この山に住み付き、たくさんのが集まって鳴き声が聞こえるなどの怪異があったのが由来という[10]。また、「続 日本の地名」(谷川健一著)によれば、「たんなる伝承ではなく、実在の大猫がいて、人をしばしば襲うことがあったから」としている[11]。これは、黒部川のほうに山を降りると別の猫又黒部峡谷鉄道の駅がある)の地名と猫又谷があることと呼応する。

自然

山の麓、南又には洞杉と呼ばれる立山杉[注釈 5]の大木群が見られる。

2000年(平成12年)の環境省の調査によれば、幹周り全国第3 位(15.60 m)の物がある。

登山道

毛勝山へは、近年、無積雪期でも登れるように西北尾根からのコースが藪刈りされており、昭文社の2021年度の『山と高原地図 37 剱・立山』では、西北尾根登山口の表記と共に、毛勝山登山ルート(西北尾根)として赤実線の一般登山道の扱いで記載されている。同地図では登り7時間、下り4時間40分の計11時間40分のコースタイム設定であり、標高差1,700mで途中に山小屋もないため、山行には相応の体力が必要である[12]。このコースが開設される以前は、残雪期に限って片貝東又発電所近くから阿部木谷へ入り毛勝谷から登るルート[13]しかないとされていた。

猫又山へは、馬場島からブナクラ谷に入り、谷の途中から尾根に取りつき大猫平と大猫山を経由する登山道と、ブナクラ谷を遡りブナクラ乗越を経由して尾根を急登する登山道があり、昭文社の2021年度の『山と高原地図 37 剱・立山』では両登山道とも破線の難路登山道扱いとなっている。同地図では猫又山を大猫山経由で往復すると登り8時間、下り5時間20分の計13時間20分、猫又山をブナクラ乗越経由で往復すると登り7時間10分、下り5時間30分の計12時間40分のコースタイム設定となっている。また参考モデルコースとして、1泊2日のテント泊で歩行時間18時間20分の「馬場島から猫又山・赤谷山一周」が掲載されている。このモデルコースは、大猫山経由で猫又山山頂に至りブナクラ乗越経由で下山する時計回りの13時間30分の一周コースに、ブナクラ乗越から赤谷山までの往復4時間50分の行程を加えたものである[12]。なお猫又山~釜谷山~毛勝山を縦走できる登山道はない。

周辺の山

脚注

注釈

  1. ^ 猫又山の隣に大猫山もある。
  2. ^ GNSS測量等の点検・補正調査による2014年4月1日の国土地理院『日本の山岳標高一覧-1003山-』における改定値。なお、旧版での標高は2,414m。
  3. ^ 国土地理院が2025年3月に新たな方法で計測した標高では、2,414mとなっていた[5]
  4. ^ 蛇石に例年水乞いの祭りがあることと符合する。
  5. ^ ウラスギ(アシウスギ)のこと。

出典

  1. ^ a b 基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2015年1月1日閲覧。
  2. ^ こもれ木-魚津市
  3. ^ a b 日本の主な山岳標高(富山県の山)”. 国土地理院. 2015年1月1日閲覧。
  4. ^ “標高値を改定する山岳一覧 資料1”. 国土地理院. https://www.gsi.go.jp/common/000091072.pdf 2014年3月26日閲覧。 
  5. ^ 『北日本新聞』2025年5月7日付21面『全国76山 1メートル低かった』より。
  6. ^ 富山県山名録による。
  7. ^ 長井真隆の講演による。
  8. ^ 雑誌・新川時論21「毛勝山山名考」、「富山湾岸からの北アルプス 」ナカニシヤ出版2006年等での佐伯邦夫の説
  9. ^ 山と渓谷」にある。「富山県山名録」は『無名と思ってのことだろう』という説をとる。
  10. ^ 柴垣光郎『にいかわのむかしばなし―民話・伝説・歴史100選』第一法規出版、1994年4月。ISBN 4474003365 
  11. ^ 谷川健一『続 日本の地名―動物地名をたずねて(岩波新書)』岩波新書、1998年5月20日。 ISBN 4004305594 
  12. ^ a b 昭文社 2021年度『山と高原地図 37 剱・立山』
  13. ^ 田部重治の登山ルート。名著「山と渓谷」(岩波文庫)がある。

参考文献・出典

  • 柴垣光郎著 『にいかわのむかしばなし』 第一法規出版、1994年
  • 橋本廣、佐伯邦夫編 『富山県山名録』 桂書房、2001年
  • 田部重治著、近藤信行編 『新編 山と渓谷』 岩波書店〈岩波文庫〉、1993年

関連図書

外部リンク


釜谷山(かまたんやま)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 15:49 UTC 版)

毛勝三山」の記事における「釜谷山(かまたんやま)」の解説

毛勝三山で最も標高が高い。標高2,415 m。魚津市最高峰でもある。「富山県山名録」によれば古名を「姥倉ヶ岳」といったが田部重治らが釜谷から登攀した際に命名した。この「釜」は谷に見られるポットフォールのことであるという。

※この「釜谷山(かまたんやま)」の解説は、「毛勝三山」の解説の一部です。
「釜谷山(かまたんやま)」を含む「毛勝三山」の記事については、「毛勝三山」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「釜谷山」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「釜谷山」の関連用語

釜谷山のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



釜谷山のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの毛勝三山 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの毛勝三山 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS