自警団の正義
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「モリー・マグワイアズ」の記事における「自警団の正義」の解説
当時、ゴウエンの腹心であったF・P・デュイーズ (F. P. Dewees) は、1873年に「ゴウエン氏は、大きくなりすぎた「労働組合」の力を削ぎ、できることならばモリー・マグワイアズを根絶する必要があると深く認識した」と記している。1874年12月、ゴウエンに主導された炭鉱経営者たちは、賃金の2割削減を公表した。坑夫たちは1875年1月1日にストライキを決定した。 3月に、労働組合の指導者であり、AOHの指導者でもあったエドワード・コイル (Edward Coyle) が殺害された。別のAOH会員も、炭鉱監督者ブラッドレー某に率いられたモドックス (the Modocs)に銃撃され、殺された。ある炭鉱の親方だったパトリック・バリー(Patrick Vary)は、坑夫たちが集まっていたところに発砲し、後にゴウエンが吹聴した所では、彼らが「逃げ去った後には、点々とどこまでも続く血痕があった」という。タスカローラ (Tuscarora) では坑夫の集会が自警団に襲われ、労働者1人が撃ち殺され、数名が負傷した。 ピンカートン探偵社の手先のひとり、ロバート・J・リンデン (Robert J. Linden) は、炭・鉄警察の業務に従事しながら、マクパーランドの支援に送り込まれていた。1875年8月29日、アラン・ピンカートン (Allan Pinkerton) は、ピンカートン探偵社の総監督ジョージ・バングスに書き送った書簡の中で、モリー・マグワイアズに対して自警団活動を行うよう勧めていた。 M.M.'s(モリー・マグワイアズ)は根っからのゴロツキ連中だ...リンデンに自警団委員会を立ち上げさせよう。人数は大勢でなくていいが、リンデンには、M.M.'sに恐ろしい報復を与える覚悟がある奴を集めてやれ。そうすれば、みんな目を覚ますだろうし、M.M.'s の連中はふさわしい報いを受けるだろう。 1875年12月10日未明、男性3人と女性2人が、覆面をした男たちに襲われた。ルーカスの見立てでは、この襲撃は「ピンカートンのメモに概要が記されていた戦略を反映しているように思われるという。犠牲者となったのは、マクパーランドが密かにモリーズだと察知した 人々であった。男性1人は家で殺され、モリーズだと疑われた他の2人は、負傷しながらも脱出した。モリーズの一員とされたある男性の妻は、撃ち殺された。 マクパーランドは、自分が提供した情報が、無差別殺人者たちの手に渡っているのを見て激怒した。襲撃事件の詳細を聞いたマクパーランドは、ピンカートン探偵社の上司への書簡で抗議をした。マクパーランドは、自分の労働側への潜入調査の結果、モリーズの構成員が暗殺されることには反対しなかった—それは「連中にふさわしい当然の報い」だった。しかし、マクパーランドが罪のない犠牲者と考えていた「女子供の殺害」まで、自警団が進んでやろうとしていることが明らかになると、マクパーランドは、仕事から降りてしまった。マクパーランドは書簡で次のように記している。 金曜日:今朝8時に覆面の男たちがオドネル夫人の家に押し込み...ジェームズ・オドネル別名フライデー、チャールズ・オドネル、ジェームズ・マカリスターを殺し、マカリスター夫人も家の外に連れ出されて撃たれた(ジェームズ・マカリスターの妻)。というわけで、オドネル家については、当然の報いを得た訳で、私としても満足だ。私はこの連中が何者であるのかを報告した。連中に関する情報はすべて明確に伝えてきたし、いつ裁判になっても十分に公判を維持できると思うが、証人たちは臆病で、とうてい証言できないかもしれない。私は、神と人類の利益に適うよう、何カ月も前からあなたに、これだけとんでもない事件が起きているのに当局が一向に解決に乗り出そうとしていないことを、指摘してきた。今朝、起きて、私自身がマカリスター夫人の殺人者であることを知った。この女性が、事件とどう関係していたというのだろう—スリーパーズ (モリー・マグワイアズ)は最悪の場合、女性を撃ち殺しただろうか。もし私がここにいなければ、自警団委員会は誰が犯人かは分からなかったはずであるし、彼ら(自警団)が血に飢えて女性を撃ったことが明らかになった以上、ここに私は辞表を提出し、この手紙が受け取られた時点でただちにその効力が生じるものとする。私は怖じ気づいて辞職するのではなく、ただもう連中が自分でやるべきだというだけだ。こちらも敵方も同様だということが分かった以上、私はもう関わらないし、これ以上、女子供の殺害行為の付属物であり続けるつもりはない。自警団がお手本を示した以上、スリーパーズ (モリー・マグワイアズ)も女性を手に掛けることを厭わなくなるはずだ。 この(辞表にもなっている)マクパーランドの自警団の一件についての報告には、誤りも含まれているようだ。死者の数は誤っている。ジェームズ・"フライデー"・オドネル (James "Friday" O'Donnell) とチャールズ・マカリスター (Charles McAllister) は、「負傷したが脱出し」ている。報告では、この2人が自警団に殺されたことになっている。こうした報告は、誤りや、まだ確かめられていない情報も含んでいたが、日々ピンカートンの調査員たちから集められていた。報告の中身は、ピンカートンのクライアントにはタイプ打ちされた報告書になって定期的に提供されていた。 マクパーランドは、彼の日報がモリーズに敵対するならず者の手に渡っているに違いないと考えた。マクパーランドの上司であるピンカートン探偵社のベンジャミン・フランクリン (Benjamin Franklin) は、自警団による殺人にピンカートン探偵社は「関わっていないと(マクパーランドを)納得させるのに腐心した」と自ら述べている。マクパーランドは説得されて、辞意を翻した。 フランク・ウェンリッチ (Frank Wenrich) という名のペンシルベニア州兵中尉が、自警団の指導者として逮捕されたが、保釈金が支払われて釈放された。その後、マクパーランドが密かに殺人犯と目していたヒュー・マッギーハン (Hugh McGeehan) という21歳の坑夫が、正体不明の暗殺者に銃撃され、負傷した。さらに、マッギーハンの家族の家にも銃弾が浴びせられた。
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