背景と意図
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 15:15 UTC 版)
本作はもともとアメリカ合衆国よりハリウッドでの実写劇場版製作の企画を持ちかけられた際に、当時の子供の間では『マクロス』の知名度が低かったことから、日本国内でOVAとテレビアニメの新作を展開して人気を獲得しようという意図のもとに企画された。異なるメディアでの同時展開の理由について製作会社ビックウエストの大西加紋は、テレビアニメの内容面やスケジュール面での制約から「マニア層」を納得させる水準維持が難しく、そうした層を取り込むためにOVAでの展開と両方が必要であったという趣旨の発言をしている。 『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』以降の10年間「マクロスにはもう手を出さない」と言ってきた河森は、それをやる以上は「路線継承だけはせずにファンを裏切ろう」と思い、バンダイビジュアルのプロデューサーである高梨実より企画を持ちかけられた際に一度は断るが、その後1週間考えた結果、「歌うパイロット」というアイデアを思いつき、もう一捻りして「スポンサーに却下されるかもしれないけど、戦わない主人公はどうだろう」と考えた。 高梨は、構想としては『7』よりも先に『プラス』の劇場版とOVAがあったとしており、河森も先に『プラス』のイメージが固まり、テレビ版は難航の末に「戦わない主人公」というアイデアを思いついたのちにヒロインや敵の設定もでき、富田、美樹本、宮武ら旧作のスタッフが加わって企画が具体化したと述べている。河森は後年のインタビューでは、『7』だけでは前作と極端に変わるため、同時に『プラス』を制作することを提案したところ、両方通ったと語っている。 構想の背景には『愛・おぼえていますか』のクライマックスにおいて、歌で異星人の心を目覚めさせながら敵軍のボス、ゴル・ボドルザーだけは銃撃で決着をつけたという経緯があり、本作制作中には「劇場版でも弾を撃たなければ、本当の意味で時代を変えられたかもしれない。その深い心残りが今やっていることにつながっているような気がしますね」と語っている。 また、同時作業の『プラス』と似ていると頭のなかで混乱するうえつまらないので、昔の『マクロス』の要素をデフォルメして振り分け、『プラス』は実写寄り、『7』は漫画寄りと設定した。『7』のコンセプトは「メカファンからそっぽを向かれる作品」と「空前にして絶後」であり、誰もこのあと真似をしようと思わないものを作ろうと思ったという。 河森は「スタイル」から来る「思い込み」をあえて外すのが好みで、『7』は荒唐無稽に見えながらも「戦わずに歌う主人公」という点で、一見シリアスな装いを持った『プラス』よりも重いテーマを扱っていると語っている。また、アニメ作品をリアリティを込めて制作すると洗脳に近くなってゆくため、『7』のような「際どい」テーマを扱った作品の場合、海外旅行中に拳銃を突きつけられた状況で歌いだすといったような人間が万が一にも出る可能性を考慮して、そこまでは責任をもてないためにあえて漫画的な表現にとどめたという趣旨の発言もしている。その上で「スタイルは漫画ですけど、やっている内容はそんなに外れていないはずです。全部を小説のSFとして書くと、結構筋立って見えるはずですよ」とも述べている。 監督に起用されたアミノテツローは、テレビ版の『超時空要塞マクロス』を観たことがなく、旧作の影響を避け新しいものを作るために、本作の制作にあたってあえて同作品を観ることはしなかったといい、旧作の設定などについては河森や富田の意見を聞きながら制作を行なったと述べている。助監督としてみずから志願して参加した藤本義孝(ふじもとよしたか)は『超時空要塞マクロス』の大ファンで、河森によると旧作のスタッフも忘れているようなことをファン視点で記憶しており、旧スタッフと新スタッフの橋渡し的な存在になっていたという。なお、「シリーズ構成補」という役職で本作のクレジットに記載されている「ミソトハジメ」は、アニメ監督・演出家の佐藤順一である。高梨に声を掛けられて初期の打ち合わせに立ち会ったといい、俯瞰で見られる立場から原作者である河森をハンドリングする役割を求められたのではないかと佐藤自身は推測しており、実際に周囲が河森の意見に流されそうになったときに方向修正を行なうことがあったと語っている。
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