習俗として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/22 08:08 UTC 版)
習俗としての冥婚は、結婚と死生観に関わるものとして中国を始めとする東アジアと、東南アジアに古くから見られる。 死者を弔う際、その魂がまだこの世にあるうちに、それと見立てた異性と婚礼を挙げさせ、夫婦としたのち、死の世界に送り出すものである。対象となる死者は基本的に未婚男性であるが、ときに既婚男性や未婚女性の場合もある。広義では、スーダンに見られる死後結婚 (en) も同じものとして扱う。 英語では、冥婚を ghost marriage、あるいは、spirit marriage と言うが、儒教文化圏の冥婚を他文化のものと区別して、Chinese ghost marriage、Minghun (中国語名に準じたラテン文字転写形)などとも呼ぶ。 その性格上、最も過激な形としては、結婚相手は命を奪われ、夫婦として共に埋葬される。しかし、そのような辛辣なものばかりがこの風習の全てではない。同時期に亡くなった未婚女性と結婚させて共に葬る場合もあれば、人間の女性に見立てた花嫁人形を遺体と共に柩(ひつぎ)に納める場合もある。また、そのような花嫁人形のほかに故人の結婚式を描いた絵を奉納するものもあり、他にも、既婚・未婚のいかんを問わず生きている異性と結婚させ、その相手方に形見の品(位牌など)を供養させるものなど、時代や地域によって形態はさまざまである。 現代日本の場合、青森県および山形県の一部で行われる、未婚の死者の婚礼を描いて寺に奉納する「ムカサリ絵馬」が、比較的穏やかな性質の冥婚として挙げられる。 沖縄の冥婚については渡邊欣雄による報告が挙げられる。グソー・ヌ・ニービチと呼ばれるその冥婚が執り行われた理由は、後妻として嫁いだ女性の位牌が生家に安置されていたからである。その祖先は初代で、今の戸主から数えて6代前の女祖であった。沖縄では女祖の位牌を一つだけ安置するのは原則に反するとして、位牌が生家から婚家に移され、夫や先妻の位牌と共に納められた。 中国の山西省・陝西省をはじめとする地域にこの風俗が強く、お金を目当てて少女を殺害する事件もあった。 台湾では紅包と呼ばれる赤い封筒が冥婚に使われる。本来紅包は現地でご祝儀のやり取りや餞別を入れて感謝を伝える用途で使われるものであるが、この風習の場合その意味合いは異なる。女性が未婚のまま亡くなると、道端に遺族が紅包を置く。通行人がそれを拾うとそれを監視していた遺族が出てきて、死者との結婚を強要される。そのため、安易に封筒を拾うことは危険であるとされる。結婚には死者が相手を気に入る必要があり、その有無は占いで判断される。封筒には現金や遺髪、死者の生前の写真などが入っている。この風習自体は古来からのものではなく最近になって始まったもので、過激に取り上げられていることが2012年に国立台北芸術大学大学院の修士論文で冥婚を取り上げた李佩倫によって指摘されている。2015年現在は実際に起きればニュースになるほど下火になっていたが、2017年に公開された映画『血観音』および同年のテレビドラマ『通霊少女(英語版)』による影響で再び広まったとされている。
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