美術と音楽への影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/03 19:37 UTC 版)
「サイマティクス」の記事における「美術と音楽への影響」の解説
サイマティックな節線パターンを作る装置は視覚芸術と現代音楽に影響を与えてきた。 アーティストのビョークは音楽と自然やテクノロジーとの出会いをテーマとしたアルバム『バイオフィリア(英語版)』のツアーやそのライヴフィルム『ビョーク: バイオフィリア・ライヴ(英語版)』において、サイマティクスを専門とするアーティストのミアラ・オライリーやエヴァン・グラントとコラボレーションを行った。 実験音楽家アルヴィン・ルシエ(英語版)はクラドニ図形に関するハンス・ジェニーの著作に影響を受けて Queen of the South を作曲した。またジェニーの著作はマサチューセッツ工科大学に Center for Advanced Visual Studies(CAVS)を創設したジョージ・ケペシュにも影響を与えた。ケペシュが制作したサイマティックなアート作品 Flame Orchard は、板金にグリッド状に開けられた多数の穴からガスの炎が噴出し、音楽に合わせてダイナミックなパターンを描くというものだった。 1980年代の半ば、CAVSに在籍していたヴィジュアル・アーティストのロン・ロッコ(英語版)は、シンセサイザーの音声信号を真空管アンプで増幅し、それによって駆動されるサーボモータに鏡を取り付けてレーザービームを反射させ、音声の周波数と振幅を再現する光のパターンを作り出した。ロッコはこのビームを用いてビデオ・フィードバック(英語版)を生成し、コンピュータでそのフィードバック信号を処理することで、 Andro-media と題する一連のインスタレーション作品を制作した。ロッコは後に、The Harmonic Choir の一員としてモンゴルの喉歌を歌う音楽家デヴィッド・ハイクス(英語版)と共同して、水銀の液面で反射させたヘリウム-ネオンレーザーを音に合わせて変調することでサイマティックな画像を作り出した。同作の写真は1987年のアルス・エレクトロニカカタログに載せられた。 現代の写真家で哲学者でもあるドイツ人アレクサンダー・ラウターヴァッサー(英語版)は、精巧な水晶発振器で細かい砂を撒いた鋼板に共鳴を起こしたり、ペトリ皿に入れた水の試料を振動させるなど、21世紀の技術をサイマティクスに応用した。2002年に出版された初の著作、Wasser, Klang, Bilder: Die schöpferische Musik des Weltallsは、純粋なサイン波からベートーヴェン、シュトックハウゼン、エレクトロアコースティック(英語版)のグループ Kymatikや喉歌など、広範なジャンルの音で水面を駆動させて撮影した反射光の写真が大きく扱われた。その結果得られた定在波パターンの画像は非常に印象的なものであった。ラウターヴァッサーの著書は、ヒョウの紋の配列や草花にみられる幾何学図形をはじめとして、クラゲの形やカメの甲羅に見られる固有の模様など、自然のパターンをサイマティックなパターンによって細部まで再現することに焦点が置かれていた。 作曲家のスチュアート・ミッチェル(英語版)とその父T・J・ミッチェルは、ロスリン礼拝堂(英語版)の彫刻はサイマティックなパターンを模したものだと主張した。二人は2005年に『ザ・ロスリン・モテット』と題する作品を制作し、礼拝堂のアーチ14基に取り付けられている角石に掘られた13種の幾何学シンボルが、様々なクラドニ図形のパターンと類似していることを示した。サイマティクス研究者のコミュニティでしばしば見られるように、ミッチェルらの主張は科学的・歴史的な裏付けを欠いている[要出典]。難点の一つは、角石状の彫刻の多くはオリジナルが腐食したため19世紀に新しく製造されたものだということである。 2014年、エレクトロニック・ミュージックのユニットザ・グリッチ・モブ(英語版)はサイマティクスを利用してミュージック・ビデオ Becoming Harmonious (ft. Metal Mother)を制作した。 ファッションデザイナーのMandali Mendrillaはヤントラ(英語版)図形とサイマティクスに影響を受けて Kamadhenu (Wish Tree Dress III) と題するスカルプチャードレスを制作した。そのデザインはヒンドゥーの女神カーマデーヌを意味するヤントラ図形をモチーフにしていた。
※この「美術と音楽への影響」の解説は、「サイマティクス」の解説の一部です。
「美術と音楽への影響」を含む「サイマティクス」の記事については、「サイマティクス」の概要を参照ください。
- 美術と音楽への影響のページへのリンク