美術における「INRI」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/30 15:38 UTC 版)
「INRI」の記事における「美術における「INRI」」の解説
イエス・キリストの磔刑を題材にした絵画や彫刻においては、イエスの頭の上に「INRI」が記された札または銘板(羅語:titulus)が描かれるのが普通である。絵画や彫刻によっては、「INRI」の文字が直接十字架に彫られていたり、イエスの頭上に「INRI」が現れているような場合もある。 西欧におけるルネサンス美術では主に、ヘブライ語とギリシア語の句を省いてラテン語の文のみが描かれており、更にINRIと略されていることが多い。しかし、反宗教改革の時代では、カトリック教会の改革が進む中で、磔刑画の中で3ヶ国語を省略せずに描いているものもある。 正教会のうちいくつかの教会は、ギリシア語の句(Ἰησοῦς ὁ Ναζωραῖος ὁ Bασιλεὺς τῶν Ἰουδαίων)の頭文字「INBI」を使用している。また福音書に見られる罪状書きではなく、そう書かれるべきであったという意味で「ὁ Bασιλεὺς τοῦ κόσμου」(世界の王)または「ὁ Bασιλεὺς τῆς Δόξης」(栄光の王)と書かれる場合もある。一方でラテン語の影響の大きいルーマニア正教会はラテン語あるいはルーマニア語(Iisus Nazarineanul Regele Iudeilor)に基づき「INRI」を用いている。 スラヴ系の正教会(ロシア正教会・ウクライナ正教会・ブルガリア正教会・セルビア正教会など)で広く用いられる八端十字架にはこの罪状書き部分が組み込まれているが、八端十字架には文字が書かれていないことも多い。罪状書きの文は教会スラヴ語では「І҆и҃съ назѡрѧни́нъ цр҃ь і҆ꙋде́йскїй」と訳されており、その頭文字は「ІНЦІ」である。 罪状書きのヘブライ語文を「ישוע הנצרי ומלך היהודים」(Yeshua` haNotzri u'Melech haYehudim「ナザレ人にしてユダヤ人の王イエス」、 IPA: [jeːʃuːɑʕ hɑnːɑʦeri meleχ hɑjːəhuðiːm])と表現される場合もあるが、これは後世の再翻訳で、頭文字が神聖四文字(יהוה, YHWH)と同じになるように微妙にもじったものと思われる。そもそも『ヨハネによる福音書』に見られる「ヘブライ語」はヘブライ語ではなく当時のパレスチナ地域の共通語であるアラム語であった可能性は高いと考えられている。
※この「美術における「INRI」」の解説は、「INRI」の解説の一部です。
「美術における「INRI」」を含む「INRI」の記事については、「INRI」の概要を参照ください。
- 美術における「INRI」のページへのリンク