ユダヤ人の王イエス
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福音書においては「ユダヤ人の王」はユダヤ人ではない(異邦人)登場人物がイエスに対して使用する称号である。 『マタイによる福音書』(2:1–8)では、イエスがベツレヘムに生まれた際に、東から来た「占星術の学者たち」(東方の三博士)は「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか」と尋ねる。ヘロデ大王はこれを聞いてイエスを危険視し、後にベツレヘムでの幼児虐殺を命じる。 祭司らからなる最高法院(サンヘドリン)によって逮捕されたイエスがユダヤ属州総督ピラトに渡された時、ピラトはイエスを「お前はユダヤ人の王なのか」と問い詰める。『マタイ』『マルコ』『ルカ』の3つの福音書では、イエスがこの質問に対して「それはあなたが言っていることです」と曖昧な答えをし、ピラトにふたたび質問されるも2度と口を開かなったと描かれている。一方で、『ヨハネによる福音書』ではイエスが「私の王国はこの世には属していない」(「この世のものではない」とも)と主張し、これについてピラトと対話をする(18:33–38)。 イエスがローマ兵たちに鞭打ちされた後、荊冠(荊で編んだ冠)を被らされた。すると兵士たちはふざけて「ユダヤ人の王、万歳」と歓呼して、彼に暴行を加えた。『マタイ』(27:27–31)・『マルコによる福音書』(15:16–20)ではこれがイエスが死刑の判決を受けた後に起こった出来事となっているが、『ヨハネによる福音書』(19:1–3)ではイエスが鞭打ちの刑を受けるのは裁判の最中であり、イエスを殺さずに済むためのピラトの策略として描かれている。ピラトがこの後に荊冠を被ったイエスの姿を群衆に見せて「この人を見よ」と宣言するが、それにも関わらず群衆がイエスの処刑を要求する(19:4–6)。 一方で『ルカによる福音書』ではイエスがローマ兵に侮辱される場面はなく、代わりにピラトがイエスをエルサレムに滞在中であったアンティパスに渡すと、アンティパスがイエスを嘲笑して派手な着物を着せてピラトに送り返したという記事がある(23:4–12)。また、ピラトは「死刑に当たる犯罪は見つからなかったから、鞭で懲らしめて釈放しよう」と群衆に言うが(23:16, 22)、他の福音書と違ってイエスが処刑前に鞭打ちされたと明示されていない。(ただし、イエスが鞭で打たれることを予言する場面(18:31–33)がある。)
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