紙本白描諸観音図像とは? わかりやすく解説

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紙本白描諸観音図像

主名称: 紙本白描諸観音図像
指定番号 1988
枝番 0
指定年月日 2002.06.26(平成14.06.26)
国宝重文区分 重要文化財
部門種別 絵画
ト書
員数 1巻
時代区分 平安
年代
検索年代
解説文:  本図巻頭を欠くものの、聖観音以下六種観音について種々の図像集め、これに適宜注を付したのである紙数二〇紙を継ぎ一紙最長五六・一センチメートル数える。
 内容聖観音五図、千手観音五図、馬頭観音九図、不空羂索観音七図、白衣観音四図、如意輪観音一五図である。聖観音中にはふつう楊柳観音呼ばれる図像含まれるが、「大安寺東塔丑寅角柱」の注記ある図像は、ボストン美術館諸尊図像集にも掲載され金岡手跡様」と記されている。本図像でも「崗手跡様也」と読めるが「金」の字が脱けており、明らかに書写の際の脱漏考えられる。この点は、後述する本図奥書考えるうえで看過できない点である。千手観音の中では「長宴僧都抄」云々注記のある像と、「叡山唐院曼荼羅云々の記をもつ像が注目される馬頭観音注記もたない不空羂索観音の中では、盤石の上に立つ像について「似黄不動」の文があることに注意したい白衣観音を含むことは本図像の大きな特色であるが、ここでも「前唐院如意輪」あるいは「唐本」といった注記がある。如意輪観音一五図を数え、他の観音圧しているが、実は馬頭観音が二図含まれている。ここでは「安祥寺僧都請来曼荼羅からの一図のほか、抹消されているとはいえ慈覚大師将来唐院本」と注記された略図掲げられている。さらに、如意輪観音図像のあとに六臂と六道との関係ひいては六観音考察及んだあと、次の奥書記している。
 「洛東清水僧定深為興法略記之 于時承暦二年六月而已」
 すなわち、承暦二年(一〇七八)に清水寺僧定深が編著したもの知られる。ただし、先述のように脱字があることや本来裏書であった文を本文中に記していることなどから、書写本であると考えられる巻末の定深による裏書応保二年(一一六二)云々とあり、干支誤り承暦二年からあまりに隔たりがあることが指摘されているが、裏書にある「正月十九日」が「庚寅」にあたるのは応徳二年であることから、「応保」を「応徳」の誤記とみて、本図書写時期応保からさほど隔たらない平安時代末期とする説が提出されている。
 定深については、醍醐寺四家図像等にも引用されているが、『東山往来』の著者ともいわれる定深と同人物と考えられている。記録によれば応徳二年(一〇八五)に維摩会研学竪義となり、寛治二年(一〇八八興福寺上座補任され、嘉祥元年一一〇六)清水寺別当補され天永二年(一一〇九)法橋叙された。保安元年一一二〇十一月二十二日、七五歳で死去したという。
 本図像の特色としては、六種観音扱っていることから六観音信仰意識しているとの説があるが、通常の六観音のうち十一面観音を欠くかわりに白衣観音選んでいることが特記される。院政期における白衣観音信仰反映しているとみられるが、このような六観音信仰は他に見られない本図収録され図像多くが、ボストン美術館諸尊図像集(鎌倉時代書写)と重複するが、図像掲載順序一致せず、両本に共通する同一祖本存在した思われる。さらに、引用天台系に偏っていることが指摘される。定深自体東密系に属しているが、あるいは天台事相学習した成果といえるかもしれない
 本図像集には他に見られない図も含まれ、各図は精粗巧拙様々であるが、多くは的確で丁寧に写されており、書写年代平安時代末期遡る思われる仏教図像学史上に貴重であるばかりでなく、美術的にも優れた白描図像として評価される



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