第五部『まだ遠い光』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/18 09:31 UTC 版)
油井が綾女を襲ったことを知った馬見原が彼を捜し出して恫喝していた間に、佐和子は危うく事故に遭いかけ、娘婿の鉄哉に救われたが再々入院となってしまう。入院中の佐和子は自分の新しい生き方を模索するが、真弓は父を許さず冬島親子の件で馬見原を責める。 逃走中の駒田は大野たちの元を訪れて玲子のことを相談し、自首を勧められるが、酒を飲んで金を無心し、玲子との心中をちらつかせ元夫妻たちの息子殺しの過去を突きつけて脅す。一命を取りとめ徐々に回復した游子は、駒田が大野と山賀に玲子を託す手紙を送ってきたと聞く。 大野たちは白蟻被害の調査および家族相談のため芳沢家を訪れる。大野は芳沢家の家屋が白蟻に蝕まれているとして消毒を勧めるが、その被害は大野の偽装である。また、家族の話し合いでは、電話で家族殺しの犯人を騙っていたのが亜衣であると分かる。 油井は佐和子の様子を嘲笑うつもりで病院を訪ねるが、生き生きとした彼女の様子や、その孫の赤ん坊・碧子のほほえみのまぶしさに混乱する。暴力衝動にかられた油井は長峰にそそのかされ、馬見原の情報提供者を襲撃し重傷を負わせる。馬見原は大野たちの張り込みを始め、また上司の笹木に裏取引の件を告白し、長峰に反撃するため騙して検挙する計画を進める。 佐和子の件を知った綾女は、馬見原を頼ることをやめて故郷の富山へ帰る決意をし、彼に別れを告げる。ひそかに病院を訪ね、名乗らずに佐和子と対話した綾女は、弱さを受け入れた彼女の生き方に励まされる。引越し直前の冬島親子は、再度訪ね綾女を襲おうとする油井を二人で拒絶して追い出し、彼への恐怖を乗り越える。 浚介は弟の梓郎と11年ぶりに再会し、その頼みで久しぶりに両親に会うが、禁欲的な昔とあまりに違う現在の両親に戸惑い、口論となってしまう。落ち込んだ浚介は游子に会った際、話を聞いてもらい慰められ、自宅の部屋で二人は結ばれる。その夜、浚介のもとに亜衣から電話がかかり、両親を殺して自分も死ぬという。浚介は亜衣を説得し、馬見原と連絡を取り游子と一緒に亜衣の元へ向かう。馬見原は油井に襲撃されて重傷を負い、彼を救い出した椎村が代わりに芳沢家へ行く。 その日、大野と山賀は問題家庭を襲撃する予定が狂い、ターゲットを芳沢家に変更して侵入し、一家を拘束する。一連の事件の犯人である二人は、一家にこのような行為に至るまでの、自分たちの家族に起きた苦悩、追い詰められていった香一郎を救いたかった思い、善良な家族を救うため危害を与える家族を殺し社会を変えようと望む思いを語り、犯行はそのための「儀式」という。そして亜衣を殺す前に目の前で両親を痛めつけ、子供を命がけで庇う親の姿を見せることで、殺害前の子供に親の「愛」を目に見える形で示そうとする。両親の目を潰そうとしていたそのとき、椎村が現場に踏み込む。大野たちは浚介たちの前で亜衣を人質に取り、駒田を脅し手紙を書かせた後に殺害したことなども含めた数々の殺人を認めて富士山麓の樹海へ逃走する。大野たちは亜衣に香一郎を殺したときのことを語り、その場へ解放し姿を消す。闇の中で一人になった亜衣は殺された香一郎の心に思いを馳せる。 油井は事故死し、富山で新しい生活を始めた冬島親子の元へは、前職場で親しくしていた若田部とトムが訪ねてゆく。父親を失ったことを受け入れられない玲子に、游子はひとりぼっちにはしないと伝えなければと思う。浚介は不登校児のためのフリースクールを始め、自宅に知人たちとともに亜衣を受け入れ一緒に暮らす。明るさを身に付けた亜衣は関心を持っていた紛争地域を自分の目で見るため、カンボジアへ旅立つ。馬見原は回復し、佐和子と引き続き暮らす自宅で行われる元患者カップルの結婚式から抜け出して事件を振り返り、息子の死を自分たちの罪悪感から解放してやるときがきたと想う。
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