競技車輌(ラリーカー)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 03:08 UTC 版)
サーキット専用に設計・製造されるフォーミュラカー(F1マシンなど)とは異なり、ラリーカーは自動車メーカーが量産する市販の公道車をベースにして、認められる範囲内で競技用の改造を行なう。メーカーが国際自動車連盟 (FIA) や日本自動車連盟 (JAF) のようなモータースポーツ統括団体に対して申請を行い、ホモロゲーション(公認)を受けたモデルをベース車両にすることができる。公道を走行するので、改造の際はある程度競技国の安全基準を満たす必要があり、競技中もナンバープレートをつけて走行する。 FIAが公認するラリーカー向けの規定はグループA、グループRally(旧称グループR)、グループN、グループR-GT、グループB(現在廃止)などがあり、それぞれベース車の年間生産台数、エンジン形式、排気量、過給器の有無、駆動方式(2WD/4WD)といった細かな条件が指定されている。グループによって改造許容範囲は異なるが、市販車に近い状態に留めて性能とコストを抑えようとすると、高性能4WDスポーツカーを量産できる(=4WD車が多く売れる市場と顧客を持っている)メーカーだけに偏りやすい。そのためトップカテゴリでは、車種やエントリー台数を増やすために改造範囲を広くし、普通の大衆車でも参加できるようにするのが一般的である。WRカーやスーパー2000、グループR5、AP4などの規定がこれに相当する。 一般的には、そうしたトップカテゴリのラリーカーのベース車両は、小回りやコストなどを鑑みてCセグメント以下の小型車が採用される。かつてはクーペやセダンがベース車として好まれた時代もあった。近年は乗用車化の著しいクロスオーバーSUVをベース車とする例も増えている。 ベースカーからの大きな仕様変更点として、乗員の安全を守るロールケージ、4点式シートベルト、車載消火器などは装備が義務付けられる。ボディの外観はベースカーから大きく変更できないが、ボディ底面を守るアンダーガード、マッドフラップ、リアウィング、夜間走行用のライトポッドなどは公認された部品を装着できる。内装は軽量化のため後部座席や遮音材、エアコンなどを取り外して簡略化している。ラリーではサイドターンを駆使するため市販車、特にトランスミッションがAT・CVTしか設定がないことも多くなった日本車では少なくなったハンドブレーキバーが現在でも活躍している。また、パンクやクラッシュに備えてスペアタイヤと工具を積む必要がある。 時間や距離を表示する計測機器も多数取り付けられており、近年の海外のラリーではGPSで他車との距離やクラッシュ位置の情報も把握できる「セーフティトラッキングシステム」も装着される。 同じくタイムアタックを行う競技のジムカーナに比べると、ラリーカーは安全性と信頼性のために多少重くともきちんとしたボディ補強を施している。また路面の変化やイレギュラー(路面に掻き出された砂利や落ち葉など)に柔軟に対応できる様に、セッティングはジムカーナよりもマイルドにされることが一般的である。 エンジンのパワーアップは厳しく規制されており、ターボチャージャーにはリストリクターを装着して吸気量を制限している。一方でエンジン制御(ECU)のチューニングに関しては緩い傾向があり、エンジンの開発はパワー以上にレスポンスやドライバビリティ(運転しやすさ)が重視される。
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