疑惑に対する周囲の反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 06:08 UTC 版)
「バリー・ボンズ」の記事における「疑惑に対する周囲の反応」の解説
薬物疑惑が強まり、ルース、アーロンの通算本塁打数に迫るにつれて、ファンや米メディアの反応も厳しくなり、敵地の球場では、別扱いの参考記録を表す「*」マークやドーピング注射器が描かれたボードを掲げてボンズを野次る観客が多数出現するようになった。ボンズの守っているレフトに注射器が投げ込まれたこともある。「ベーブ・ルースはホットドッグとビールでやってのけた。ハンク・アーロンは上品にやってのけた。(暗に薬物を指して)お前はどうやってやったんだ?("Babe Ruth did it on hot dogs and beer. Hank Aaron did it with class. How did you do it?")」と揶揄されたりもした。 一方で、選手たちの反応はおおむね正反対である。2007年5月にUSAトゥデイ紙が493人の現役大リーガーと469人のファンを対象に行ったアンケート調査の「史上最も偉大なホームラン打者は誰か」という項目において、ファンの回答で最も多かったのがハンク・アーロンの36%、次いでベーブ・ルースの33%、ボンズは8%にしか過ぎなかった。だが現役選手の72%がボンズと回答している。 ここにその現役選手たちのコメントを一部列挙する。 「彼は凄く簡単そうにボールを打っているけど、実際は難しいんだ。どうやったらあれだけ安定したスイングを出来るのか俺には分からない。ステロイドを使った選手は他にもいるけど、ボンズに匹敵する奴は誰もいない」「ステロイドを使っている他の選手のスイングに比べたら、ボンズがステロイドのおかげだけでホームランを打っているとは思えない。仮に彼がステロイドをやっていたと認めても、ホームランの価値が損なわれるとは思わない」‐デビッド・オルティーズ 「度重なる薬物検査の下、人間離れしたスウィングで僕らを驚かせるんだから、彼は本物だよ。素晴らしい動体視力とタイミングでボールを捉え続ける。単純に、彼は他の打者よりも優れているんだ」‐バリー・ジト 「皆と同じようにステロイドの使用については疑っている。だが、それと彼の打者としての偉大さは別さ」「打てる球が1試合に2球くらいしかないのにそれを本塁打にする。自分が対戦した時も2球だけだったのに、そのうちの1球を柵越えにした」‐トム・グラビン これらコメントに代表されるように、選手たちの間では“ステロイドを使ったからといって簡単にホームランを打てるわけではない”とボンズを擁護する意見も多い。ステロイドの使用を開始した1999年より前の時点でボンズは既に殿堂入りに値する成績を残しており、元々ずば抜けた実力を持っていた選手であることにも留意すべきとの意見もある。 また、2007年シーズンにおいても当時メッツのギレルモ・モタが禁止薬物での50試合の出場停止処分を受けているように投手の禁止薬物使用も相当数に上っていることや、ボンズが薬物を摂取していたとされる2000年前後はまだ筋肉増強剤はMLBの禁止薬物に指定されてはおらず、使用の是非とは別にボンズをはじめとしたMLBの選手たちは、その当時、筋肉増強剤を使用することにルール上は何も問題はなかったことも事実である。 薬物使用が確実視される中での記録達成とあって、周囲の反応が注目されたが、アーロンの記録を破った試合の視聴率はわずか1.1%と、NFLのプレシーズンゲームにも惨敗する有様で、大多数のファンは無関心、あるいは冷淡な視線で見ていた事実を裏付ける結果となった。ちなみに、ハンク・アーロンがベーブルースの記録を破ったときにNBCが放送した試合の視聴率は、22.3%だった。 コミッショナーのバド・セリグも球界の最高権力者という立場上、明言はしていないがアーロン同様その場にいたくないとの気持ちは隠しようがないといった感じで対応に戸惑っていた。言葉では「記録更新の瞬間にできる限り立ち会うつもりでいる」「試合への尊敬、記録の大きさ、この国ではすべての市民が有罪とされるまでは潔白であることから、私は彼が記録を更新する可能性があるかを見るために次の試合に立ち会う。記録がタイになった時点で追加声明を発表する」との声明文を発表していたが、否定的なスタンスを取り続けていた。755号を放った試合もセリグは観戦していたが、他の観客と違い拍手もせずポケットに手を突っ込んだままの姿で、神妙な面持ちだった。756号を放った試合においては結局セリグはジョージ・J・ミッチェルと面会するという名目で球場には姿を見せず、代理を送っていた。 また、この疑惑が強くなる中、他の選手の記録の正当性にも疑惑が示され、実はシーズン本塁打記録はロジャー・マリスの61本のままではないかという議論も起きた。2005年にはノースダコタ州議会がメジャーリーグ機構にマリスの記録が正当であると主張する事態となった。
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