生涯最後のシングル「川の流れのように」
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「美空ひばり」の記事における「生涯最後のシングル「川の流れのように」」の解説
1988年10月28日に、前日神津はづき(神津善行・中村メイコ夫妻の実娘)からのお友達紹介で、「森田一義アワー 笑っていいとも!」のテレフォンショッキングコーナーに、最初で最後の出演を果たした(ひばりからのお友達紹介は岸本加世子)。またその頃、秋元康の企画による『不死鳥パートII』という題名で、生前最後となるオリジナルアルバムのレコーディングも行い、秋元や見岳章といった若い世代のクリエーターとの邂逅により、音楽活動を幅広く展開する意欲も見せた。そのアルバムの中には、生涯最後のシングル曲となった『川の流れのように』もレコーディングされている。なお、ひばりのスタッフ陣は当初『ハハハ』をシングル化する予定だったものの、ひばりが自ら「お願いだから、今回だけは私の我が儘を聞き入れて!」と、スタッフに対して『川の流れのように』のシングル化を強く迫りながら懇願し、結果としてひばりの希望通りの形となった。 そのきっかけとなったのが、同年10月11日にオリジナルアルバム制作の報告も兼ね、日本コロムビア本社内で行われたひばり生涯最後の記者会見の時であった。この記者会見前にひばりは、アルバム内の1曲『ハハハ』を秋元康が立ち合いの下、公開初披露された後で会見が組まれた。ある記者が「ひばりさん、今回のアルバムを楽しみにされているファンの方々が沢山いらっしゃるかと思いますけれども、アルバムに収録されている10曲がどんな曲なのか、紹介していただけますか?」と投げかけた。するとひばりは「えー…もう『川の流れのように』の曲を1曲聴いていただくと、10曲全てが分かるんじゃないでしょうか。だからこれからの私。大海へスーッと流れる川であるか、どこかへそれちゃう川であるかっていうのは誰にも分からないのでね。だから『愛燦燦』とはまた違う意味のね、人生の歌じゃないかなって思いますね…」と全てを覆す回答を残した。ひばりの記者会見後、制作部はバタバタしながら1989年1月のリリース準備に入ったエピソードが残されている。 同年暮れの12月12・16・17日の3日間にわたって、翌1989年(昭和64年)1月4日にTBSテレビで放送された、生涯最後のワンマンショー『春一番! 熱唱美空ひばり』の収録に臨んだ。総合司会は堺正章が担当し、特別ゲストには森光子、森繁久彌と尾崎将司が出演した。収録前に歓迎会が行われ、スタッフからひばりへ花束の手渡しなどがあり、ひばり自身スタッフの熱意を肌で感じていた。だが、番組収録終了後最後の記念撮影時に、ひばりが隣に座った番組制作プロデューサーの池田文雄に向かって「この番組が『最後』になるかもしれないから。私ねぇ、見た目よりもうんと疲れてるのよ、1曲終わる度にガクッと来るの」と話したという。後に堺がひばりの追悼番組で、当時「どういう意味での『最後』かは定かではないが…」と話している。しかしプロデューサーの池田は耳にこびりついて仕方がなかったという。脚の激痛と息苦しさで、歌う時は殆ど動かないままの歌唱であった。 この頃既に、ひばりの直接的な死因となった『間質性肺炎』の症状が出始めていたとされており、立っているだけでも限界であったひばりは、歌を歌い終わる度に椅子に腰掛け、息を整えていたという。それでも同番組のフィナーレでは、番組制作に携わったスタッフやゲストらに感謝の言葉を述べ、「これからもひばりは、出来る限り歌い続けてゆくことでしょう。それは、自分が選んだ道だから」という言葉で締め括る。そして新曲『川の流れのように』の歌唱後、芸能界の大先輩でもある森繁からの激励のメッセージを受けると、感極まったひばりは堪えきれずに涙を流し続けた。なお、ワンマンショーの放送からさかのぼること2日前の1月2日には『パパはニュースキャスター』の復活スペシャル第2弾にも田村正和演じる主人公の鏡竜太郎とTBSの廊下で遭遇するワンカットのみではあるが、ゲスト出演。これが生涯最後のテレビドラマへの出演となった。 1988年12月25日、26日と帝国ホテルにて、生涯最後のクリスマスディナーショーが行われ、石井ふく子や王貞治らひばりの友人も足を運んだ。無理を押しての歌中、激しいツイストで観衆を沸かせていた。この時の映像は特番等で稀に放送されたことがある。(ビデオ・DVD化はされていない)ディナーショー終了後、石井と王らが会食していた神楽坂の料亭に連絡なしにいきなり現れたひばりが、浪曲「唄入り観音経」を歌唱。石井は2010年6月にTBS系で放映された特番で「全身が総毛立ったの。素晴らしかったですよ。なんで録っておかなかったんだろうと今でも悔いています」と語った。
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