滲出型黄班変性の治療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/30 00:22 UTC 版)
「加齢黄斑変性」の記事における「滲出型黄班変性の治療」の解説
滲出型黄班変性には主にVEGF阻害剤投与、もしくは光線力学的療法が用いられるが、VEGF阻害剤投与のうちでも、ラニビズマブ、アフリベルセプトの投与の有用性が注目される。欧米の多施設による試験では、光線力学的療法が視力低下を部分的にしか阻止しない一方、ラニビズマブでは視力回復が期待できると報告されている(一年後で、ラニビズマブ群が視力がプラス11文字の改善に対して光線力学的療法群はマイナス9.5文字)。 VEGF阻害剤 加齢黄斑変性の発生に際し血管新生およびVEGFが関与しており、血管新生阻害薬の投与により進行を防止・改善する可能性がある。代表的薬剤としてラニビズマブ(商品名ルセンティス)がある。投与方法は硝子体内に注射。ラニビズマブは抗VEGF抗体のFab断片であり、2009年1月、製造販売承認を取得。販売元のノバルティスファーマによるサイトに総合製品情報概要などがある。ベバシズマブは、加齢黄斑変性に対しては厚生労働省未認可の治療薬である。アフリベルセプト(商品名 アイリーア)は、より新しく保険適用となった薬剤で、VEGFR-1およびVEGFR-2の細胞外ドメインをもつ遺伝子組み換えたんぱく質であり、VEGFの作用を効率よく阻害するといわれる。 光線力学的療法(PDT) 光感受性物質であるベルテポルフィンを静脈注射し、薬剤が脈絡膜新生血管に集積した際に、PDT専用のレーザー装置を用いて689nmのレーザー光を照射し、ベルテポルフィンが光活性化し脈絡膜新生血管を退縮させる治療。特にクラシックCNVに対して有効性を示す。少なくとも初回照射時、薬剤投与後48時間は遮光目的に入院が必要である。3ヶ月に一度造影検査を行い必要と認められれば、再度行う治療である。講習を受け試験に合格した認定医が施行する必要があり、また特殊な機器が必要であるため、施行施設は限られる。保険適用されているが薬剤が高く、高額な自己負担が必要になることもある。日本での臨床試験(JAT study)では48ヶ月間に平均2.8回の治療が必要であった。また視力は2割の方に視力上昇を認め、2割に視力低下を認めた。海外での臨床試験(TAP study)では少なくとも24ヶ月観察期間中の視力の低下の抑制効果があると結論づけている。 レーザー光凝固術 新生血管が黄斑部に及んでいない場合に直接凝固を行う。その凝固斑により暗点が生じることがある。CNVが中心窩下にない場合に適用になる。 新生血管抜去術 外科的に新生血管を抜去する。CNVが中心窩下にない場合に適用になる。抜去後暗点が生じることがある。 中心窩移動術 意図的網膜全剥離を起こし、痛んでいない色素上皮のところに網膜を回転させて黄斑部を移動させる。結果として斜視や複視になる。術後斜視手術または同時手術が必要になることもある。 放射線療法 脈絡膜新生血管を退縮させる目的で放射線を照射する。 経瞳孔温熱療法(TTT) 低エネルギーのレーザーを照射することにより温熱により、新生血管の破壊を促す治療法。厚生労働省未認可の治療法である。 ステロイド 徐放性ステロイド(トリアムシノロン アセトニド)をテノン嚢下または硝子体内に投与し、新生血管の退縮を狙う。手術療法・PDT・VEGF阻害薬投与と同時に行うことがある。投与により緑内障を発症させる可能性がある。 糖質コルチゾール活性を有しない様に化学構造を変化させた合成ステロイド剤である酢酸アネコルタブ(英語版)(Retaane)をテノン嚢下投与し、新生血管の退縮を狙う。 VEGFアプタマー VEGFに結合し、効果を発揮する。投与方法は硝子体内に投与である。代表的薬剤としてペガプタニブ(Macugen)があり、2008年7月、製造販売承認を取得。 投薬 止血剤 補助食品 亜鉛、ルテイン、ゼアキサンチン、ビタミン類(A,C,E)、βカロチン等
※この「滲出型黄班変性の治療」の解説は、「加齢黄斑変性」の解説の一部です。
「滲出型黄班変性の治療」を含む「加齢黄斑変性」の記事については、「加齢黄斑変性」の概要を参照ください。
- 滲出型黄班変性の治療のページへのリンク