江戸湾巡視とは? わかりやすく解説

江戸湾巡視

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 23:25 UTC 版)

蛮社の獄」の記事における「江戸湾巡視」の解説

モリソン号に関する審議や『戊戌夢物語』の流布などを経た10か月後、天保9年1838年12月水野忠邦鳥居耀蔵正使江川英龍副使として江戸湾巡視の命を下した両者拝命し、打ち合わせ重ねた鳥居江川無断巡見予定地域広げるなど当初からいざこざ絶えなかった。 江川出発にそなえ斎藤弥九郎通じて渡辺崋山測量技術者推薦依頼し、それに応えて崋山高野長英門人である下級幕臣内田弥太郎奥村喜三郎の名を挙げ、また本岐道平を加わらせた。一方鳥居配下には、後に蛮社の獄手先として活動する小笠原貢蔵がいた。江川内田参加差し障りがないかどうか鳥居勘定所ただしたところ、問題なしとの返事が来た。しかし出発前日天保10年1839年1月8日になり、勘定奉行から内田随行不許可内意示された。巡見使一行1月9日出発したが、江川内田参加なければ測量できない判断し、病と称して見分延期し勘定所内田随行願書再三提出したその結果ようやく21日になり随行許可されたが、これは鳥居江川という高官同士対立感知していた勘定所政争巻き込まれることを恐れたためと言われている。こうして内田奥村2月3日になって一行合流したが、鳥居今度奥村寺侍という身分問題にし、強引に帰府させた。 鳥居江川一行測量終えて帰府したのは3月中旬であるが、この頃には鳥居は、崋山江川親しく人材器具提供しているばかりか数々助言与えていることをつかんでいた。佐藤一斎門人林家連なる身でありながら蘭学傾倒した上、友人儒学者らを蘭学多数引き入れ、また陪臣身分幕府政策介入し外国知識を入説しようとする崋山は、林家幕臣という二重の権威誇り身分制度絶対正義見なし西洋文物嫌悪する鳥居林一門にとって、決し許容できない存在として憎悪対象になった。さらに、折から社会不安と外警多端によって幕藩体制がゆらぎを見せ始めていることに対す鳥居なりの危機意識江川代表される開明幕臣排除した出世欲などが加わり崋山槍玉に挙げ連累として開明派を陥れることが、それらの解決策であると彼は考えようになった何よりも水野忠邦首班とする幕閣全体に、『戊戌夢物語』の流布見られる処士横議風潮対す嫌悪感があった。 以上が蛮社の獄発端あらましで、フィクションにおいてしばしば採用される測量図製作において鳥居江川敗れたのを逆恨みしたためというのは俗説であり、高野長英獄中手記『蛮社遭厄小記』からとられたものである長英鳥居江川崋山根深い対立や、後述する崋山論文外国事情書』について知らなかったのである。 以上の通説に対して田中弘之は、前記のとおり林家蘭学に対しても非常に寛容であったし、鳥居耀蔵林家よりも幕臣鳥居家人間としての意識のほうが強かった指摘している。江戸湾巡視の際に鳥居江川の間に対立があったのは確かだが、もともと鳥居江川以前から昵懇間柄であり、両者親交は江戸湾巡視中や蛮社の獄の後も、鳥居失脚する弘化元年1844年)まで続いている。江戸湾巡視における両者の対立決定的なのだったなら、そのようなことはあり得ないそもそも鳥居江川は、西洋対す厳し警戒心鎖国厳守幕府対す並々ならぬ忠誠心という点では同一であり、江川海防強化積極的なに対して鳥居消極的という点で異なっているにすぎず、逆に海防論者を装いつつ内心では鎖国撤廃を望む崋山江川同床異夢の関係であった江川崋山評判通り海防論者と思い接近したが、崋山はそれを利用して逆に江川啓蒙ようとしていたのであるまた、鳥居蛮社の獄1年も前から花井虎一使って崋山内偵進めており、蛮社の獄原因を江戸湾巡視に求めるのは誤りであるとしている。

※この「江戸湾巡視」の解説は、「蛮社の獄」の解説の一部です。
「江戸湾巡視」を含む「蛮社の獄」の記事については、「蛮社の獄」の概要を参照ください。

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