民間宇宙船の開発状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 05:53 UTC 版)
詳細は「民間宇宙飛行」を参照 米国の旅行会社「ゼグラム社 (ZEGRAHM)」は、ジェット機の背に搭載されたロケットプレーンを高度16kmで切り離し、そこからはロケットエンジンで高度100kmまで上昇し、地球を見ながら弾道飛行による2分半の無重力状態を体験できるという宇宙旅行を企画した。 1998年、ペプシコーラを日本で販売するサントリーは、「2001 SPACE TOURS PEPSI」と銘打ち、懸賞でこのゼグラム社のロケットプレーンの搭乗券をプレゼントするという世界初のキャンペーンを行った。当初は2001年に実現予定であったが、ロケットプレーンの開発及び認可取得が遅れ、2003年にはゼグラム社が資金繰りの悪化から宇宙船の開発に着手できない状態に陥った。キャンペーンは無期限延期とされ、懸賞当選者の権利はスペース・アドベンチャーズ社に引き継がれた。当選者5名のうち4名が宇宙旅行を辞退して賞金1000万円を獲得し、残りの1名が引き続き宇宙旅行を希望していることが、2013年に確認されているが、その後の動向は不明である。 1996年に、民間による宇宙船開発に対する賞金制度であるX-prizeが発足した(2004年、Ansari X Prizeに名称変更)。 3人以上の乗員(乗員1名と、2名の乗員に相当する重量のバラストでも可)を高度100km以上の弾道軌道に打ち上げ、さらに、2週間以内に所定の再使用率を達成し、同じ機体で再度打ち上げを達成した非政府団体に賞金1000万ドルが送られるというものである。地球一周旅行をはじめ、多くの長距離旅行の壁は資本家による賞金制度をきっかけに実現されてきたが、X-prizeは資金面のみならず、法律面でも発射試験までには煩雑な点が多く、脱落者が続出した。その中でスケールド・コンポジッツ社の有人宇宙船「スペースシップワン」は2004年6月21日に高度100キロの試験飛行に成功し、続けて賞金獲得のための本飛行も2004年9月29日と2004年10月4日に2度目の飛行を行った。9月29日のフライトにおいては一時機体が不安定になるなどのトラブルがあったものの、いずれも乗員1名とバラストを載せた飛行を達成し、同社は賞金を獲得した。 ヴァージングループに設立された宇宙旅行会社「ヴァージン・ギャラクティック」はスペースシップワンからの技術供与を受け、宇宙旅行ビジネスを開始することを発表、同飛行のスポンサーとなった。2012年からのサービス開始を目指しており、スペースシップツーによる宇宙旅行ビジネスの実現を目指す。2005年にはクラブツーリズムがヴァージン・ギャラクティック社の公式代理店となり、日本での販売を開始。最初の宇宙旅行者として100人が世界中から選ばれ、ファウンダーと呼ばれている。日本人では稲波紀明が世界最年少のファウンダーに選ばれている。しかし、計画は遅延中であり、2014年には試験中に墜落事故を起こすなど実現には至っていない。また、ヴァージン・ギャラクティックは「米空軍の規程による宇宙空間」(高度80km以上)を採用していることから一部には「宇宙旅行ではない」という声もある(一般に高度100km以上をもって「宇宙空間」と呼ぶことが多い)。 2017年時点で宇宙旅行を実施または準備中の企業としてはこのほか、スペースX社、ブルーオリジン社、ISS滞在の仲介を計画するアクシオム・スペース社、気球から地球を見下ろすツアーを予定するワールドビュー社などがある。これらの多くはアメリカに本社を置くが、日本でも山崎大地のように宇宙旅行ビジネスに携わる起業家が現れている。 2018年12月13日、ヴァージン・ギャラクティクは「史上初の民間宇宙旅行用宇宙船」による宇宙飛行に成功したと発表した。前述のように米空軍が規定する高度80km以上に弾道飛行により到達したものである。なお米国内から出発した有人宇宙飛行の成功は7年ぶり。 2021年、宇宙へ行った国の宇宙飛行士は18人に対し、民間の宇宙旅行者は22人となり、旅行者が上回った。 スペースXでは2023年に月を周回する旅客宇宙船「スターシップ」に8名を乗せる計画を発表している。
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